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第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授)が開催されました

報告

第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授)

 2015年7月23日(木)の午後、東文研・定例研究会が開催され、塚本麿充准教授(東洋文化研究所)による「北宋絵画史の成立――意味・場所・機能と様式の生成」と題する研究報告が行われた。
 北宋絵画史を美術作品としてではなく、社会の中で機能する文物としてとらえ、その多角的な機能を分析することが本報告の目的である。塚本氏は三館秘閣と呼ばれる宮廷コレクションの保存・公開場所について、三百年に渡る歴史を分析し、三館秘閣は宋代の中国社会における意味の生成の中心であっただけではなく、東アジア全体の文物交流の結節点でもあったと主張した。11世紀前半にはその活動を象徴するものとして郭煕山水が成立し、その後、三館秘閣の機能を通じて高麗に伝えられ李郭派山水の隆盛をもたらすこととなった。しかしその後の中国では、三館秘閣という場が崩壊したことで郭煕山水は当初の意味を失い、元代以降は形象の伝承という新しい価値が付与され、清代に至るまで長い歴史を刻むこととなる。塚本氏は場の機能によって生成した様式が、場の消失によって意味を変容させていく過程を、北宋絵画史全体の問題としてとらえ、さらに新たな社会を形成していく様子を明らかにした。
 報告後、約50名の参加者と報告者が隋唐時代における絵画と仏教の関係、三館秘閣の知名度や政治的機能、江戸時代の日本における中国美術への認識などについて意見を交換し、充実な議論が行われた。

当日の様子

第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授) 第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授)
第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授) 第1回定例研究会「北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成」(塚本 麿充 准教授)
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開催情報

日時 / Date: 2015年7月23日(木)13:30-15:30 / 1:30 – 3:30 pm on Thursday, 23rd July 2015

会場 / Venue東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室 / Conference room 303 (3rd floor), Institute for Advanced Studies on Asia, The University of Tokyo

題目 / Title :北宋絵画史の成立-意味・場所・機能と様式の生成―

発表者 / Speaker :塚本 麿充 (東洋文化研究所・准教授) / TSUKAMOTO, Maromitsu (Associate Professor, IASA)

司会 / Chairperson:板倉 聖哲 (東洋文化研究所・教授) / ITAKURA, Masaaki (Professor, IASA)

使用言語 / Language: 日本語 / Japanese

概要 / Abstract
  発表者は現在、博士論文を基礎とした『北宋絵画史の成立』という著書を執筆中である。本書が目指すものは北宋絵画史を美術作品としてではなく、社会の中で機能する文物としてとらえ、その多角的な機能を分析することにある。その舞台となるのは三館秘閣と呼ばれる宮廷コレクションの保存・公開場所の三百年に渡る歴史である。この場こそは、宋代の中国社会における意味の生成の中心であっただけではなく、東アジア全体の文物交流の結節点でもあった。11世紀前半には、その活動を象徴するものとして郭煕山水が成立するが、それはその後、三館秘閣の機能を通じて高麗に伝えられ李郭派山水の隆盛をもたらすこととなった。しかしその後の中国では、三館秘閣という場の崩壊によって郭煕山水は当初の意味を失い、元時代以降は形象の伝承として新しい価値が付与され、清代に至るまで長い歴史を刻むこととなる。この発表では、場の機能によって生成した様式が、場の消失によって意味を変容させていく過程を、北宋絵画史全体の問題としてとらえ、さらに新たな社会を形成していく様子を概観していきたい。

担当:塚本



登録種別:研究活動記録
登録日時:Fri Jul 31 12:23:58 2015
登録者 :張・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20150723 - 20151023
当日期間:20150723 - 20150723