本講座は、東京大学東洋文化研究所が長年蓄えてきた知的ストックをもとにして、 研究所スタッフがわかりやすく解説する、アジアを知るための公開講座です。 第12 回は『アジアの文』です。 (過去に開催された公開講座の情報についてはこちらでご覧いただけます)
中国古代を研究するには資料が必要です。その資料は、文字(漢字)で書かれた資料と、文字のない資料とに分かれます。更に文字で書かれた資料は、『史記』などのように、人の手で書き写されて現代まで伝わった「伝世文献」と、発掘などによって発見された「出土文献」とがあります。文字が書かれる素材として紙が普及するまでは、竹や木を加工したものに文字が書かれていました。これを簡牘(かんとく)といいます。近年、中国などでは、「出土文献」の一種として簡牘がかなり発見されており、その内容は、法律行政文書・思想文献・占いの書など、さまざまです。これら簡牘資料は、中国古代研究に大きな影響を与え続けています。今回の講演では、その簡牘研究にまつわるトピックをいくつかご紹介したいと考えております。
私達は日々の暮らしの中で、当然のように文字とそれで構成された文章を読み書きし、またそれらによって表現された文学を楽しんでいます。私達が言葉を使うということは、現在、これらの「文」と分かちがたく結びついています。広告であろうと標識であろうと、文字を一つも読まずに過ごす一日はなかなか想像しがたいでしょう。しかし、このような言葉と「文」の結びつきは、人類の長い歴史の中では比較的新しいもので、世界の様々な地域・文化の歴史においては、現在の私達のものとは異なる言葉と「文」との関係が見られました。中でも興味深いのが南アジアにおける「文」で、様々な言葉・文字が同時に存在し、それらが社会階層や地域などで異なる機能を果たすという特徴を持ちます。今回の講演では、石や金属に刻まれた碑文を例として、南アジアにおける「文」の在り方を、その重層性と多様性という面から論じてみたいと思います。
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