外部資金による研究

文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査

当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。

 


中島 隆博
基盤研究(B)
東京学派の研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
園田茂人,小野塚知二,鍾以江,大木康,馬場紀寿,松方冬子
研究の目的
 「東京学派の研究」が目指すものは、近代日本において、東京大学を中心として形成された学術がいかなる問題系を構成し、それが思想的・政治的・社会的な影響を与えたのかを、国際的な角度から総合的に研究し、新たな研究のプラットフォームを作り上げる。
 具体的には、哲学、宗教学、経済学、社会学という相互に連関している諸領域を貫きながら、東京大学の学術編成において、ヨーロッパ・米国・アジアそして日本における問題系の循環の構造を明らかにし、その具体的な意義を分析し、別の仕方でありえたかもしれない学術の可能性を提示することを目指す。



 


藏本 龍介
基盤研究(B)
宗教組織の経営プロセスについての文化人類学的研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 清水貴夫、東賢太朗、岡部真由美、田中鉄也、中尾世治、門田岳久
研究の目的
 宗教とはなにか。この問題を追及するために本研究では、<宗教組織の経営プロセス>に注目した比較研究を行う。つまり①ヒト、②財、③言説といた諸要素が絡み合う中で宗教組織の諸活動が成立・変容するプロセスを民族誌的に記述する。そして個別事例を比較検討することによって、宗教組織ならではの経営プロセスの特徴を浮き彫りにする。こうした作業を通じて、「宗教とはなにか」という大きな問いに、一つの答えを提示することを目指す。



 


森本 一夫
基盤研究(B)
ムハンマド一族をめぐる諸言説に関する研究:イスラーム史研究の革新をめざして(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 新井和広,河原弥生
研究の目的
 本研究は、ムハンマド一族の地位と役割に関するムスリム諸言説(一族言説)の解明を直接的な目的とするが(目的1)、以下の二つの目的も併せ持つ。(目的2)ムハンマド一族と彼らの血統という主題は、イスラーム(史)研究で議論されてきた様々な主題(例:王権論、聖者崇敬、宗派間関係)と深く結びついている。本研究は、所与とされてきた諸種の概念や解釈に新たな角度から光をあて、イスラーム(史)研究全体に革新をもたらす。(目的3)イスラーム教の名のもとで展開された一族言説を具体的な社会的契機との関係のもとで解明する本研究は、まず「イスラーム」という実体を想定し、それでムスリム諸社会の動きを説明しようとする傾向を持ってきた日本のイスラーム(史)研究に対し、イスラーム教を「普通の宗教」と捉えることの重要性を示す。本研究は、イスラーム(史)研究を、イスラーム特殊論とは無縁な、より開いたものとしていくことも目的とする。



 


菅 豊
基盤研究(B)
「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 塚本麿充,米野みちよ,川田牧人,宮内泰介,小長谷英代,加藤幸治,俵木悟,塚原伸治,山下香,西村明,佐藤洋一
研究の目的
 世界の民俗学研究では、芸術=アートというジャンルが、積極的に研究に取り組まれてきたのに対し、日本の民俗学では十分に取り組まれてこなかった。本研究は、現代民俗学のキーコンセプトである「ヴァナキュラー(vernacular)」概念で捉えられるアート、すなわちヴァナキュラー・アートを題材に、民俗学的アート論の方法や理論を検討することによって、これまでの日本の民俗学が十分に取り組んでこなかったアートという研究ジャンルを日本の民俗学のなかに画定し、それに対応する研究視座を構築すること、さらに、ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート論によって、従来のアート研究では重きが置かれてこなかった普通の人びとのありきたりな日常的アート創作活動、すなわち「野の芸術」の様相と意義を問い直すことを目的としている。



 


黒田 明伸
基盤研究(B)
世界史における交換の多様性と貨幣の多元性についての国際共同研究(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 貨幣現象を論じるとき「悪貨が良貨を駆逐する」というような貨幣間の代替性を前提にした議論がなされやすい。しかし人類史全体においては複数の貨幣が機能的分業をもって併存する貨幣間の補完性を示す現象の方が多数であった。貨幣の多元性は交換の多様性に由来する。交換にあった手段を多様に組み合わせて各社会は交易を成り立たせてきた。その組み合わせが社会ごとにどのように違ったかを分析し、そうした相違が世界全体の変化とどう相関してきたか、を明らかにする。共同研究を通して、現行の社会科学がいわば与件としている一国一通貨制度が、人類史においてはむしろ特異な近代の所産であることが詳らかになり、ひいては望ましい貨幣システムを構想するための基礎となる視角を提供することになる。



