
・今までの研究
国際衛生事業の歴史的発展を研究してきた。
世界保健機関(WHO)及びユニセフの設立プロセスを歴史的に明らかにし、戦後の国際衛生事業がLNHOの経験と反省の上に築かれたこと、その過程で、軍事力による事後措置ではなく、軍事力と国際協力双方によって支えられる、新しい国際安全保障の在り方が形成されてきたことを明らかにしてきた。更に、東アジアでは歴史的に、国際衛生事業が同地域の国際関係チャンネルの一つとして有効に機能してきたことも、日本外交に焦点を当てて分析してきた。
・現在の研究課題
以上の研究の結果、国際衛生協力を通じて東アジア諸国が機能的に国際協調を形成し、それが東南アジア諸国連合を軸とする政府間協議枠組みの下地を築いたという仮説を持つに至った。東アジア国際衛生事業の中心であった中国と東南アジアに焦点を当てて、上記仮説を検証し、東アジアにおける国際協調枠組みとしての国際衛生事業の重要性を歴史的に明らかにすること、国際協力としての国際衛生事業が、東アジアの平和構築にどのように貢献しうるのかを導き出していくこと、が目下の研究課題である。