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平成18年度第3回定例研究会のご案内

報告・韓国人と旅した中国−グローバリズムとナショナリズムのはざまで−

日 時:9月14日(木)午後2時〜4時
場 所:東京大学赤門総合研究棟 地下1階 第2演習室

発表者:真鍋 祐子(東洋文化研究所助教授)
司会者:菅  豊(東洋文化研究所助教授)
討論者:千住 一(立教大学観光学部助手)

[要旨]
 発表者は1999年から2003年にかけて、韓国の旅行社のパックツアーに数次にわたって参加し、韓国人の中国観光に対する参与観察を行なってきた。中国の経済開放政策に後押しされてグローバリズムに拍車がかかる東アジアは、一方で、いまだ植民地主義や冷戦といった20世紀のくびきに緊縛されてもいる。それゆえ、日中・日韓の「歴史認識」問題や中韓の「高句麗論争」など、それぞれのナショナリズムが激しく角逐しあう場となっている。こうした複数の国家事情が絡み合ったグローバリズムとナショナリズムのはざまに、中国を舞台とした「記憶産業」としてのツーリズムが成立している。
 観光人類学の方法を援用してこのテーマに取り組む際に、発表者がとる戦略は以下の二つである。第一に、観光人類学の重要な観点のひとつである「真正さ」について、これを歴史認識にもとづくナショナル・アイデンティティの投影対象としての真正さととらえることである。第二に、もうひとつの重要な枠組みである「ゲスト—ホスト」論については、よりミクロな次元から、相互のアイデンティティ管理をめぐって展開される動態的なアイデンティティ・ゲームとしてこれをとらえたい。
 ここでは朝鮮族ガイドと韓国人旅行者たちとのやりとり、朝鮮族ガイドの語りと旅行者たちの反応、旅行者相互のやりとりなどを体験談風に報告しながら、朝鮮族ガイド、その背後にある中国当局、多様な指向性をもった韓国人旅行者たち、もうひとつのまなざしの受け手である北朝鮮・・・などを主な演者として、観光地やバスの中で雑多に繰り広げられるアイデンティティ・ゲームの様子を再現する。そうすることで、東アジアをとりまく20世紀の歴史的負荷と21世紀の国際環境を背景とした観光の現場で、ゲストとホストのミクロな相互作用のなかで生成される「観光文化」のラフ・スケッチを試みたい。


平成18年6月30日
東京大学東洋文化研究所
研究企画委員会

登録種別:研究会関連
登録日時:Fri Jun 30 14:18:55 2006
登録者 :研究協力係
掲載期間:20060630 - 20060914
当日期間:20060914 - 20060914