 


園田 茂人
基盤研究(B)
中国台頭の国際心理:アジア太平洋地域におけるポスト冷戦世代の中国認識を中心に(2019~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国の台頭は、この十年ほど、広く世界の社会科学者の注目を浴びている。ところが、政治経済的アプローチは多いものの、社会心理学的なアプローチは少なく、中国自身の意図と周囲の理解・評価との間に大きなギャップがあるといった状況がある。
 本研究は、こうした従来の研究上の欠落を埋めるべく、調査対象者をポスト冷戦世代に絞り、以下の問いに答えることを目的としている。
 (1)アジア太平洋地域におけるポスト冷戦世代は、どのように中国の台頭を理解しているか。
 (2)アジア太平洋地域では、域内でどのような対中認識をめぐる共通点と相違点が見られ、これがどのような力学によって生まれているか。
 (3)冷戦体制崩壊後、中国から海外に移民した人々の第二世代は、中国台頭をどう眺めているのか。
 (4)これらの知見を総合し、調査対象者が各地のリーダーとなる2040年代、アジア太平洋地域で中国がどのようなプレゼンスを示すことになるか。



 


秋葉 淳
基盤研究(B)
オスマン帝国における社会階層とジェンダーに関する国際共同研究 (2020~2023年度)

 概 要 

研究分担者
川本智史,小笠原弘幸,松尾有里子,澤井一彰
研究の目的
 本研究は、17世紀以降のオスマン帝国社会の変容を社会階層とジェンダーという視点から明らかにすることを目的とする。すなわち、オスマン帝国社会を構成するさまざまな階層、社会集団の特質や相対的位置付け、それらの変化を分析することにより、オスマン社会の階層構造とその変容を把握することを課題とする。その目的のために、米国及びトルコの研究者と連携して行う国際共同研究を展開する。具体的には、(1)特定の社会集団の研究、(2)法・社会秩序とジェンダー、(3)文化と階層・ジェンダー、(4)構築される階層・ジェンダーという4つのアプローチから実証的研究を行い、それを基礎として、オスマン帝国史研究に新しい解釈枠組みを提供することをめざす。



 


佐藤 仁
基盤研究(B)
アジア・アフリカの開発学ー日本の開発協力経験に基づくフィールドからの体系化(2020~2022年度)

 概 要 

研究分担者
峯陽一,高橋基樹,黒田一雄
研究の目的
 本研究では ODAの質的変化と受け手による評価を中心に20~30年のスパンで検討し,次の3つの視角から「ODAの質を決定する地域的条件」を明らかにする。第一は援助案件の超長期的評価である。第二は「受け手目線」の徹底である。これまで書かれてきたODA史のほとんどが,援助業界の潮流を反映した「送り手目線」で書かれていることを考えると「受け手目線」を全面に出すことは本研究の大きな特徴になる。第三は援助が行われた当時の文脈を地域的な多様性からくみ上げることである。本研究においては,日本の援助が1960年代から主な対象としてきたアジアと2000年代以降に新たな援助対象として大きな比重を占めるようになったアフリカを両にらみにしながら,それぞれの地域の人々からみた開発協力の歴史を明らかにし, そこから地域研究に立脚した「アジア・アフリカの開発学」を構想する。



 


青山 和佳
基盤研究(B)
人間回復と地域社会再生のための有機農業:国際比較研究 (2021~2024年度)

 概 要 

研究分担者
受田宏之, 中西徹, 清水展
研究の目的
 本研究では、有機農業が、発展途上国の低所得層の生存戦略として社会的意義を有するのみならず、文化的側面においても大きな価値を有し、人間回復と地域社会の再生に寄与することを、比較分析を通じてあきらかにする。大正として、歴史的にアメリカとの密接な関係(隣国、植民地、占領支配)をとおしてグローバル化の影響を直接に受けてきた国である、フィリピン、日本およびメキシコを取り上げる。それらの3国で小地域社会における社会関係を基礎とする「提携」と「参加型有機認証制度」という二つのシステムの展開に着目し、未来への可能性を実証的に探る。



 


