外部資金による研究

文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査

当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。

佐藤 仁 
新学術領域研究(課題研究)
日本の被援助・開発経験に関する相互作用的研究―1950年代を中心に  (2009-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 下村 恭民
研究の目的
 本研究では、文献調査と関係者へのヒアリングを中心とし、これまで十分に解明されてこなかった①戦前から戦後における日本の資源政策の連続性と断絶、②戦後初期における対外援助の創生過程、③世界銀行・米国の対日援助と日本の対外援助政策への影響、をグループごとに研究することで明らかにし、その相互連関の分析から今後の日本のODAのあり方に向けた提言を行う。国際社会における日本のプレゼンスのさらなる低下を避ける視点から、関係諸機関や識者が様々な提案を行い、それらの実施可能性について調査・検討を行ってきた。デカップリング論議が盛んになり、世界経済に占める新興市場の比重の増加が加速する中で、貧困緩和を含む地球規模の課題への期待が高まっているが、ドナーとしての新興市場の行動パターンを、伝統的なドナーの視点からのみ考察することは適切でない。ドナーとしての新興市場が持つ「被援助体験と援助活動との組み合わせ」の構造を十分に理解し、これらの国々の資源を有効に活用する視点からも、同じ状況下での日本の体験を掘り下げて分析することには、大きな意義がある。



 


園田 茂人
新学術領域研究(研究領域提案型)
台頭する中産階級とその政治的・社会的インパクト:中印露比較研究   (2009-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究では、ユーラシアの地域大国である中国、インド、ロシアの中産階級を対象に、その台頭がもたらす政治的・社会的インパクトを明らかにする。
 従来、中産階級研究を担ってきた政治学や社会学は、これらの国での研究に特化する傾向があり、リサーチ・クエスチョンも各地でバラバラだった。たとえば、中国における中産階級の台頭は、共産党の一党体制への挑戦に繋がるか、従来不平等を認めてこなかった社会主義イデオロギーとどのような関係をもつか、といった点から論じられてきたが、インドでは旧来のカースト制度との関連性や、世俗化(宗教行為にどれだけ熱心か)、支持政党(会議派支持かどうか)などとの関連性が議論され、両者に共通する問いが意識されることは少なかった。それどころか3カ国以上の比較研究は皆無であり、この点の欠落はきわめて大きい。
 他方で、世界価値観調査やアジアバロメータなど、これら3つの地域の中産階級を比較することが可能なデータが集まりつつある。比較のフレームワークが整備されないままデータ収集が進んでいるのだが、本研究は、こうした「歪み」を是正することも念頭に置いている。
 中産階級研究に、ほぼ英語だけでアクセスできるインドを除き、中国語文献に詳しく社会学を専門にしている園田とロシア語文献に通じている経済学者の林(島根県立大学)が共同研究を進めることで、ユーラシアの地域大国で中産階級が台頭する政治的・社会的帰結を、その格差観、秩序観、政治意識、対外認識などから明らかにしたい。



 


小川 裕充
基盤研究(S)
美術に即した文化的・国家的自己同一性の追求・形成の研究―全アジアから全世界へ  (2007-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 秋山光文、朴亨國、桝屋友子
研究の目的
 研究の目的は、第一に、近代における文化的・国家的自己同一性の追求・形成が、アジアにおいて如何に行われてきたのかについて、伝統的な造形藝術の枠組に留意しつつ、美術という最も包括的かつ視覚的・明示的な枠組に即して、個別・具体的な調査・研究を進めることにある。
 第二に、近代列強としてほぼ全世界を植民地化したヨーロッパ・アメリカにおいて、特にアジア美術の収集状況を中心に調査・研究を進め、当地の大都市が如何にして美術館を運営・公開し、自ら世界都市たることの表象としているのかを探求することにある。
 第三に、近代列強の侵略を免れ、自ら帝国主義国家となって朝鮮と台湾を植民地化した日本と、タスマニア島人を絶滅させ、本土のアボリジニの土地を取り上げつつ、他国への侵略は行わない移民国家であり続けたオーストラリアという、特異かつ対照的な両国を指標として、アジア美術に即した自己同一性の追求・形成を多面的・立体的に把握することにある。



 


羽田 正 
基盤研究(S)
ユーラシアの近代と新しい世界史叙述  (2009-2013年度)

