外部資金による研究

文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査

当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。

 


松田 康博
基盤研究(A)
対中依存構造化と中台のナショナリズム―ポスト馬英九期台湾の国際政治経済学―(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
黄偉修,高原明生,松本充豊,福田円,小笠原欣幸,若林正丈,佐藤幸人,家永真幸,江藤名保子,益尾知佐子,清水麗,佐橋亮
研究の目的
 2016年、台湾の馬英九政権は、2期8年の任期を終えた。民進党の蔡英文政権に交代したことで、これまで続いた中台間の「和解なき安定」という局面は終了した。台湾が対中国関係で有している「繁栄と自立のディレンマ」の下、台湾は「繁栄重視」から「自立重視」へと舵を切ることとなる。この間、台湾ナショナリズムが若年層を中心に増大傾向となった一方で、胡錦濤から習近平に指導者が交代し、中国では官製ナショナリズムの動員が強まっている。双方の政権担当者が交代することで、レッドラインの所在が曖昧化し、不確実性が高まる見込みである。本研究は、台湾の対中依存が構造化する一方で、双方のナショナリズムが直接ぶつかる可能性を孕む中台関係の新たな展開と構造を明らかにし、その日本や地域への影響を探る。 本研究では、①地域のパワーバランス、②ナショナリズム、③経済依存、④不確実性の4つの要素を念頭に、ポスト馬英九政権期の中台関係とその地域への影響に関して、メンバー間で適切な分業を行い、頻繁な意見交換と共有を通じて統合的な分析を進める。



 


中島 隆博
基盤研究(B)
東京学派の研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
園田茂人,小野塚知二,鍾以江,大木康,馬場紀寿,松方冬子
研究の目的
 「東京学派の研究」が目指すものは、近代日本において、東京大学を中心として形成された学術がいかなる問題系を構成し、それが思想的・政治的・社会的な影響を与えたのかを、国際的な角度から総合的に研究し、新たな研究のプラットフォームを作り上げる。
 具体的には、哲学、宗教学、経済学、社会学という相互に連関している諸領域を貫きながら、東京大学の学術編成において、ヨーロッパ・米国・アジアそして日本における問題系の循環の構造を明らかにし、その具体的な意義を分析し、別の仕方でありえたかもしれない学術の可能性を提示することを目指す。



 


藏本 龍介
基盤研究(B)
宗教組織の経営プロセスについての文化人類学的研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 清水貴夫、東賢太朗、岡部真由美、田中鉄也、中尾世治、門田岳久
研究の目的
 宗教とはなにか。この問題を追及するために本研究では、<宗教組織の経営プロセス>に注目した比較研究を行う。つまり①ヒト、②財、③言説といた諸要素が絡み合う中で宗教組織の諸活動が成立・変容するプロセスを民族誌的に記述する。そして個別事例を比較検討することによって、宗教組織ならではの経営プロセスの特徴を浮き彫りにする。こうした作業を通じて、「宗教とはなにか」という大きな問いに、一つの答えを提示することを目指す。



 


森本 一夫
基盤研究(B)
ムハンマド一族をめぐる諸言説に関する研究:イスラーム史研究の革新をめざして(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 新井和広,河原弥生
研究の目的
 本研究は、ムハンマド一族の地位と役割に関するムスリム諸言説(一族言説)の解明を直接的な目的とするが(目的1)、以下の二つの目的も併せ持つ。(目的2)ムハンマド一族と彼らの血統という主題は、イスラーム(史)研究で議論されてきた様々な主題(例:王権論、聖者崇敬、宗派間関係)と深く結びついている。本研究は、所与とされてきた諸種の概念や解釈に新たな角度から光をあて、イスラーム(史)研究全体に革新をもたらす。(目的3)イスラーム教の名のもとで展開された一族言説を具体的な社会的契機との関係のもとで解明する本研究は、まず「イスラーム」という実体を想定し、それでムスリム諸社会の動きを説明しようとする傾向を持ってきた日本のイスラーム(史)研究に対し、イスラーム教を「普通の宗教」と捉えることの重要性を示す。本研究は、イスラーム(史)研究を、イスラーム特殊論とは無縁な、より開いたものとしていくことも目的とする。



 


