外部資金による研究

文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査

当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。

 


長澤 榮治
基盤研究(A)
イスラーム・ジェンダー学構築のための基礎的総合的研究(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
後藤絵美,村上薫,松永典子,黒木英充,岩崎えり奈,服部美奈,岡真理,臼杵陽,山岸智子,嶺崎寛子,鷹木恵子,小林寧子,森田豊子,鳥山純子
研究の目的
 今日の中東・イスラーム地域は、革命・内戦・難民などの諸問題を抱えているが、それらをより深く構造的に分析するためにはジェンダーの視点が不可欠である。とくにイスラームにとってのジェンダー的公正という問題を軸に、文化・政治・開発などの諸側面を学際的に研究することが重要な課題となっている。本研究は、(1)従来、個別に行われてきた当該地域のジェンダー研究をまとめ上げ、(2)かつ広範囲の研究領域にジェンダー視点の導入を促進することで、(3)イスラーム・ジェンダー学という新しい研究分野の構築に向けた基礎固めを目的とする。具体的には、イスラームとジェンダー的公正をめぐる社会的動態の考察、ジェンダーの視点からの政治研究の再検討、広義の「開発」におけるジェンダー問題と実践という三点を主要課題とし、総合的に研究していく。



 


松田 康博
基盤研究(A)
対中依存構造化と中台のナショナリズム―ポスト馬英九期台湾の国際政治経済学―(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
黄偉修,高原明生,松本充豊,福田円,小笠原欣幸,若林正丈,佐藤幸人,家永真幸,江藤名保子,益尾知佐子
研究の目的
 2016年、台湾の馬英九政権は、2期8年の任期を終えた。民進党の蔡英文政権に交代したことで、これまで続いた中台間の「和解なき安定」という局面は終了した。台湾が対中国関係で有している「繁栄と自立のディレンマ」の下、台湾は「繁栄重視」から「自立重視」へと舵を切ることとなる。この間、台湾ナショナリズムが若年層を中心に増大傾向となった一方で、胡錦濤から習近平に指導者が交代し、中国では官製ナショナリズムの動員が強まっている。双方の政権担当者が交代することで、レッドラインの所在が曖昧化し、不確実性が高まる見込みである。本研究は、台湾の対中依存が構造化する一方で、双方のナショナリズムが直接ぶつかる可能性を孕む中台関係の新たな展開と構造を明らかにし、その日本や地域への影響を探る。 本研究では、①地域のパワーバランス、②ナショナリズム、③経済依存、④不確実性の4つの要素を念頭に、ポスト馬英九政権期の中台関係とその地域への影響に関して、メンバー間で適切な分業を行い、頻繁な意見交換と共有を通じて統合的な分析を進める。



 
 


黒田 明伸
基盤研究(B)
貨幣の多元性についての国際共同研究:世界史における貨幣間分業とその比較(2014〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 なぜ貨幣の統合は進まないのか。統合は取引費用を軽減するように考えられがちだが、実際には既存貨幣間の分業を代替できないまま解消してしまうからである。貨幣間が分業関係にあるのは貨幣の質に統合しきれない差があることによる。貨幣の質は二つの指標で測ることができる。第一に、通貨のもつ匿名性と信用の指名性のどちらにどれほど振れているか。第二に、地域内の取引を媒介する貨幣と地域間の取引を決済する貨幣との関係がどれほど固定的ないしは変動的か。国際共同研究により二つの指標から世界史上の貨幣制度比較を行い上記の仮説の有効性を確かめ、その検証を通して市場・社会関係の二分論を超えた両者の相互規定性を明らかにする。



 


菅 豊
基盤研究(B)
パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 宮内泰介、市川秀之、川田牧人、中澤克昭、加藤幸治、俵木悟、北條勝貴、西村明
研究の目的
 「日常的実践において歴史とのかかわりをもつ諸行為」(保苅 2004)と定義される歴史実践は、地域や時代、そして専門家/非専門家といったアクターの属性を越えて普遍的に見られる社会・文化現象である。歴史実践は単なる「過去の回顧」ではなく、「過去との対話を通じて現在の現実世界を創造する行為」である。人びとはなぜ歴史を振り返るのか?なぜ歴史を語りたがるのか?本研究では歴史実践の契機や企図、願望、思惑、そしてその実践の技法、さらにそれが社会や個人に与える影響といった、歴史実践の民族誌的分析をまず行い、さらにパブリック・ヒストリーという観点から読み直すことによって、多様なアクターが社会に開きながら協働して、自己/他者のために、積極的に歴史実践をする可能性と課題について明らかにすることを目的としている。