 概 要 

研究分担者
 岩井茂樹、島田竜登、杉浦未樹、松井洋子、松方冬子
研究の目的
 1)18-19世紀のユーラシアで、港町や隊商都市を基点として設定される多様な場(都市、地域社会、国家、海域世界など)における異文化交流(人・モノ・情報の受容、融合、拒絶)の実態を、史資料に基づき具体的に明らかにする。
 2)1)の研究成果を、同一の場における時間軸上の比較、多様な場同士の多面的な比較を通じて総合的に把握し、18-19世紀のユーラシアの歴史を一体としてとらえる視点の獲得を目指す。
 3)「国民国家や「ヨーロッパ(西洋)とアジア(東洋)」という既存の歴史叙述の単位にとらわれず、ユーラシア、さらに世界を一体と見る立場に立つ新しい世界史を構築するにはどのような叙述方法がふさわしいかを議論する。
 4)上記3つの段階を経て、本研究終了時に、18-19世紀という人類史における大きな転換の時代を描く新しい世界史のモデル(日本語と英語)を提示することを最終目標とする。



 


田中 明彦
基盤研究(A)
東アジアにおける地域協力枠組み発展の政治過程  (2009-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究が目的とするところは、以下の3点となる。
 第1の目的は、束アジアにおける地域主義ないし多国間外交の焦点とみなされるASEAN+3ならびに東アジア首脳会談」さらには「6か回協議」や「上海協力機構」など地域協力枠組みの成立と発展に関する基礎的情報をできるだけ詳細に記録することである。また、ASEAN+3の形成ならびにその他の地域枠組みの展開など広い意味での東アジア外交に携わった関係各国の政策担当者からの聞き取り調査を行なうことで、東アジア地域主義の歴史の基本資料を蓄積する。第2の目的は、上記のごとく収集された基本資料や二次文献をもとに、20世紀後半から21世紀にかけての東アジア地域協力枠組みの進展の歴史を叙述することである。単なる一国中心の歴史でなく、関係各国のASEAN+3に対する政策決定ならびに各国の相互作用の過程を広い国際政治の枠組みや国内政治との連関のもとで叙述・説明する。第3の目的は、このような東アジアにおける地域協力枠組みの進展の過程についての綿密な分析をベースに、他地域の地域統合の事例と比較検討することで、地域統合に関する新たな理輪的展開をめざすことである。これまでの地域統合の理論的検討は、おおむねヨーロッパの事例や部分的にASEANやその他地域の事例を中心としたものであった。ASEAN+3の事例を加えることで、これまでの理論的命題を再検証するとともに、あらたな概念や命題の提示を目指したい。



 


安冨 歩 
基盤研究(A)
「共同体」概念に依拠しない秩序形成の理論歴史学~魂の脱植民地化の新しい展開~  (2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 深尾葉子、脇田晴子、長崎暢子、中村尚司、生田美智子、千葉泉、西川英彦、中山俊秀
研究の目的
 現代は「市場」の力が急激に拡大し、「共同体」が崩壊の危機に立たされている時代であり、それが各人の抱く不安の原因だ、と観念されることが多い。しかしこの種の議論の前提には、「共同体/市場」という二項対立枠組があり、そこに無自覚であることが、認識上のゆがみをもたらしている。本研究では、「共同体」「共同性」「共通性」「共有」といった概念に逃げ込まず、人々が社会秩序を形成し維持する過程を具体的に見ること、そのために必要な概念を実証的研究に立脚して提案することを目指す。このような観点から、歴史学をはじめとする社会科学の成果を見直すことで、重要な突破口を開きうるものと考える。この研究は、西欧近代科学を深い水準で取り込むと共に、西欧的な思い込みから自由な感覚を保持しうる日本という場で行なうにふさわしい、独創性の高いものである。また、昨今は学問の社会的効用が云々されており、「実学」と見做されない歴史学は、存亡の危機に立っているとさえ言える。本研究により、歴史学を中心としつつ新しい思想的地平を切り開き、具体的なマネジメントにまで考察を広げることで、歴史学の持つ大きな社会的効用を立証し、その基盤を強化することに繋がるものと考える。



 