菅 豊
基盤研究(B)
「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 塚本麿充,米野みちよ,川田牧人,宮内泰介,小長谷英代,加藤幸治,俵木悟,塚原伸治,山下香
研究の目的
 世界の民俗学研究では、芸術=アートというジャンルが、積極的に研究に取り組まれてきたのに対し、日本の民俗学では十分に取り組まれてこなかった。本研究は、現代民俗学のキーコンセプトである「ヴァナキュラー(vernacular)」概念で捉えられるアート、すなわちヴァナキュラー・アートを題材に、民俗学的アート論の方法や理論を検討することによって、これまでの日本の民俗学が十分に取り組んでこなかったアートという研究ジャンルを日本の民俗学のなかに画定し、それに対応する研究視座を構築すること、さらに、ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート論によって、従来のアート研究では重きが置かれてこなかった普通の人びとのありきたりな日常的アート創作活動、すなわち「野の芸術」の様相と意義を問い直すことを目的としている。



 


黒田 明伸
基盤研究(B)
世界史における交換の多様性と貨幣の多元性についての国際共同研究(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 貨幣現象を論じるとき「悪貨が良貨を駆逐する」というような貨幣間の代替性を前提にした議論がなされやすい。しかし人類史全体においては複数の貨幣が機能的分業をもって併存する貨幣間の補完性を示す現象の方が多数であった。貨幣の多元性は交換の多様性に由来する。交換にあった手段を多様に組み合わせて各社会は交易を成り立たせてきた。その組み合わせが社会ごとにどのように違ったかを分析し、そうした相違が世界全体の変化とどう相関してきたか、を明らかにする。共同研究を通して、現行の社会科学がいわば与件としている一国一通貨制度が、人類史においてはむしろ特異な近代の所産であることが詳らかになり、ひいては望ましい貨幣システムを構想するための基礎となる視角を提供することになる。



 


園田 茂人
基盤研究(B)
中国台頭の国際心理:アジア太平洋地域におけるポスト冷戦世代の中国認識を中心に(2019~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国の台頭は、この十年ほど、広く世界の社会科学者の注目を浴びている。ところが、政治経済的アプローチは多いものの、社会心理学的なアプローチは少なく、中国自身の意図と周囲の理解・評価との間に大きなギャップがあるといった状況がある。
 本研究は、こうした従来の研究上の欠落を埋めるべく、調査対象者をポスト冷戦世代に絞り、以下の問いに答えることを目的としている。
 (1)アジア太平洋地域におけるポスト冷戦世代は、どのように中国の台頭を理解しているか。
 (2)アジア太平洋地域では、域内でどのような対中認識をめぐる共通点と相違点が見られ、これがどのような力学によって生まれているか。
 (3)冷戦体制崩壊後、中国から海外に移民した人々の第二世代は、中国台頭をどう眺めているのか。
 (4)これらの知見を総合し、調査対象者が各地のリーダーとなる2040年代、アジア太平洋地域で中国がどのようなプレゼンスを示すことになるか。



 


名和 克郎
基盤研究(C)
民族の名乗りと実践の現代的変容に関する民族誌的再検討─ランと国家制度、言説、移住(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、極西部ネパールからインド、ウッタラーカンド州のヒマラヤ地域に住み、自言語による集団範疇「ラン」を共有する人々に焦点を当て、ほぼ2世紀にわたり国境によって分断されながらも一つの「民族」の成員だと自己認識してきた人々が、グローバルに流通する概念の影響、国家の国内少数者への政策の変遷、多くの成員のグローバルな移住とコミュニケーションの増大といった現代的状況の中で、各々の生活世界との関係において、いかに、そしてどのような文脈で、「ラン」として生きるのかを、複数の場におけるフィールドワークに基づき検討しようとするものである。「民族」を含む集団範疇に関するより包括性の高い理論的展開のための基礎作業として、「民族」を巡る複数の問題系を一つの民族史的状況の中で統合的に検討することが目指される。



 
 


馬場 紀寿
基盤研究(C)
漢訳仏典を中心とした中世スリランカ仏教の研究(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、今日の上座部仏教の起源となったスリランカ仏教の先行研究が抱えていた方法論的問題を解決するために、パーリ文献・考古資料に加えて、スリランカに関連する漢訳仏典を網羅的に調査し、中世スリランカ仏教を研究する。



 
 