 


池亀 彩
基盤研究(B)
現代インドにおけるポスト開発:媒介と協同性のポリティクス(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 田辺明生,石坂晋哉,竹村嘉晃
研究の目的
 環境破壊や資源の枯渇が顕著になりつつあるインドにおいて、これまでのトップダウン型の開発援助に限界が見え始めている。今、注目されるのは、国家や市場経済そしてグローバルな市民社会と関わりながら、地域社会の人びとが自らの生活基盤を維持・向上しようとする動きである。 本研究はこうした新たなボトムアップの動きを「ポスト開発」という視点から描写・分析する。 特に、地域社会の「協同性」のありかたを人びとが再定義することで自らの社会・文化的な位置付けを向上させようとする動き、また地域社会と国家・市場・市民社会とを新たにつなぎ直そうとする「媒介者」の役割に着目する。「ポスト開発」の具体例として環境運動、オルタナティブな 開発運動、新しい文化・宗教運動を取り上げ、現地調査を通じてその可能性と課題を検討する。



 


中島 隆博
基盤研究(B)
東京学派の研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 園田茂人、小野塚知二、鍾以江
研究の目的
 「東京学派の研究」が目指すものは、近代日本において、東京大学を中心として形成された学術がいかなる問題系を構成し、それが思想的・政治的・社会的な影響を与えたのかを、国際的な角度から総合的に研究し、新たな研究のプラットフォームを作り上げる。
 具体的には、哲学、宗教学、経済学、社会学という相互に連関している諸領域を貫きながら、東京大学の学術編成において、ヨーロッパ・米国・アジアそして日本における問題系の循環の構造を明らかにし、その具体的な意義を分析し、別の仕方でありえたかもしれない学術の可能性を提示することを目指す。



 


藏本 龍介
基盤研究(B)
宗教組織の経営プロセスについての文化人類学的研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 清水貴夫、東賢太朗、岡部真由美、田中鉄也、中尾世治、門田岳久
研究の目的
 宗教とはなにか。この問題を追及するために本研究では、<宗教組織の経営プロセス>に注目した比較研究を行う。つまり①ヒト、②財、③言説といた諸要素が絡み合う中で宗教組織の諸活動が成立・変容するプロセスを民族誌的に記述する。そして個別事例を比較検討することによって、宗教組織ならではの経営プロセスの特徴を浮き彫りにする。こうした作業を通じて、「宗教とはなにか」という大きな問いに、一つの答えを提示することを目指す。



 


池本 幸生
基盤研究(C)
ソーシャル・ビジネスによる貧困削減と社会的包摂(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 松井 範惇
研究の目的
 発展途上国で貧困対策として広く活用されているマイクロ・クレジットは、融資を受けることができない人々に資金を提供するものである。これまで本申請者らはバングラデシュとスペインのマイクロ・クレジットの比較を通して、マイクロ・クレジットは、金融排除の問題の解決を通して、社会的排除の問題の解決を図るものであることを明らかにしてきた。社会的包摂こそが真の目的であり、それがマイクロ・クレジットの返済率の高さをもたらしているということである。
 本研究の目的は、貧困対策にはこのような社会的包摂の側面が必要であるということをタイとベトナムの少数民族に対する貧困政策を主な事例として明らかにすることである。さらに有機農業などの他のソーシャル・ビジネスにも、少数者を社会に取り込んでいくという包摂のプロセスを伴っていることを明らかにし、ソーシャル・ビジネスには社会的包摂の要素を持っていることを示す。



 