長澤 榮治
基盤研究(B)
IT時代における現代アラビア語の言語社会学的研究  (2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 杉田英明、加藤博、小杉泰、西尾哲夫
研究の目的
 本プロジェクトは、アラブ世界の国民国家形成と近代化過程の中で成立した「現代アラビア語」が、今日の情報革命とマスメディアの展開による言語環境の変化の中で、新たに果たしつつある政治社会的な役割について、とくに言語環境と社会・政治変容との関係に注目しながら、地域研究的な共同研究を行うことを目的にする。その場合、方法論的には言語社会学的な研究を中心に据えながらも、イスラーム学や政治学、歴史学、そして言語学やアラブ文学など複数の専門領域の枠組みと手法を動員した学際的な分析と考察を行う体制を取る。本研究が中心的に取り上げる研究テーマは、(1)「現代アラビア語」の言語社会学的研究、(2) 正則アラビア語(フスハー)とイスラーム政治運動との関係、(3) 方言アラビア語(アーンミーヤ)と社会各層のアイデンティティの三つの課題である。また、四番目の課題として、こうした地域研究的な共同研究と並行して、変化の著しい「現代アラビア語」の実態分析のための研究ツールの開発、とくにアラビア語の複雑で精緻な体系を持った文法構能造に対応した辞書検索機能を持ったデータベースの構築を目指す。



 


松井 健 
基盤研究(B)
工芸の生産・流通・消費とグローバリゼーション――新しい「工芸の人類学」の構想  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 工芸は、世界各地で住民の生活に役立てられてきたために、豊かな地域的な変異と長い伝統をもっており、古くから人類学の研究課題となり、物質的文化研究の重要な一部であった。しかし、かえって各地方の生態や生活を反映するその豊かな地域性、固有文化とかかわる独自の造形や意味付与、長大な伝統と歴史性は、工芸を扱いにくい課題としてきた。本研究は、こうした多面的な工芸を、以下のような観点から研究調査し、現在における新しい工芸の人類学的研究を樹立することを目指している。(1)グローバル化の著しい今日の世界において、豊かな地域性や文化固有性、歴史性をもつ工芸が、どのように変容し、生き残ったり絶滅したり、逆に大きく販路を増やしたりしているかを調査する。(2)さらにコモディティとして特異な運動をする工芸を手がかりにして、グローバル化する経済の特異な経済事象の分析のための視座を考える。(3)これらの研究遂行過程における資料の蓄積と公開によって、困難な現状に直面している日本やアジアの工芸のための、知的サポートが可能になる。



 


園田 茂人
基盤研究(B)(海外)
『中国』と向き合って:日韓台対中進出企業の現地化プロセスに関する比較社会学的研究  (2009-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 この10年ほどの間に、日本ばかりか韓国、台湾も中国との結びつきなしに自国の経済が成り立たないほどにまで中国との経済関係が深化している。そればかりか、韓国からは70万人、台湾からは100万人を超えるビジネスマンが中国大陸で生活しているとされるほどに、中国が多くの人的資源を引きつけている。その意味でも、中国に進出した企業の現地化プロセスを対象に日韓台比較を行うことは、社会的にもきわめて意義深く、特に韓国や台湾でのニーズは強い。
しかし、中国に対する知的関心は、それぞれの国・地域の特徴を色濃く反映している。対中企業進出に関しては、韓国では企業戦略(本社サイド)にウエイトを置いた研究が多いのに対して、台湾の場合、企業と地方政府との関係にウエイトを置いた研究が多い。他方で日本の研究は、現地従業員を対象にしたモラールサーベイを含め、もっとも多角的な研究がなされているが、韓国や台湾との比較を試みたものは、特定産業における投資戦略や立地戦略のそれなどで、多面的な考察が不足している。
 本プロジェクトは、こうした従来の研究の限界を突破し、今まで申請者が作り上げてきた韓国、台湾、中国の研究者ネットワークをうまく利用することで、「中国」に向き合って現地化を図ってきた日系、韓国系、台湾系企業の比較分析を行うことを目的としている。



 