大木 康
基盤研究(C)
中国近世の書物における読書符合の成立と展開(2017〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 現在われわれが目にする書物は、それが日本のものであれ、中国のものであれ、あるいは 欧文のものであれ、いずれも句点、読点その他、読書を便ならしめるための符号が加えられている。ところが、中国の古典籍において、それが刊行された時点では、本文の文字には句点、読点などがまったく施されていない 、いわゆる白文の状態が大部分であった。時代を通じて白文が主流ではあったが、やがて時代が下るにつれ、印刷された時から句点を加えたり、固有名詞に傍線を施したりした書物があらわれてくる。本研究は、印刷本が主流となる中国近世(宋・元・明・清)において、本文に句点その他の読書符号(標点符号)を付した書物の状況を通観し、その成立から展開、さらにはそれらが出現した背景をさぐることを目的とする。
 本研究はまた、書物がどのように読まれたのかという読書史、そして読者層の問題という社会史の分野にまで到る射程を持っている。



 


小寺 敦
基盤研究(C)
先秦時代血縁集団の研究―清華簡歴史説話諸篇を用いた楚地域からの定点観測― (2018~2020年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国先秦時代における血縁集団の形態は、特に東アジア諸地域において今日まで様々な形で多大な影響を与えてきた。その実態を伝世文献からのみにて迫ろうとする試みは限界を迎え、他方で中国先秦時代において周縁部であった楚地域から発見される出土資料が増大の一途にある。その種の新出土文献である清華簡の報告書第7冊は楚の近隣諸国の歴史説話を収める。これら歴史説話諸篇は同一の墓葬から出土したことが間違いなく、血縁集団に関連する多くの情報を含む。そこで本研究は先秦時代におけるミクロな視点による定点観測の試みとして、これら諸篇を検討対象としてそれらを釈読しつつ、伝世文献や他の出土文献との比較を通して、楚地域における血縁集団諸要素の実相を明確にする。その実相と従来の伝世文献を中心とする資料により得られた理解との差を浮かび上がらせることにより、中原王朝中心の単線的な歴史観からの脱却を図りつつ、先秦時代における血縁集団のあり方を解明する。



 


青山 和佳
基盤研究(C)
三世代のサマ・バジャウ移民家族を生活史の語り合いでつなぐー記憶の分有と想像力 (2018〜2020年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、申請者が過去20年間にわたり同じ調査地でのフォールドワークを通じ、オーラル・ヒストリー調査と家計調査により収集してきた資料を再構成した調査地住民(以下、住民)の生活史を住民と語り合うことによって分有し、他者への想像力を互いに喚起することをとおして、オーラルヒストリー(声)を用いた長期間に渡る地域研究がひらく回路を明らかにする。



 


Chard Robert
基盤研究(C)
From Transculturation to Culture-Specific Ethics: The Implementation of Confucian Ritual Forms in 19th Century Japan(2019~2022年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
This research will investigate Confucianism in Japan from cultural history and material culture perspectives, examining the purpose and function of visible Confucian ritual forms as maintained during the 19th century in domain schools. Confucianism in Japan is usually studied as a tradition of ideas, focusing on particular teachers as thinkers. This project takes a new and different perspective, approaching Confucianism as a cross-cultural phenomenon manifested and transmitted to a significant degree through material objects and physical practices.



 


古井 龍介
基盤研究(C)
前近代南アジアにおける文書と識字―中世初期ベンガル碑文集成の編纂を通して(2019~2023年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、5世紀から13世紀のベンガルに属する碑文を調査・撮影・校訂し、碑文集成として刊行すること、およびそれを通して前近代南アジアにおける文書と識字の諸側面を明らかにすることを目的とする。具体的にはインド・バングラデシュで近年発見された未校訂碑文の調査・解読・論文としての公表を進めつつ、両国および欧米各国の諸機関に収蔵された公表済み碑文についても再調査・再校訂し、銅板文書とその他の碑文(石碑・像銘)に分類した上でそれぞれを碑文集として公刊する。また、同時に銅板文書など諸碑文の形状・形式の分析を進め、上記諸側面を解明する。



 