青山 和佳
基盤研究(C)
三世代のサマ・バジャウ移民家族を生活史の語り合いでつなぐー記憶の分有と想像力 (2018〜2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、申請者が過去20年間にわたり同じ調査地でのフォールドワークを通じ、オーラル・ヒストリー調査と家計調査により収集してきた資料を再構成した調査地住民(以下、住民)の生活史を住民と語り合うことによって分有し、他者への想像力を互いに喚起することをとおして、オーラルヒストリー(声)を用いた長期間に渡る地域研究がひらく回路を明らかにする。



 


古井 龍介
基盤研究(C)
前近代南アジアにおける文書と識字―中世初期ベンガル碑文集成の編纂を通して(2019~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、5世紀から13世紀のベンガルに属する碑文を調査・撮影・校訂し、碑文集成として刊行すること、およびそれを通して前近代南アジアにおける文書と識字の諸側面を明らかにすることを目的とする。具体的にはインド・バングラデシュで近年発見された未校訂碑文の調査・解読・論文としての公表を進めつつ、両国および欧米各国の諸機関に収蔵された公表済み碑文についても再調査・再校訂し、銅板文書とその他の碑文(石碑・像銘)に分類した上でそれぞれを碑文集として公刊する。また、同時に銅板文書など諸碑文の形状・形式の分析を進め、上記諸側面を解明する。



 


馬場 紀寿
基盤研究(C)
パーリ語世界の形成にかんする思想史的研究(2020~2024年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、「パーリ語世界がどのように生まれたのか」を考察するに当たり、パーリ語世界の成立の起点となったスリランカで最初に編纂・制作されたパーリ語文献に焦点を当て、その成立状況と思想内容を解明する。スリランカのパーリ文献を、インド本土で成立した仏教文献と比較することによって、パーリ文献に独自の思想の成立状況を調査する。さらに、これらパーリ文献の分析を通して東南アジア大陸部に影響を与えた思想が如何にして成立したのかを分析する。この二段階の作業を経て、パーリ語世界を形成した基本的思想がどのように生まれ、東南アジアに広まったのかを明らかにしたい。最終的には、サンスクリット語世界が始まった4、5世紀に、スリランカのパーリ語文献が独自に生み出し、後の東南アジア大陸部に影響を与え、パーリ語世界の礎となった諸思想を解明する。



 


大木 康
基盤研究(C)
明末「艶文学」の総合的研究(2020~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国の明末は、何らかの形で女性にまつわる文学、「艶文学」が盛んに行われた時代であった。白話小説の世界においては『金瓶梅』をはじめ、馮夢龍の「三言」、李漁の『十二楼』。文言の小説においても、秦淮寓客『緑窓女史』、王世貞の編とされる『艶異編』、馮夢龍の『情史類略』など、歴代の女性にまつわる物語を集めた故事集が続々と編まれた。戯曲については、湯顕祖の『牡丹亭還魂記』がその代表。艶詩人、王彦泓があらわれたのもこの時代。そして、歴代の妓女が作った詩を集めた『青楼韻語』、唐詩の中から女性を詠じた詩を集めた『唐詩艶逸品』なども編纂刊行されている。さらに『呉騒合編』『太霞新奏』などの散曲集、馮夢龍の『掛枝児』『山歌』など男女の恋情を主題とした俗曲集、民間歌謡集に至る。
従来の研究では、これらがジャンルごとにばらばらに行われてきたが、本研究では、これらを総合的に扱い、中国明末文学の深層に迫りたい。



 


柳 幹康
基盤研究(C)
『宗鏡録』の一心思想の研究 (2021~2025年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は東アジア仏教全体を展望する巨視的な視座の確立を目指し、『宗鏡録』が中国仏教独自の禅の立場からインド由来の仏教思想をいかに捉えなおしたのかを文献学的に解明する。
 『宗鏡録』は禅宗所伝の一心(本来仏である己の心)を明かすために仏典から要文を網羅的に蒐集し、100巻にまとめた書物である。そこでは禅の立場から従来の教・律・浄土など仏教の諸要素が一心看取のための手段として読み替えられている。『宗鏡録』は従来の多元的な仏教を禅の一心を核に一元的に再編するものであり、その後中国のみならず朝鮮・日本を含む東アジア一帯の仏教に多大な影響を及ぼした。
 本研究では『宗鏡録』と関連文献を比較分析することで、一心に関する諸説が従来の仏教においてどう形成され、それを『宗鏡録』がいかに摂取したのか、ならびに『宗鏡録』が一心に基づき従来の仏教を具体的にどう再解釈したのかを明らかにする。