中里 成章
基盤研究(B)(海外)
インド・パキスタン分離独立の農村的起源―ベンガルの場合―  (2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 植民地インドは、1947年8月、インドとパキスタンに分離して独立した。この分離独立の主要な原因が、ヒンドゥーとムスリムの間の宗教対立—コミュナリズム—にあったことは周知のとおりである。コミュナリズムは1946年以降凄惨なコミュナル暴動として爆発し、分離独立期の歴史を暗く彩っている。  申請者は、コミュナリズムの拡大深化も含め、印パ分離独立の社会的・経済的背景を明らかにすることを研究の柱の一つにしてきた。本プロジェクトはその一環をなすもので、分離独立の時にインドの西ベンガル州と東パキスタンとに分割されたベンガル州に地域を絞り、新たに公開された原史料を利用して、1930年代から40年代にかけて、農村部でコミュナリズムがどのようにして広がり、農民の支持を獲得したかを解明し、印パ分離独立研究の重要な欠落部—分離独立の農村的起源の問題—を埋めることを目指す。コミュナル問題は現代の南アジアでも深刻な政治・社会問題になっている。本プロジェクトは実証的な歴史研究であるが、現代的意義も有すると考えられる。



 


菅 豊  
基盤研究(B)
現代市民社会に対応する『公共民俗学』創成のための基礎研究  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 周星、徳丸亜木、小長谷英代、加藤幸治
研究の目的
 日本の民俗学は、その学問の初発に「学問救世」という実践的目標を掲げ、また、古くから国や地方公共団体などの公共部門において、社会と密接に関わる実践活動に携わってきた。しかし、後年のアカデミズムの浸透に伴い、現実社会の問題とは乖離した学問になってしまった。本研究は、そのような日本の民俗学を現実社会に引き戻し、民俗学と社会との関係性を再考するために、「学問の公共性」を眼目とした新しい民俗学の方向性を創成することを目指している。具体的には、民俗学の実践と社会連携の実例と理論を詳細に検討することによって、「公共民俗学」という現代市民社会に対応する民俗学の「転回点」を生み出すことを目的としている。



 


松田 康博
基盤研究(B)
繁栄と自立のディレンマ―ポスト民主化台湾の国際政治経済学―  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 田中明彦、高原明生、若林正丈、小笠原欣幸、松本充豊
研究の目的
 本研究は、中国が大国化したことにより、台湾が「繁栄と自立のディレンマ」に陥るようになった中台関係の構造を明らかにすることを目的としている。台湾は経済的に発展したとはいえ、承認国が少なく、同盟国もなく、武器を売却する国も僅かである。台湾の存在と安全は米中という大国の政策に依存しているのであり、基本的な安全が保障されない構造の下で、台頭する中国に対して台湾の選択肢は年々狭まっている。馬英九政権は、就任一年あまりの間に中台間の非公式対話を再開させ、直航便を定期化し、中国からの観光客を受け容れ、中国からの投資を拡大し、金融協力や犯罪者引き渡しなどの協定を結ぶなどして、急速に中国との関係緊密化を進めた。経済を優先する馬英九政権は、台湾内部で、経済繁栄のために自立と安全保障を犠牲にしているとの批判を浴びている。ただし、中国との経済関係なしに台湾経済の将来を描くことはほぼ不可能になりつつある。こうした事象を学術的に分析し、理論面でも貢献することが本研究の目標である。



 


黒田 明伸
基盤研究(B)
取引の一時性・季節性そして空間性がもたらす貨幣間の補完性についての国際共同研究  (2010-2013年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 貨幣はなぜ単一にならないのか。国家を超えて共通通貨をもつこともあるが、国家の中に事実上複数貨幣が併存することはけっしてめずらしいことではなく、むしろ18世紀までは人類のほとんどが複数の貨幣を使って交易をなしてきた。複数になるのは需要が異なるからであり、需要が異なるのは取引の多様な一時性と季節性が異なる空間分布をもって働いているからである。一方で、そうした不均質に分布する需要に応えるように単一の通貨を供給することは容易なことではなく、同じ通貨を異なるように評価したり、地域的な貨幣や地域的な信用供与を創造したりして対応することになる。国際共同研究により、貨幣需要における時間と空間の分布の不均質さが裁定による均質化を上回るが故に貨幣は多元化し諸貨幣が補完性をもつという仮説を、世界史上の諸事例により検証する。



 