池亀 彩
基盤研究(C)
経済新興国インドにおけるギグ・エコノミーと新しい信頼関係の可能性(2019〜2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 経済新興国インドは、目覚ましい経済発展を誇るが、教育・健康・賃金などを測る人間開発指数はほとんど上昇していない。雇用なき発展といわれる現状が指摘される一方で、情報技術を用いた不安定な大量の「雇用」が生み出されている。本研究では配車サービス・アプリによって出現した150万人ともいわれるドライバーに着目し、彼らが、それまで生活をそれまで守っていた様々なトラスト関係(親族、カースト、宗教団体、ユニオンなど)から離れ、どのような問題を抱えているのかを人類学的な手法を用いて明らかにする。情報技術が生み出す新しい経済活動と信頼(トラスト)との相互作用をポランニーの「埋め込み」概念を鍵として考察し。旧来のトラスト関係はどう新しい状況に対応しているのか、また新しいトラスト関係が生まれる可能性はあるのか、刻々と変化する労働者とプラットフォーム技術との関係を追いながら、より人間的な経済関係の可能性を考察する。



 


真鍋 祐子
挑戦的研究(開拓)
越境する画家、越境する作品世界:富山妙子の軌跡と芸術をめぐる歴史社会学的研究 (2017~2020年度)

 概 要 

研究分担者
金子毅、李美淑、藤岡洋
研究の目的
 本研究の目的は、50~60年代に筑豊と中南米に炭鉱労働者を取材して以来、アジアを描き続ける画家・富山妙子の寄贈資料を用いて、①図像、写真、音源等を含むデータベースを構築し、学術資料としてWEB公開する、②富山の作品世界の構築を知、旅、人的交流という三局面より捉え、資料を精査し、その足跡を実証的・内在的に検証する、③富山作品がその理論や思想を共有する人々を介して合法・非合法に越境し、そこに触媒された「意味」が世界の歴史的動態にいかなる波及効果をもたらしたかを、資料の精査とフィールドワークを通じて検証することである。こうした歴史社会学的知見をもって、ポストコロニアル批評の立場から戦争関連の富山作品をデジタル化したNorthwestern大学のプロジェクト”Imagination without borders”と相互補完的に連携し、互いにリンクさせ、世界の公共財とすることが最終的な目標である。



 


藤岡 洋
挑戦的研究(萌芽)
西北タイ歴史文化調査団蒐集8mm動的映像の「再資料化」と動的映像資料活用法の研究 (2018〜2020年度)

 概 要 

研究分担者
なし
研究の目的
 地域研究調査で記録される動的映像は資料化への方法論が確立されていないため、蒐集され保管されはするものの、利活用の場面でそのポテンシャルを十分に発揮しきれているとは言い難い。動的映像がもつリニア性は他種研究資料にも劣らず学術研究に寄与できるはずである。本研究はショット単位分析を元に、カット表・地誌データ・蓄積されてきた研究データを取り込んだメタデータを作成し、検索システムを構築する。その上で、このシステムによる他種学術資料整理への寄与の可能性を検証し、動的映像を学術研究に耐えうる資料として成立させうる方法論の提示を目指す。本研究対象は1970 年代初頭に西北タイ歴史文化調査団によって日本で初めて記録された調査地の8mm動的映像である。



 


後藤 絵美
若手研究
近現代イスラームにおける「排除」と知識人に関する研究 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、近現代におけるイスラーム的知識の「統合」の中にあらわれる「排除」の現象に着目し、その背後にある権力構造を明らかにするものである。前近代のイスラームでは、確立した法学派の枠組みの中で教育を受けた少数の男性宗教学者が、イスラームの学問的知識を生み出し、その統合を担ってきた。一方、近現代においては、西洋近代的な法体系や教育制度が導入される中、多様な背景と地位を持つ男女の知識人が登場し、マスメディアを通して、それぞれの思考や思索を世に問うようになった。この新しい状況の中で、イスラーム的知識の統合は、一つに特定の立場の者を「排除」することではかられてきた。本研究では、20世紀エジプトの「近代主義者」「異端者」「女性」「復古主義者」の事例を取り上げ、彼ら彼女らが経験した「排除」の論理と圧力の資料的分析を通じて、近現代のムスリム知識人を取り巻く思想状況の特徴と、それを支える権力構造を浮かび上がらせる。



 


上原 究一
若手研究
明末清初における官刻・家刻・坊刻それぞれの実態の研究(2019~2020年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 前近代の中国における出版には、皇室や官署による公的な出版である官刻、士大夫の個人的な自費出版である家刻、書坊による商業出版である坊刻の三種があったとされる。しかし、明末清初の出版物には、官署ないし士大夫個人が刊行者として署名するものの実際の刊刻作業は書坊に委託して版木は書坊が管理していたと思しき刊本、地方官が任地とは全く別の地域である自らの郷里の偉人を顕彰する内容の書物を任地で刊行させた刊本、書坊による通俗的な内容の出版物でありながら「官板」と謳っている刊本、数代続いた書坊の後継者でもあり進士に及第した士大夫でもある人物が地方官時代に任地で刊行した刊本など、単純にどれか一種には分類しづらい事例が多々見られる。そこで、本研究ではそうした事例を集めて精査することによって、明末清初における官刻・家刻・坊刻それぞれの実態を把握し、それらが互いにどのように絡みあっていたのかを解明することを目指す。