 


藤岡 洋
挑戦的研究(萌芽)
西北タイ歴史文化調査団蒐集8mm動的映像の「再資料化」と動的映像資料活用法の研究 (2018〜2021年度)

 概 要 

研究分担者
なし
研究の目的
 地域研究調査で記録される動的映像は資料化への方法論が確立されていないため、蒐集され保管されはするものの、利活用の場面でそのポテンシャルを十分に発揮しきれているとは言い難い。動的映像がもつリニア性は他種研究資料にも劣らず学術研究に寄与できるはずである。本研究はショット単位分析を元に、カット表・未整理の静的映像・蓄積されてきた研究データを取り込んだメタデータを作成し、API(Application Pragramming Interface)を構築する。その上で、このシステムによる他種学術資料整理への寄与の可能性を検証し、動的映像を学術研究に耐えうる資料として成立させうる方法論の提示を目指す。本研究対象は1970 年代初頭に西北タイ歴史文化調査団によって日本で初めて記録された調査地の8mm動的映像である。



 


上原 究一
若手研究
明末清初における官刻・家刻・坊刻それぞれの実態の研究(2019~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 前近代の中国における出版には、皇室や官署による公的な出版である官刻、士大夫の個人的な自費出版である家刻、書坊による商業出版である坊刻の三種があったとされる。しかし、明末清初の出版物には、官署ないし士大夫個人が刊行者として署名するものの実際の刊刻作業は書坊に委託して版木は書坊が管理していたと思しき刊本、地方官が任地とは全く別の地域である自らの郷里の偉人を顕彰する内容の書物を任地で刊行させた刊本、書坊による通俗的な内容の出版物でありながら「官板」と謳っている刊本、数代続いた書坊の後継者でもあり進士に及第した士大夫でもある人物が地方官時代に任地で刊行した刊本など、単純にどれか一種には分類しづらい事例が多々見られる。そこで、本研究ではそうした事例を集めて精査することによって、明末清初における官刻・家刻・坊刻それぞれの実態を把握し、それらが互いにどのように絡みあっていたのかを解明することを目指す。



 


小川 道大
若手研究
18-20世紀におけるボンベイ市の経済発展 -インド史からの再考 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 インドの植民地化に前後する18世紀後半から20世紀初頭のボンベイ市の経済的発展・変容を長期で考察する。インド西海岸に位置するボンベイ市は現在もインド経済の中心であるが、その歴史的発展が論じられる際には、従来イギリスによる植民地化以降の対外貿易に高い関心が払われてきた。これに対して本研究はボンベイ市の経済発展・変容をインドの社会経済史に位置付けるべく、同市とインド亜大陸の接続に注目してその発展を考察する。
 上記の目標を達成すべく、本研究は18世紀後半から20世紀初頭のボンベイ市の商品流通構造に注目する。具体的には①ボンベイ市内の商品流通・蓄積を分析し市内の市場圏を解明するとともに、②ボンベイ市の後背地交易に注目して同市とインド亜大陸の双方向の経済的影響を考察する。さらに英語史資料のみならず、18世紀に関しては現地語(マラーティー語)の史資料を用いる。



 


具 裕珍
若手研究
1990年以降、日本の保守市民社会の動員と政治過程分析(2020~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、1990年以降日本における「保守市民社会」が「どのような条件下で動員されるのか」を保守市民社会の「政治過程」に着目し、明らかにすることを目指す。「保守市民社会」とは、市民社会の一部として機能し、皇室・伝統主義をはじめ、ナショナリズムや歴史修正主義、外国人排外主義や「誇りある日本」などの多様な主義・主張を掲げ、活動を展開している一連の個人や集団を指す。日本では特に1990年以降にそのプレゼンスが高まっている。本研究は、保守市民社 会の活動を網羅した「イベントデータセット」を作成し、これを用いて 1)保守市民社会の動員の程度、 2)どのような条件下で、日本の保守市民社会の動員が行われるのか、特に政治的環境に着目し、動員に影響を及ぼす要因と条件を解明する。本研究は、保守市民社会の政治過程とグローバル化時代における日本政治社会の右傾化をめぐる議論への理解を深めることを目指す。



 