柳澤 悠 
基盤研究(B)
独立後インドの消費変動:農村社会経済構造の長期変動との関連に注目して  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 井上貴子、杉本良男、杉本星子、杉本大三
研究の目的
 本研究は、1980年代から顕著となる現代インドの消費の拡大と多様化を、1980年以前の長期にわたる農村・農業社会の階層変動との関連で分析する。その際、教育・宗教など生活スタイルや生活文化の全体的変容を視野にいれつつ、消費行動を経済的な要因のみならず下層民の自立化など社会的要因や社会的意識との関連でとらえ、消費の増大・多様化が地域の職や産業に与える影響をも視野にいれる。村落での世帯聴取り調査、独立前の時期からの現地語の新聞・雑誌の広告などの分析、National Sample Surveyの個票データの統計的分析などを有機的に結合することによって、農村社会経済構造の長期の歴史的変容こそが現代インド経済成長の原動力の最重要要因の一つであることを、そのメカニズムの解明を伴って説得的に実証することを目指している。



 


名和 克郎
基盤研究(C)
体制転換期ネパールにおける政治言語の流通と変容に関する言語人類学的研究  (2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究は、極西部ネパールにおける人類学的フィールドワークに基づき、体制転換期ネパールにおける広義の政治言語の生成、流通、変容の布置の一例を、同時代的に記録し分析する試みである。多くのネパール国民が表明した「新しいネパール」への希望と、政党やNGO、民族組織等の運動体が発する具体的なアジェンダとが、新たな憲法が作られ新たな政治体制が動き出すであろう三年間に、いかに接合し或いは齟齬をきたし、いかなる方向に収斂していくのかを、特定の地方に焦点を当てて、言語使用の水準にまで降り立って具体的に明らかにすることが目標である。



 


大木 康 
基盤研究(C)
明清の王朝交替と杜詩学  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 明の崇禎17年(1644)、明王朝が滅亡し、まもなく満州人の王朝である清に取って替わられる。清朝は、再三にわたる「文字獄」を行うなど、漢人知識人に対してきびしい姿勢で臨んだ。漢人知識人の屈折した意識は、詩作品、あるいは詩学(詩の解釈学)の場において、きわめて隠微な形であらわれる。そんな状況のもと、清初の時期には、杜甫の詩についての選集、注釈、批評などが数多く生みだされている。本研究は、当時の人びとが好んで杜甫の詩を取り上げた理由、また彼らの仕事の従来の杜甫解釈との相違点などの分析を通じて、明王朝の滅亡、清王朝の支配という大事件が、中国詩学に、どのような影響を受けたのかを明らかにすることを目的とする。



 


池本 幸生
基盤研究(C)
貧困削減における社会的企業のグローバルな役割:理論と実証  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 1990年代から主流となる発展途上国における貧困削減政策は、当初、援助的性格の強いものであり、援助によって貧困状態から抜け出せば、後は自律的に成長できると想定されていた。しかし、この手法が、必ずしも持続的発展に結びつかないことが明らかになる一方、初めから援助には頼らず、貧困解消という社会的目的を目指しながら経済性を持つ新しい制度を構築することによって、貧困削減を達成しようとする試みが様々な形で実践されるようになり、成果を挙げている。その代表例がバングラデシュのグラミン銀行であり、このような社会的目的を営利企業として実現しようとするのが社会的企業である。このような社会的企業は、マイクロクレジットの分野だけでなく、フェアトレード、有機農業やサステナブル・コーヒーやエコツーリズムなど様々な分野で見られ、社会的目的も、貧困削減だけでなく、環境保全を目指すもの、その両者を同時に達成しようとするものなど多様である。
 本研究は、情報と理性的判断にセンの着目する理論的枠組みに従って、現在、アジアの国々ですでに確立した社会的企業の他、現れ始めている新しい試みの多様な実態と、それらの試みを経済的に成立させている仕組みをケイパビリティ・アプローチを用いて理論的実証的に示すことを目的とする。



 