教員以外

 


宇野 瑞木
若手研究
室町期における「人物故事」と「自然」表象の研究――和漢のことばと絵の交叉から (2018~2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 室町期は、和歌漢詩、物語草子、説話・唱導、また注釈世界の広がりと共に、絵画化の動きとも連動しながら〈和/漢〉の多様なモティーフが近世的世界観へと転換を遂げていった過渡期であった。本研究では、この室町期から隆盛をみる「人物故事」を主題とする文学および絵画の近世への展開に着目し、「人物故事」にまつわるコード化された「自然」の〈和/漢〉の領域にまたがる配置と位相の変容のプロセスを明らかにすることを目指す。具体的には、中国の「人物故事」に伴う「自然」表現が、五山文学周辺の文化圏における「山水」という〈漢〉の領域から、次第に〈和〉の領域へと接続し、また断片化・再編成されていく複雑な様相を、文学・絵画、建築空間を横断しながら分析する。本研究は、室町期の自然観の変容の一端を明らかにすることを通して、人間中心の自然観に対する見直しという現代社会が直面する課題に対し、「近代/前近代」「西欧/日本」という従来の枠組みを基点とせずにこの問題を見据える視座を東アジアから拓くための足がかりとすることを目指す。



 


鵜飼 敦子
若手研究
「日本的なるもの」の伝播と深化 (2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究の中心は、「日本的なるもの」が明治期の日本でどのようにつくりあげられ、それが諸外国に伝播し深化したのかを解明することにある。19世紀末、ヨーロッパ諸国でジャポニスムとよばれる動きがあったことはすでに美術史のなかで語られているとおりである。本研究は、この文化の交差に注目するとともに、これまでのジャポニスム研究でおこなわれてこなかった事項に焦点をあてる。とりわけ、これまで歴史や美術史でとりあげられなかった、明治期に活躍した官吏であり画家であった高島北海の功績に着目する。国内で外国人から学んだ知識を活かしたうえで海外の滞在を経験し、帰国後に「東洋画」という新たな道を切り開いて、日本の伝統を生かした技術と文化を生み出した人物である北海をとおして、日本における芸術や科学の近代性を究明することが本研究の目的である。



 


杉山 隆一
若手研究
近現代イランにおける聖地・聖廟の変容(2018~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 近現代イランにおける聖地・聖廟では、国民国家形成の過程で新たな役割の付与や経済・教宣面で先の時代には見られなかった活動が確認される。こうした新たな活動に基づく変化は、聖地・聖廟を体制の強化及び国益確保のツールとして活用するために政治権力側がもたらしたものと考えられる。しかし、同国の聖地・聖廟の近現代の変容に関して、具体的な事例に基づく実証的な研究が未だ少ない。こうした現状を鑑み、本研究では①立憲革命以降の聖地・聖廟に関する法整備の過程と成立した法の検討、聖地・聖廟の影響力を国益に転化する制度等の解明を行い、加えて、②国民国家形成過程で政治権力がもたらした聖地・聖廟の変化、中でも(A)聖地・聖廟の運営や活動、寄進財開発に関する変化、(B)イスラーム革命後に新たに重要視された聖地・聖廟とその変容につき考察を行い、当該の時代のイランの政治と宗教の関係を聖地・聖廟という視点から問うことを目指す。



 


野口 舞子
若手研究
マグリブのアラブ化に伴う社会統合の再検討:初期イスラーム史構築に向けた比較分析(2019~2021年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究は、アラビア語の史料分析を元にマグリブ地域におけるアラブ化の過程とその地域間比較を行うことで、社会の変容と統合の過程を明らかにし、同地域の初期イスラーム史を構築することを目的とする。
 7世紀中葉以降のアラブ人勢力の進出は、しばしば社会の「イスラーム化」と称されてきた。しかし、その実態は、地域毎に進展速度や水準も異なるイスラーム化とアラブ化という二つの現象からなり、さらにマグリブ地域では両者に相当の時間差や地域差があった。このようなマグリブ地域における社会変動の実態を解明するには、未だ研究が十分ではない「アラブ化」の現象に迫る必要がある。具体的には、アラブ人の征服と移住、これに対するベルベル人の反抗や服従といったリアクション、両者の住み分けや混淆、言語・文化の浸透といった事象を歴史的に辿り、時代や地域毎の特徴を解明することで、同地域のアラブ化の見取り図を作成する。