田中 有紀
若手研究
中国における「科学」と「技術」の哲学:江永の「自然」と「人間」をめぐる思想 (2021~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は前近代中国における「科学」を対象に哲学的分析を行い、中国における「科学哲学」を構築することを目的とする。科学哲学が「科学という知的活動を対象とした哲学的考察」(野家啓一『科学哲学への招待』)であるならば、まず、中国に科学が存在していたかどうかを問わなければならない。科学が「観察や実験などの経験的方法に基づいて実証された法則的知識」(同上)であり、17世紀ヨーロッパの「科学革命」以降に定義されたのならば、中国で「科学革命」が起こらなかった以上、中国「科学」は科学ではない。「前近代中国は様々な分野で西欧文明に先んじていたのに、なぜ近代『科学』へ転換しなかったのか」という問いも不必要となる。「科学革命」を起こるべきものとして捉え中国に科学を見出そうとする考え方自体が西洋中心主義であるなら、中国には中国の「科学」との向き合い方があるはずであり、本研究ではその向き合い方そのものを分析する。



 


板橋 暁子
若手研究
魏晋南北朝隋唐時代における婚姻規範と実践 (2021~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究の目的は、魏晋南北朝隋唐時代の婚姻実践とその背景、影響を、規範と反規範という観点から明らかにすることである。研究史において、魏晋南北朝期から唐代初期までは、いわゆる門閥貴族が実権を握る時代として長らく位置づけられてきた結果、当該時期の婚姻に関する従来の研究も、貴族間の通婚と姻族関係の形成、あるいは特定の氏族に対する公主降嫁など皇室と貴族の通婚に関する研究が主流であった。本研究は、記録が残りやすい皇室・貴族を分析対象の一部に設定するという点で従来の研究と共通するが、従来の研究が、皇室・貴族間もしくは貴族間婚姻の分析を通じて政治権力の構築・維持・再配分といった動向を浮かび上がらせることに主眼があったのに対して、本研究は、いかなる社会階層の男女がいかなる関係性において婚姻を成立させるか、その婚姻を社会的に成立させる規範はいかなるものか、という点の解明に主眼がある。



 


具 裕珍
研究成果公開促進費(学術図書)
保守市民社会と日本政治ーー日本会議の動員とアドボカシー:1990-2012 (2021年度)

 概 要 

補助事業の目的
 本書は政治学の立場から「日本の右傾化」を分析することを企図しており、以下の点で学術書と しては例外的に緊急性の高い企画である。日本の右傾化論の中に日本会議を事例として取り上げた学術研究は、管見の限り本書が初めてのものであるため、早期の刊行により日本政治・ 社会において同問題に関する理解が深まる効果が見込まれる。さらに、時勢や政局の変容により、本書がカバーしている 1990 年から 2012 年までの分析を早期に紹介する必要性が高まっている。
 この時期を抑えた学術書の刊行は、それ以降、ひいては現在の政治・社会分析の基盤となるだろう。繰り返しになるが、本書は日本社会のみならず、日本の右傾化を懸念する東アジア近隣諸国の同問題への理解の深まりが期待される。



教員以外

 


鵜飼 敦子
若手研究
「日本的なるもの」の伝播と深化 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究の中心は、「日本的なるもの」が明治期の日本でどのようにつくりあげられ、それが諸外国に伝播し深化したのかを解明することにある。19世紀末、ヨーロッパ諸国でジャポニスムとよばれる動きがあったことはすでに美術史のなかで語られているとおりである。本研究は、この文化の交差に注目するとともに、これまでのジャポニスム研究でおこなわれてこなかった事項に焦点をあてる。とりわけ、これまで歴史や美術史でとりあげられなかった、明治期に活躍した官吏であり画家であった高島北海の功績に着目する。国内で外国人から学んだ知識を活かしたうえで海外の滞在を経験し、帰国後に「東洋画」という新たな道を切り開いて、日本の伝統を生かした技術と文化を生み出した人物である北海をとおして、日本における芸術や科学の近代性を究明することが本研究の目的である。



 


