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東文研セミナー「ブックトーク『近代オスマン帝国における国家医療の誕生』」が開催されました

報告

  本セミナーでは、はじめに鈴木真吾氏(本研究所ポスドク研究員/日本学術振興会特別研究員PD)が2024年刊行の自著『近代オスマン帝国における国家医療の誕生:湾岸都市イズミルの衛生と感染症』(慶應義塾大学出版会、2024年)の内容を紹介したあと、秋葉淳氏(本研究所教授)によるコメント、質疑応答が行われた。参加者は会場7人、オンライン21人と盛況であった。
  鈴木氏は、著書の構成、大まかな主張とねらい、さらに著書のもととなった博論ができるまで、著書ができるまでを振り返りながら、本書の骨子や主史料である地方新聞について説明をした。それによると、近代オスマン帝国は「近代帝国」のひとつとして、国力増進のために国民の人口増加や健康増進に関心を持ち、国家医療の普及を進めた。しかし鈴木氏はオスマン帝国の港湾都市・イズミルの地方新聞を分析することで、国家医療の普及が中央から地方へという単純な流れで起こったのではないことを明らかにした。国家医療の普及においては、イズミルのような都市自治体とそこに任命された行政医、さらには地方社会からの要望も積極的な役割を果たしていたのである。
  秋葉氏は本書の高く評価できるポイントとして、これまで出版の少なかった中東・オスマン帝国の医療・衛生史を取り上げたユニークな研究書である点、さらに地方新聞を用いることで、中央から地方へという典型的な近代化論的な叙述を克服している点を挙げた。また質疑応答では、今後の鈴木氏の研究の展望などについて活発な議論が行われた。(文責:永島育)

 

当日の様子

 

開催情報

日時:2025年3月18日(火) 16:00~17:30

会場:東京大学東洋文化研究所3階第2会議室/Zoom

登録フォーム:https://forms.gle/Wm3SF6RyX6xeRi7L7

報告者:鈴木真吾(東洋文化研究所/日本学術振興会特別研究員PD)

題目:ブックトーク『近代オスマン帝国における国家医療の誕生』

司会・コメント:秋葉淳(東洋文化研究所)

 



登録種別:研究活動記録
登録日時:FriMar2111:22:502025
登録者 :秋葉・多田
掲載期間:20250322 - 20250621
当日期間:20250318 - 20250318