 


石井 弓
国際共同研究強化
中国農村のお喋りとその伝播から記憶を再考する(国際共同研究強化)(2016〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 中国では、1949年の人民共和国建国以後、雨乞いをはじめとする宗教的活動が厳しく禁じられてきた。特に1950年代の破除迷信運動及び1966〜76年の文化大革命では民間の宗教活動 に関連する廟や神像が破壊され、それらは完全に廃れてしまったと考えられてきた。しかしながら、1978年の改革開放以後、経済の急速な近代化に反して各地で雨乞いが復活する現象がみられ、 活動は数十年の間民間で保存されてきたことが分かってきた。農民たちはなぜ政治的危険を冒しても神像を守ってきたのか、彼らは伝統と近代にどう向き合ってきたのか、近代化する農村でなぜ 今雨乞いが必要なのか。本研究はこれらの問題関心について探求する。
 申請者はこれまで、山西省盂県農村で250名を超える農民へのインタビュー調査を行い、雨乞い復活の基礎的>な調査を済ませている。本研究では、現地調査の蓄積と問題関心に切り込む分析視角を獲得するため、欧州歴史学の分析概念や視点を吸収して中国農村のミクロな歴史や現象を世界的な動きの中 で捉えることを目指す。また、アジアとヨーロッパの研究者による、信仰と近代に関する中国農村の比較研究を行う。



 


神田 惟
研究活動スタート支援
近代日本における「ペルシア/波斯」美術コレクション形成と日本画・洋画・工芸の展開(2018〜2019年度)

 概 要 

研究分担者
 なし
研究の目的
 本研究の目標は、第一に、大正時代以降、古美術商を介し我が国に流入した西アジア美術品の学術的価値の見直しを図ることである。具体的には、1946 年以降の正倉院宝物の一般公開を契機とした「ペルシア/波斯」文化への社会的関心の高まりを受け、国内で好んで収集された特定のタイプの「ペルシア/波斯」美術品(「ペルシア三彩」)に焦点を当て、イランにおける学術的発掘で得られた来歴が確実な考古遺物と照合することで、真贋の鑑定を行う。第二に、「ペルシア三彩」を含む、イスラーム化以降に比定される「ペルシア」美術品が当時の国内の学界においてどのように解釈され、近代日本画家・洋画家・工芸家の創作活動にどのような影響を及ぼしたのかについて、作家たち自身の収集した作例やそれらを題材とした作品に加え、彼ら自身の発言や、彼らの交友・師弟関係を網羅的に検証し明らかにすることである。これらの2 つの目標の達成により、日本における「ペルシア/波斯」観形成・発展プロセスの実態を解明し、その成果を国際的に発信することで、広義な意味での「オリエンタリズム」研究に貢献することが、本研究の目的である。



その他の研究助成・奨学金

佐藤 仁
公益財団法人トヨタ財団2017年度研究助成プログラム
ODA失敗案件の「その後」にみる開発援助事業の長期的評価 (2018~2020)
佐藤 仁
サントリー文化財団 2018年度 人文科学、社会科学に関する学際的グループ研究助成
ODA問題案件と「新たな依存」に関する歴史・政策的研究 (2018~2019)
森本 一夫
日本学術振興会 二国間交流事業セミナー
「知」と「力」:ムスリム諸社会における知の創出・統制・操作(2019>年度)
米野 みちよ
公益財団法人トヨタ財団2019年度国際助成プログラム「アジアの共通課題と相互交流 −学びあいから共感へ−」
アジアの高齢化と人の移動を展望し活力を生み出す起業、政策提言、研究—フィリピン、インドネシア、ベトナムのEPA看護師らの交流(2019〜2021)
神田 惟
公益財団法人 鹿島美術財団「美術に関する調査研究の助成」
「ティムール・ルネサンス」以降のイランにおける工芸品とペルシア語詩の関係 (2018~2019年度)