名和 克郎
基盤研究(C)
民族の名乗りと実践の現代的変容に関する民族誌的再検討─ランと国家制度、言説、移住(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、極西部ネパールからインド、ウッタラーカンド州のヒマラヤ地域に住み、自言語による集団範疇「ラン」を共有する人々に焦点を当て、ほぼ2世紀にわたり国境によって分断されながらも一つの「民族」の成員だと自己認識してきた人々が、グローバルに流通する概念の影響、国家の国内少数者への政策の変遷、多くの成員のグローバルな移住とコミュニケーションの増大といった現代的状況の中で、各々の生活世界との関係において、いかに、そしてどのような文脈で、「ラン」として生きるのかを、複数の場におけるフィールドワークに基づき検討しようとするものである。「民族」を含む集団範疇に関するより包括性の高い理論的展開のための基礎作業として、「民族」を巡る複数の問題系を一つの民族史的状況の中で統合的に検討することが目指される。



 
 


チャード ロバート
基盤研究(C)
Transculturation in the Introduction of Confucian Rituals in 18th Century Japan(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、18世紀日本における儒教の「礼」の広範な普及について考察するものである。幕藩政権は、社会秩序の改善をねらい、家臣・領民が「孝」をはじめとする徳目を内面化するよう誘導するため、儒教儀礼を利用しようとした。「礼」は元来、中国語の概念であるが、18世紀日本の藩主等による「礼」の実施は、彼らの「礼」の理解が、中国人と根本的に異なると同時に、17世紀日本において強調された「礼」の可視的な形式とも異なることを明らかにした。「トランスカルチュレーション」の過程を通して、日本の統治者は、自らの必要にしたがって「礼」を構築した。本歴史研究は、現代において道徳的価値が理解されるときの特殊文化的な仕方に密接に関係するものである。



 
 


馬場 紀寿
基盤研究(C)
漢訳仏典を中心とした中世スリランカ仏教の研究(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、今日の上座部仏教の起源となったスリランカ仏教の先行研究が抱えていた方法論的問題を解決するために、パーリ文献・考古資料に加えて、スリランカに関連する漢訳仏典を網羅的に調査し、中世スリランカ仏教を研究する。



 
 


大木 康
基盤研究(C)
中国近世の書物における読書符合の成立と展開(2017〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 現在われわれが目にする書物は、それが日本のものであれ、中国のものであれ、あるいは 欧文のものであれ、いずれも句点、読点その他、読書を便ならしめるための符号が加えられている。ところが、中国の古典籍において、それが刊行された時点では、本文の文字には句点、読点などがまったく施されていない 、いわゆる白文の状態が大部分であった。時代を通じて白文が主流ではあったが、やがて時代が下るにつれ、印刷された時から句点を加えたり、固有名詞に傍線を施したりした書物があらわれてくる。本研究は、印刷本が主流となる中国近世(宋・元・明・清)において、本文に句点その他の読書符号(標点符号)を付した書物の状況を通観し、その成立から展開、さらにはそれらが出現した背景をさぐることを目的とする。
 本研究はまた、書物がどのように読まれたのかという読書史、そして読者層の問題という社会史の分野にまで到る射程を持っている。



 


小寺 敦
基盤研究(C)
先秦時代血縁集団の研究―清華簡歴史説話諸篇を用いた楚地域からの定点観測― (2018~2020年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国先秦時代における血縁集団の形態は、特に東アジア諸地域において今日まで様々な形で多大な影響を与えてきた。その実態を伝世文献からのみにて迫ろうとする試みは限界を迎え、他方で中国先秦時代において周縁部であった楚地域から発見される出土資料が増大の一途にある。その種の新出土文献である清華簡の報告書第7冊は楚の近隣諸国の歴史説話を収める。これら歴史説話諸篇は同一の墓葬から出土したことが間違いなく、血縁集団に関連する多くの情報を含む。そこで本研究は先秦時代におけるミクロな視点による定点観測の試みとして、これら諸篇を検討対象としてそれらを釈読しつつ、伝世文献や他の出土文献との比較を通して、楚地域における血縁集団諸要素の実相を明確にする。その実相と従来の伝世文献を中心とする資料により得られた理解との差を浮かび上がらせることにより、中原王朝中心の単線的な歴史観からの脱却を図りつつ、先秦時代における血縁集団のあり方を解明する。



 


