毎年1回開催されるオスマン史研究会は、新型コロナウイルス流行により、過去2回はオンラインで開催されたが、第11回の今回は、対面とオンラインの併用によるハイブリッド形式により開催された。会場の感染対策基準により対面参加は14名(報告者やスタッフ除く)に絞らざるをえなかったが、休憩時間や終了後には、参加者同士のあいさつや抜刷りのやりとりなど、いつもと変わらない光景が見られた。対面参加者にはベテラン研究者から学部生まで含まれ、多様な世代の交流があった。他方、オンラインでは北海道から九州にいたる全国各地から45名が参加した。
堀井氏の報告は、今年1月に刊行された自著『近世東地中海の形成』の内容をまとめたうえで、今後の課題を述べたもので、マムルーク朝からオスマン帝国へ権力が移行する過程で、それぞれがヴェネツィアに与えた商業特権、条約規範について論じた。アフド概念や、オスマン朝が東地中海にもたらした「一元的秩序」などについて質疑応答がなされた。
相磯氏の報告は、海戦の「空白期間」とされる16世紀末〜17世紀前半における帝国艦隊の活動を対象とし、従来、海軍提督(カプダンパシャ)に集中しがちなオスマン帝国海軍研究に対して、島嶼州に属する県軍政官にあたるデルヤ・ベイにも着目することで、オスマン海軍史に新しい視点を導入することをめざしたものであった。質疑では、デルヤ・ベイに任命された人物を特定するための史料などについての意見が出された。
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日時:2022年7月9日(土) 13:30〜17:50
会場:東京大学東洋文化研究所3階大会議室/Zoom
プログラム:
司会 秋葉淳
13:30〜13:40 司会挨拶
13:45〜15:05 堀井優(同志社大学)(※オンライン参加)
「オスマン条約体制論の可能性--拙著『近世東地中海の形成』の内容と展望--」
15:45〜17:05 相磯尚子(慶應義塾大学)
「近世オスマン帝国艦隊とデルヤ・ベイ船団」
17:20〜17:50 総合討論
担当:秋葉