杉山 隆一
若手研究
近現代イランにおける聖地・聖廟の変容(2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 近現代イランにおける聖地・聖廟では、国民国家形成の過程で新たな役割の付与や経済・教宣面で先の時代には見られなかった活動が確認される。こうした新たな活動に基づく変化は、聖地・聖廟を体制の強化及び国益確保のツールとして活用するために政治権力側がもたらしたものと考えられる。しかし、同国の聖地・聖廟の近現代の変容に関して、具体的な事例に基づく実証的な研究が未だ少ない。こうした現状を鑑み、本研究では①立憲革命以降の聖地・聖廟に関する法整備の過程と成立した法の検討、聖地・聖廟の影響力を国益に転化する制度等の解明を行い、加えて、②国民国家形成過程で政治権力がもたらした聖地・聖廟の変化、中でも(A)聖地・聖廟の運営や活動、寄進財開発に関する変化、(B)イスラーム革命後に新たに重要視された聖地・聖廟とその変容につき考察を行い、当該の時代のイランの政治と宗教の関係を聖地・聖廟という視点から問うことを目指す。



 


野口 舞子
若手研究
マグリブのアラブ化に伴う社会統合の再検討:初期イスラーム史構築に向けた比較分析(2019~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、アラビア語の史料分析を元にマグリブ地域におけるアラブ化の過程とその地域間比較を行うことで、社会の変容と統合の過程を明らかにし、同地域の初期イスラーム史を構築することを目的とする。
 7世紀中葉以降のアラブ人勢力の進出は、しばしば社会の「イスラーム化」と称されてきた。しかし、その実態は、地域毎に進展速度や水準も異なるイスラーム化とアラブ化という二つの現象からなり、さらにマグリブ地域では両者に相当の時間差や地域差があった。このようなマグリブ地域における社会変動の実態を解明するには、未だ研究が十分ではない「アラブ化」の現象に迫る必要がある。具体的には、アラブ人の征服と移住、これに対するベルベル人の反抗や服従といったリアクション、両者の住み分けや混淆、言語・文化の浸透といった事象を歴史的に辿り、時代や地域毎の特徴を解明することで、同地域のアラブ化の見取り図を作成する。



 


水上 遼
研究活動スタート支援
中世イスラームにおけるスンナ派とシーア派の対話:十二イマームの美質の書の研究 (2021~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
  本研究の目的は、イスラームの二大分派であるスンナ派とシーア派の間で共通の崇敬対象となった十二イマームという宗教指導者に関する議論を分析し、両派の「対話」の歴史を明らかにすることにある。スンナ派とシーア派の関係史は、現代での紛争や国際関係上の問題から、「対立の歴史」とみなされ、両派の宗派意識や宗派境界は歴史上確固として存在したかのように語られることが多い。しかし実際には、シーア派(特に十二イマーム派)教義の中核的存在である十二イマームが、12世紀以降にスンナ派の一部でも崇敬対象となるなど、宗派のあり方には多様性や流動性がみられた。
 本研究では特に、両派の間で繰り返し書かれた、十二イマームの美質(素晴らしさ)に関する伝承を集めた、美質の書という作品群に着目する。そして、そこで自派と他派の区別や宗派意識・宗派境界がいかに論じられているかを分析し、対話を軸とした新たな両派の関係史の構築を目指す。



 


麻田 玲
研究活動スタート支援
研究活動スタート支援 農村の維持と成長の両立:マレーシア・スリランカの発展経験の再評価  (2021~2022年度)  

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 経済成長に伴う過度な都市集中を抑制し、農村も持続する発展にはどのような条件が必要だろうか。
本研究は、歴史的背景、複雑な民族・宗教構成など類似性を多く持つマレーシアとスリランカの発展経路に着目する。経済的指標を用いて2カ国を比較してきた先行研究の多くは、「マレーシアの成功とスリランカの失敗」という二極化した評価を固定的にし、長期的な時間軸での発展の経路とその影響を再評価してこなかった。
 そこで本研究は、貧困削減と産業発展を目的にして「都市化」を計画的にすすめてきたマレーシアと、都市よりも農村に焦点をおいた開発思想によって政府の意図を超えて農村の持続を可能にしてきたスリランカを、長期的な時間軸から比較し、都市・農村間の人口の空間的配置が国家の持続的な発展に与える影響を明らかにする。



その他の研究助成・奨学金

佐藤 仁
公益財団法人旭硝子財団研究助成プログラム
天然資源の持続的管理における中間集団の機能と可能性-東南アジアの比較事例研究(2020~2021年度)
松田 康博
公益財団法人JFE21世紀財団・アジア歴史研究助成
延長された国共内戦 - 中華人民共和国は領域内の軍事勢力をどう鎮圧したか (2021)
板倉 聖哲
公益財団法人鹿島美術財団 美術普及振興(調査研究)
中国絵画コレクションに関する基礎的な研究 (2021~2023)