青山 和佳
基盤研究(C)
三世代のサマ・バジャウ移民家族を生活史の語り合いでつなぐー記憶の分有と想像力 (2018〜2020年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、申請者が過去20年間にわたり同じ調査地でのフォールドワークを通じ、オーラル・ヒストリー調査と家計調査により収集してきた資料を再構成した調査地住民(以下、住民)の生活史を住民と語り合うことによって分有し、他者への想像力を互いに喚起することをとおして、オーラルヒストリー(声)を用いた長期間に渡る地域研究がひらく回路を明らかにする。



 


古井 龍介
若手研究(A)
中世初期東インドにおける武力と武装集団:その性格と農村権力関係との関わり(2014〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、中世初期東インド諸地域における武力およびそれを担った武装集団の在り方を、同時代北インド諸地域との比較を通して多面的に考察し、それらの農村権力関係との関わりを解明することを目的とする。



 


上原 究一
若手研究(B)
明末清初の商業出版における同族書坊の広域的経営の実態の研究 (2017~2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 清代中期の白話小説『儒林外史』に嘉與文海楼と杭州文瀚楼の主人同士が兄弟だという描写があり、その頃に同族書坊の広域的経営が行われていたらしいことが知られているが、そうした実例がいつ頃からどの程度あったのかは判然としていない。然るに明末清初には、たとえば葉姓の書坊が建陽・南京・蘇州に、余姓や劉姓の書坊が建陽・南京に、周姓の書坊が南京・蘇州にある、といったように、離れた地域の書坊同士が同姓である例が少なからず見出される。このうち周氏については同一人物が南京・蘇州の両地域で出版を行ったことがあるのを研究代表者が既に明らかにしているが、多くの場合は同族であるか否か自体が未解明である。そこで、本研究ではそうした事例の精査を通して、明末清初の同族書坊による広域的経営の実態を把握することを目指す。



 


後藤 絵美
若手研究
近現代イスラームにおける「排除」と知識人に関する研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、近現代におけるイスラーム的知識の「統合」の中にあらわれる「排除」の現象に着目し、その背後にある権力構造を明らかにするものである。前近代のイスラームでは、確立した法学派の枠組みの中で教育を受けた少数の男性宗教学者が、イスラームの学問的知識を生み出し、その統合を担ってきた。一方、近現代においては、西洋近代的な法体系や教育制度が導入される中、多様な背景と地位を持つ男女の知識人が登場し、マスメディアを通して、それぞれの思考や思索を世に問うようになった。この新しい状況の中で、イスラーム的知識の統合は、一つに特定の立場の者を「排除」することではかられてきた。本研究では、20世紀エジプトの「近代主義者」「異端者」「女性」「復古主義者」の事例を取り上げ、彼ら彼女らが経験した「排除」の論理と圧力の資料的分析を通じて、近現代のムスリム知識人を取り巻く思想状況の特徴と、それを支える権力構造を浮かび上がらせる。



 


真鍋 祐子
挑戦的研究(開拓)
越境する画家、越境する作品世界:富山妙子の軌跡と芸術をめぐる歴史社会学的研究 (2017~2020年度)

 概 要 

研究分担者
金子毅、李美淑、藤岡洋
研究の目的
 本研究の目的は、50~60年代に筑豊と中南米に炭鉱労働者を取材して以来、アジアを描き続ける画家・富山妙子の寄贈資料を用いて、①図像、写真、音源等を含むデータベースを構築し、学術資料としてWEB公開する、②富山の作品世界の構築を知、旅、人的交流という三局面より捉え、資料を精査し、その足跡を実証的・内在的に検証する、③富山作品がその理論や思想を共有する人々を介して合法・非合法に越境し、そこに触媒された「意味」が世界の歴史的動態にいかなる波及効果をもたらしたかを、資料の精査とフィールドワークを通じて検証することである。こうした歴史社会学的知見をもって、ポストコロニアル批評の立場から戦争関連の富山作品をデジタル化したNorthwestern大学のプロジェクト”Imagination without borders”と相互補完的に連携し、互いにリンクさせ、世界の公共財とすることが最終的な目標である。



 


藤岡 洋
挑戦的研究(萌芽)
西北タイ歴史文化調査団蒐集8mm動的映像の「再資料化」と動的映像資料活用法の研究 (2018〜2020年度)

