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東文研セミナー「国家にとって『島嶼』が持つ意義——台湾の史料からみた東シナ海と南シナ海」(「島嶼」對於一個國家而言——臺灣史料裡的東海與南海)が開催されました

報告

 2023年3月6日(月)、台湾の国防大学一般教養教育センターの任天豪准教授を迎えて、日本台湾学会定例研究会、早稲田大学台湾研究所との共催による、「国家にとって『島嶼』が持つ意義——台湾の史料からみた東シナ海と南シナ海(「島嶼」對於一個國家而言——臺灣史料裡的東海與南海)」と題する東文研セミナーが開催された。
 任天豪准教授は、中華民国という政権は冷戦期に何を感じ、何をして、その後の冷戦の展開にどのような影響を与えたか、そして我々の冷戦に対する認識に影響があるのか、という問題関心のもと、中華民国は東シナ海と南シナ海の島嶼に対しては、実質的な認識のレベルよりも宣伝的な性質が大きいという論点を展開した。その背景には、中華民国の「大陸国家」への回帰という強烈な意志があったため、海洋に対する野望は相対的に衰退した点が挙げられた。また、アメリカのパワーが直接及んでいて、中華民国が「関心を寄せることのできない場所」(琉球ないし東シナ海)に対して、中華民国は自ら譲歩を選択した。一方、南シナ海に対しては、中華民国は東シナ海よりも相対的に領土意識を強調してきたが、有効的な掌握には至らなかった。
 また、コメンテーターの東京大学東洋文化研究所の松田康博教授からのコメントに対し、任准教授は、中華民国政府の島嶼に対する領土意識が比較的低いのは、程度こそわからないが、アイデンティティとも関連があり、また島嶼の問題については当時の政策上の必要性に基づいて判断されているという考えを示した。さらに、土地の利用状況などの調査に関するフロアからの質問に対して、任准教授は、中華民国は実際に統治している地域に対しては調査を行っているが、それ以外の遠い場所については政治的な事件が関わっているかが重要となってくると指摘した。
 会場とオンラインあわせて約35名の参加者があり、活発な議論が展開された。

(記録:丁天聖)

当日の様子

開催情報

日時:2023年3月6日(月)17:30~19:00

場所:東京大学東洋文化研究所3階大会議室およびオンライン

発表者:任天豪(国防大学)

テーマ:「国家にとって『島嶼』が持つ意義ーー台湾の史料からみた東シナ海と南シナ海」(「島嶼」對於一個國家而言——臺灣史料裡的東海與南海)

司会:黄偉修(東京大学東洋文化研究所/早稲田大学台湾研究所)

コメンテーター:松田康博(東京大学東洋文化研究所)

使用言語:中国語(必要に応じて質疑応答で通訳の補佐をします)

概要:
「島嶼」は領土の一形式であり、元来大陸国家であった「中華民国」にとって、冷戦期間中わずかな島嶼をコントロール下に置くことしかできない領土状況にあったのであり、政策上いかにこの状況に適応したかは、検討に値する問題である。東シナ海と南シナ海は、台湾の両側に広がる主要な海域であり、中華民国がいかにして東シナ海と南シナ海に関係する問題に対応してきたか、そしてこのコンテキストの中で体現してきた歴史的意義について、台湾の歴史史料を参照しつつ考えてみたい。
(「島嶼」是領土的一種形式,對原本是大陸國家的「中華民國」而言,面對在冷戰期間裡,逐漸僅能控制少數島嶼的疆域狀態,政策上的調適即是一個值得探討的議題。東海與南海做為臺灣兩側的主要海域,中華民國如何因應涉及東海及南海的事務,及在此脈絡下所體現的歷史意義,需要參酌臺灣方面的史料加以考量。)

報告者略歴:中央研究院近代史研究所ポストドクター研究員を経て、現職は国防大学一般教養教育センター准教授。著作に『從正統到生存:東亞冷戰初期中華民國對琉球、釣魚臺情勢的因應」(「島嶼」對於一個國家而言——臺灣史料裡的東海與南海)』など、学術書・論文多数。

(曾任中央研究院近代史研究所博士後研究員,現任國防大學通識教育中心副教授。著有《從正統到生存:東亞冷戰初期中華民國對琉球、釣魚臺情勢的因應》等學術專書及論文數十篇。)

共催:日本台湾学会定例研究会、早稲田大学台湾研究所

担当:松田



登録種別:研究活動記録
登録日時:FriMar2411:27:542023
登録者 :松田・田川
掲載期間:20230325 - 20230625
当日期間:20230306 - 20230306