News

離任研究会「概念を規定して、現象を読みとく—ウ類と人間とのかかわりの事例から」(卯田講師)が開催されました

2015年9月17日(木)、卯田宗平講師の離任研究会が「概念を規定して、現象を読みとく—ウ類と人間とのかかわりの事例から」と題して開催された。

報告

離任研究会(卯田講師)

  卯田講師は、2011年以来、約5年間、汎アジア研究部門(および 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク [ASNET機構])において、人間と動物の関係を主題の一つに据えて活発な研究活動を行ってきた。今回の離任研究会では、主著『鵜飼いと現代中国—人と動物、国家のエスノグラフィー』(東京大学出版会, 2014)のエッセンスと、同書刊行後の調査や理論的思索の展開について報告を聞くことができた。
  動物と人間の関係をめぐるこれまでの人類学的研究では、主に生業の「対象」となる動物が扱われてきたが、卯田氏が注目してきたのは、鵜や鷹など、蓄力や野生性の利用によって、生業の「手段」となってきた動物である。それらは、一方で、家畜化し過ぎると野生的な習性が弱まり「手段」としての役目を果たさなくなり、また、野生性が強いままであると、人間の指示を聞かず生業の「手段」とならなくなってしまう。それらを有効活用するためには、家畜性と野生性という二つの要素のバランスをうまく調整する必要がある。卯田氏はこのバランス調整を「リバランス」と呼び、その具体的な実践例として、中国の鵜飼い漁における若いカワウの漁船追随訓練の様子や、京都の宇治川鵜飼いでの人工繁殖によって生まれたウミウの野生化に向けた取り組みを紹介した。さらに、今後の研究の方向性として、動物家畜化のプロセスを明らかにするという壮大な目標についても明らかにした。
  報告に続いて、25人を越える参加者を得たフロアからは、「野生」という語彙の含意や、日本の鵜飼いにおける「観光」という要素の影響などに関する質疑があがった。和やかな雰囲気の中、活発な議論が行われた。

当日の様子

離任研究会(卯田講師) 離任研究会(卯田講師)
離任研究会(卯田講師) 離任研究会(卯田講師)
離任研究会(卯田講師) 離任研究会(卯田講師)

開催情報

日時 / Date: 2015年9月17日(木)13:30-15:00 / 1:30 – 3:00 pm on Thursday, 17th Sep 2015

会場 / Venue東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室 / Conference room 303 (3rd floor), Institute for Advanced Studies on Asia, The University of Tokyo

題目 / Title :概念を規定して、現象を読みとく-ウ類と人間とのかかわりの事例から-

発表者 / Speaker :卯田 宗平 (東洋文化研究所・講師) / UDA Shuhei (Lecture, IASA)

司会 / Chairperson:池本 幸生 (東洋文化研究所・教授) / IKEMOTO Yukio (Professor, IASA)

使用言語 / Language: 日本語 / Japanese

概要 / Abstract
  本発表では、動物と人間とのかかわりを問い直すための概念を提示し、その概念を応用して別の事例を検討する。 対象とする事例は、鵜飼い漁で利用されるウ類(カワウ・ウミウ)と漁師との関係である。これまで、動物と人間との関係をめぐる人類学的研究では、ヤギやヒツジ、ブタといったいわゆる「生業の対象」としての動物が多く取りあげられてきた。 我われ人間に肉や毛、毛皮、乳などを提供するそうした動物たちは人類の発展を考えるうえで重要である。 ただ、動物のなかには、人間の目となり、耳となり、手となり、足となることで我われの生活や生業を支える動物もいる。いわゆる「手段」としての動物である。 鵜飼い漁のウ類も「手段」としての動物に該当する。今回の発表では、中国の鵜飼い漁の調査で観察した結果を明示しながら、①「手段」としての動物と人間との関係について新たな概念を提示し、②その概念を切り口に日本の鵜飼い漁の事例を検討する。また、今後の研究の方向性も述べる。

担当:卯田



登録種別:研究活動記録
登録日時:WedOct717:51:492015
登録者 :卯田・後藤・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20150917 - 20151217
当日期間:20150917 - 20150917