 概 要 

研究分担者
なし
研究の目的
 地域研究調査で記録される動的映像は資料化への方法論が確立されていないため、蒐集され保管されはするものの、利活用の場面でそのポテンシャルを十分に発揮しきれているとは言い難い。動的映像がもつリニア性は他種研究資料にも劣らず学術研究に寄与できるはずである。本研究はショット単位分析を元に、カット表・地誌データ・蓄積されてきた研究データを取り込んだメタデータを作成し、検索システムを構築する。その上で、このシステムによる他種学術資料整理への寄与の可能性を検証し、動的映像を学術研究に耐えうる資料として成立させうる方法論の提示を目指す。本研究対象は1970 年代初頭に西北タイ歴史文化調査団によって日本で初めて記録された調査地の8mm動的映像である。



 


米野 みちよ
研究活動スタート支援
フィリピン先住民の民謡の音声アーカイブ調査:アジアの近代性を理解するために(2017~2018年度)

 概 要 

研究分担者
なし
研究の目的
  フィリピンの先住民のサリドゥマイ(一定の様式による民謡の総称)がジャンルとして成立していった過程と変遷を通して、ポストコロニアル社会における近代化の過程を(西洋化とは区別して)理解し、アジアにおける近代性の理解を深める。
 1.フィリピン大学民族音楽学センターの音声アーカイブ(主に1950−1980 年代)の資料から、これまでの文献調査、参与観察、聞き取り調査等(1990−2000 年代)からは得られなかった、「当時、実際にどのように歌われていたのか」を調査する。
 2.労働歌や歌垣の消失と、アイデンティティ表現の生成を「近代性・近代化」の要素の一つとして考察するとともに、音楽の合理化、異国趣味の消費、「文字の文化」の台頭、伝統化、公共圏の再構成、植民地近代性、といった視点から、アジアの近代性について考察する。



教員以外

 


小泉 龍人
基盤研究(C)
オリエント都市形成期における土器焼成技術と彩文顔料の横断的研究(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、前4千年紀末に世界最古の都市の生まれたオリエントにおいて、都市形成期の彩文土器の胎土や彩文顔料を理化学的に分析しながら、窯による焼成技術と顔料の調合技術の地域横断的な広がりを解明していくことを目的としている。これまで研究代表者は、オリエントの中心に位置するメソポタミア周辺において、前6〜5千年紀の銅石器時代(都市形成期)を通した土器焼成技術の発展プロセスを実験考古学的に検証してきた。本研究は、こうした研究成果を踏まえて、新たに空間的な広がりも視野にいれて、より体系的なオリエントの工芸技術の解明を目指す。本研究のねらいとして、世界最古の都市形成に関連する工芸技術の解明に向けて、メソポタミアに留まらず、近隣のアナトリア、シリア、南コーカサスなども含めて、オリエントを横断的に扱うという手法に大きな特徴がある。



 


松尾 有里子
基盤研究(C)
オスマン帝国近世〜近代における社会変容とイスラム知識人(ウラマー)名望家層の成立(2017〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究はオスマン帝国における近世から近代にかけての社会変容をウラマー(イスラム知識人)層の政治、社会、経済活動に着目しつつ、検証することを目的とする。具体的には、16世紀中葉以降、オスマン帝国の司法行政と教育分野で枢要な地位を占めたエブッスード家を事例に、18世紀以降、同家が官僚制に依存した家系形成から脱し、都市部の宗教寄進地とその運用、近代教育分野への参入などを通じて、新しい社会に合致した名望家層へと変貌していく過程を明らかにする。これにより、これまで一般的に近代化の阻害要因として位置づけられる傾向にあったウラマー層が体制の変化に適応しつつ、存続していた実情を示すとともに、オスマン帝国のみならず、中東イスラム世界における近代化を検討するうえで、新たな視角を提示することができると考える。



 