大野 公賀
基盤研究(C)
李叔同(弘一法師)をめぐる日中文化交流の研究:中国の近代化と日本(2011-2013年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
本研究は近代中国における西洋文化受容の草分けである李叔同(りしゅくどう、1880-1942、1918年に出家した後は弘一法師)の日中両国での文化活動、特に李叔同とその周辺の日中知識人の動向に着目し、20世紀前半の日中の文化交流について検証しようとするものである。
李叔同は1905�11年に日本に留学し、西洋美術、音楽、演劇等の西洋文化を日本経由で吸収した。帰国後は豊子祥┐曚Δ靴�ぁ"1898-1975)ら後継者の育成に尽力して近代中国における西洋文化受容の礎を築き、その影響力は出家後も続いた。日中両国の西洋文化受容の背景には、国民国家の建設と個の確立という近代化の課題が存在するが、本研究ではこの点に関する李叔同らの認識についても考察する。



 


古井 龍介
若手研究(B)
中世初期東インドにおける社会形成:規範の構築と諸社会集団間の交渉  (2010-2013年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究は、中世初期東インド、すなわちベンガル、ビハール、アッサム地域におけるカースト的社会の形成を、ブラーフマナら識字エリート層による規範の構築と、他の社会集団によるその受容・抵抗という諸社会集団間の交渉の過程として捉え、その結果として形成された社会秩序の中世における展開を展望し、また東インド諸地域におけるこのような社会変動の相違と類似性を考察することを目的とする。具体的には、プラーナ、ダルマニバンダといった規範文献を歴史的文脈に置き直した上で詳細に分析することを通して、それらを編纂した識字エリート層による社会認識の枠組を明らかにするとともに、彼らに認識された他の社会集団との権力関係を把握する。その上で、同時代の碑文、サンスクリットおよびアヴァハッタ、古ベンガル語で書かれた諸文献に見られる諸社会集団の描写、特に定住農耕社会側から見た非農業社会集団の描写を分析・比較することで、それら社会集団間の関係に検討を加え、その結果と規範文献分析の結果を突き合わせることで、規範的社会秩序受容・定着の過程を跡付けて中世初期におけるカースト的社会形成の態様を解明し、その後の社会変化への展望を導き出す。また、それらの社会変化が環境および社会構成の異なるベンガル、ビハール、アッサムにおいてどのように展開するかを比較・考察する。



 


辻 明日香
若手研究(B)
聖人伝史料によるマムルーク朝期コプト社会の研究  (2010-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 社会の多数派が少数派に対して抱く感情や態度が、少数派の生活にどのような影響を及ぼすのかという問題は、人類社会のあり方を考える上で、根本的な重要性を持つ。本研究では、マムルーク朝期エジプトにおける、土着の単性論派キリスト教徒であるコプトと、多数派であるムスリムとの関係を取り上げる。
14世紀、信仰の場を奪われたコプトの多くは改宗した。その際、残されたコプトの精神的支えとなったのが、一般信徒の助言者として活躍し、様々な奇蹟を起こした聖人であった。14世紀には数多くの聖人伝が編纂されている。 具体的には、コプト大改宗の要因と過程、教会の改宗防止策を、(1)コプト聖人伝写本の網羅的収集、(2)聖人の伝記や奇蹟譚に現れる当時のコプト社会の状況分析、により解明する。その上で、社会の「イスラーム化」がコプト社会に与えた影響と、その変容を明らかにする。



 


安田 佳代
若手研究(B)
東アジア国際衛生事業の展開と地域内国際協力枠組みの形成1945 - 1965年(2011-2014年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本申請者はこれまで、東アジアにおける国際衛生事業が同地域の国際関係チャンネルの一つとして有効に機能してきたことを、日本外交に焦点を当てて分析してきた。その結果、国際衛生協力を通じて東アジア諸国が機能的に国際協調を形成し、それが東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸とする政府間協議枠組みの下地を築いたという仮説を持つに至った。本研究では、東アジア国際衛生事業の中心であった中国と東南アジアに焦点を当てて、上記仮説を検証し、東アジアにおける国際協調枠組みとしての国際衛生事業の重要性を歴史的に明らかにする。そして国際協力としての国際衛生事業が、東アジアの平和構築にどのように貢献しうるのかを導き出していく。
 具体的には以下の方法による。①国際連盟保健機関(LNHO)による対中国技術協力と②LNHOシンガポール伝染病情報局を中心とする伝染病情報業務の戦後への継承を個別に検討し、この二つの事業を軸に、戦後の東アジアにおいて機能的に国際協調が形成されていったことを、歴史史料に依拠して時代順に検証していく。



 


