取り組んでいるテーマ
魏晋南北朝時代は、隋唐に連なる官制・税制・軍制・芸術等の新機軸を創出した時代として注目されることが多かった。とはいえ、非漢人が史上初めて中国本土に王朝を樹立した点において、また、基本的に統一王朝であった漢代四百年間と異なり、同時期に並立する各王朝の「正統/非正統」が常に問題として意識されるようになった点においても、中国史上のひとつの画期にあたる。自分の研究は、従来の研究ではあまり重視されてこなかった、「周縁」化された側、とくに王朝の臣属政権である各地の藩屏の動向が、王朝の自己像としての「正統」観の形成にいかなる影響を及ぼしたかという問題に重点を置いてきた。魏晋南北朝時代における「正統/非正統」「中央/周縁」観の形成と発展、また国家形成が進みつつあった朝鮮半島や日本列島など近隣地域への影響を、先行研究で重視されてきた官爵や礼楽などの俯瞰的な制度分析だけでなく、個々人の発言や著述などから看取される当該時代の人々の意識分析をも通じて明らかにしてゆきたい。