宇野 瑞木
若手研究
室町期における「人物故事」と「自然」表象の研究――和漢のことばと絵の交叉から (2018~2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 室町期は、和歌漢詩、物語草子、説話・唱導、また注釈世界の広がりと共に、絵画化の動きとも連動しながら〈和/漢〉の多様なモティーフが近世的世界観へと転換を遂げていった過渡期であった。本研究では、この室町期から隆盛をみる「人物故事」を主題とする文学および絵画の近世への展開に着目し、「人物故事」にまつわるコード化された「自然」の〈和/漢〉の領域にまたがる配置と位相の変容のプロセスを明らかにすることを目指す。具体的には、中国の「人物故事」に伴う「自然」表現が、五山文学周辺の文化圏における「山水」という〈漢〉の領域から、次第に〈和〉の領域へと接続し、また断片化・再編成されていく複雑な様相を、文学・絵画、建築空間を横断しながら分析する。本研究は、室町期の自然観の変容の一端を明らかにすることを通して、人間中心の自然観に対する見直しという現代社会が直面する課題に対し、「近代/前近代」「西欧/日本」という従来の枠組みを基点とせずにこの問題を見据える視座を東アジアから拓くための足がかりとすることを目指す。



 


鵜飼 敦子
若手研究
「日本的なるもの」の伝播と深化 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究の中心は、「日本的なるもの」が明治期の日本でどのようにつくりあげられ、それが諸外国に伝播し深化したのかを解明することにある。19世紀末、ヨーロッパ諸国でジャポニスムとよばれる動きがあったことはすでに美術史のなかで語られているとおりである。本研究は、この文化の交差に注目するとともに、これまでのジャポニスム研究でおこなわれてこなかった事項に焦点をあてる。とりわけ、これまで歴史や美術史でとりあげられなかった、明治期に活躍した官吏であり画家であった高島北海の功績に着目する。国内で外国人から学んだ知識を活かしたうえで海外の滞在を経験し、帰国後に「東洋画」という新たな道を切り開いて、日本の伝統を生かした技術と文化を生み出した人物である北海をとおして、日本における芸術や科学の近代性を究明することが本研究の目的である。



 


石井 弓
国際共同研究強化
中国農村のお喋りとその伝播から記憶を再考する(国際共同研究強化)(2016〜2018年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国では、1949年の人民共和国建国以後、雨乞いをはじめとする宗教的活動が厳しく禁じられてきた。特に1950年代の破除迷信運動及び1966〜76年の文化大革命では民間の宗教活動に関連する廟や神像が破壊され、それらは完全に廃れてしまったと考えられてきた。しかしながら、1978年の改革開放以後、経済の急速な近代化に反して各地で雨乞いが復活する現象がみられ、活動は数十年の間民間で保存されてきたことが分かってきた。農民たちはなぜ政治的危険を冒しても神像を守ってきたのか、彼らは伝統と近代にどう向き合ってきたのか、近代化する農村でなぜ今雨乞いが必要なのか。本研究はこれらの問題関心について探求する。
 申請者はこれまで、山西省盂県農村で250名を超える農民へのインタビュー調査を行い、雨乞い復活の基礎的な調査を済ませている。本研究では、現地調査の蓄積と問題関心に切り込む分析視角を獲得するため、欧州歴史学の分析概念や視点を吸収して中国農村のミクロな歴史や現象を世界的な動きの中で捉えることを目指す。また、アジアとヨーロッパの研究者による、信仰と近代に関する中国農村の比較研究を行う。



その他の研究助成・奨学金

羽田 正
日本学術振興会 研究拠点形成事業 A.先端拠点形成型
新しい世界史/グローバル・ヒストリー共同研究拠点の構築 (2014〜2018年度)
菅 豊
サントリー文化財団 地域文化活動の実践者と研究者によるグループ研究助成
地域文化活動(闘牛)に対する外部影響と、その対応に関する協働的研究
—新潟県の国指定重要無形民俗文化財「牛の角突き習俗」をめぐって— (2017~2018年度)
佐藤 仁
公益財団法人豊田財団2017年度研究助成プログラム
ODA失敗案件の「その後」にみる開発援助事業の長期的評価 (2018~2019年度)
佐藤 仁
サントリー文化財団 人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成
ODA問題案件と「新たな依存」に関する歴史・政策的研究 (2018年度)
神田 惟
公益財団法人 鹿島美術財団「美術に関する調査研究の助成」
「ティムール・ルネサンス」以降のイランにおける工芸品とペルシア語詩の関係 (2018~2019年度)