馬場 紀寿
研究活動スタート支援
パーリ註釈文献と北伝資料の比較分析による部派仏典の伝承史的研究(2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究は、五世紀にスリランカで編纂されたパーリ註釈文献と五世紀以前にインドで成立した北伝部派資料(サンスクリット写本、漢訳資料、チベット訳資料)を比較研究することによって、「伝承史」という視点から五世紀以前の部派仏教を描き直すことを目的としている。部派仏教の仏典伝承に関して、近年、日本と欧米で全く相反する説が並行しているが、インドにおける部派仏教の歴史を解明するための資料としては従来注目されてこなかったパーリ註釈文献を取り上げ、北伝の部派文献と比較研究することによって、諸部派に共有されていた伝承を掘り起こし、それらの伝承が展開する歴史的過程を分析することによって、五世紀以前の諸部派の状況を新たな視点から明らかにする。



 


鵜飼 敦子
研究活動スタート支援
「日本的なるもの」の受容と創造(2010-2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究の目的は、「日本的なるもの」が日本でどのようにつくりあげられ、諸外国で受容されたのかを解明することにある。19世紀末、ヨーロッパ諸国で「ジャポニスム」とよばれる動きがあったことはすでに美術史のなかで語られているとおりである。日本が自国の文化を失いつつあったとき、一方では「日本的なるもの」に幻想をいだき、それらをとりいれようと試みた国々があった。本研究は、この文化の交差に注目するとともに、これまでの「ジャポニスム」研究でおこなわれてこなかった事項に焦点をあてる。さらには「ジャポニスム」研究の枠組み自体を再考したいと考える。ヨーロッパやアメリカにとって「日本的なるもの」とはいかなるものであったのか、また、近隣諸国の中国や韓国、東アジアでは、なぜ「日本的なるもの」がとりいれられなかったのかを、芸術、科学、近代性に着目することにより究明することが本研究の目標とするところである。



 


卯田 宗平
研究活動スタート支援
中国二大淡水湖における生活・生業転換の同質性と異質性:1949−2010(2011-2012年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 本研究の目的は、中国二大淡水湖である江西省鄱陽湖と湖南省洞庭湖の湖岸の村落を対象に、①新中国成立前から集団化の時代、改革開放を経て現在に至るまでの生活・生業転換のプロセスを明らかにし、②地域間比較の視点から個々の事例の同質性と異質性を導き出すものである。
本研究は、急激な経済発展が進む長江中流域の漁村社会を対象に、漁民の生活の現状とそれに至った通時的な変化を明らかにし、その上で村落間に違いをうみだすメカニズムを導き出そうとする点が独創的である。また、研究の過程では、中国の村落の変容をより多面的な角度から評価できる指標を開発する点に発展性がある。



 


田中 明彦
研究成果公開促進費(データベース)
日本政治・国際関係データベース  (2011年度)

 概 要 

研究分担者
 
研究の目的
 我が国の内政・外交ならびに国際関係にかかわる重要な政治文書など(国会等での演説、国際的共同宣言、条約、協定、政府文書、報告書等)に関して、その全文とともに、その他の必要事項(演説、宣言者の氏名、タイトル、発表場所、発表年月日等)を収録し、漢字仮名まじりの日本語でデータベース化する。ただし原文が英語や中国語である場合、あるいは公的機関による英語訳や中国語訳が存在する場合には併せて英文や中文も収録する。平成22年度は、すでに公開している「日本政治・国際関係データベース」(http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/index.html)に、未収録の直近の首相や外相の演説、情報公開された文書、収録されていない重要文書、日々発生する新たな重要文書などを加え、内容を充実させ、価値を高めていくことを目的とする。また、すでに公開しているもので、書式が重要な情報をなす文書においては書式を改変し、より利用しやすいデータベースとなるよう工夫する。
現代史ならびに現代社会の研究において、正確にテキスト化され、インターネットで容易な検索で瞬時にみることができる文書データベースは、学校教育の現場などでも多く利用され、学術的価値は極めて高い。



その他の研究助成・奨学金

黒田 明伸
トヨタ財団研究助成金 (2010~2011)
園田 茂人
旭硝子財団・ステップアップ助成 (2009~2011)
田中 明彦
三菱財団人文科学研究助成金(2011)
馬場 紀寿
三島海雲記念財団学術研究奨励金(2011)