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東文研セミナー「地域文化活動(闘牛)に対する外部影響と、その対応に関する協働的研究―新潟県の国指定重要無形民俗文化財「牛の角突き習俗」をめぐって―第5回(通算10回)勉強会(2017年度 サントリー文化財団「地域文化活動の実践者と研究者によるグループ研究助成」)」が開催されました

報告

 2018年7月16日、東文研セミナー「地域文化活動(闘牛)に対する外部影響と、その対応に関する協働的研究—新潟県の国指定重要無形民俗文化財「牛の角突き習俗」をめぐって」第5回(通算10回)勉強会が開催された。本セミナーは、2017年度サントリー文化財団「地域文化活動の実践者と研究者によるグループ研究助成」の主催によるものである。
 本セミナーは、「角突きの女人禁制について考える(1)―女性たちが角突きの『伝統』を語り合う」をテーマに進められた。本セミナーの課題は、従来、女性たちが声を上げることが遠慮される課題である。そのため、より自由で気楽な発言を促すために「語り合い」の場は、あえて男子禁制とし、平沢忠一郎と菅豊は、その「語り合い」を促すファシリテーターとして参加した。
 本セミナーでは、さまざまな立場から角突きに関わるものの、従来、角突きの表舞台に登場することのない女性、そして角突きに関わりながらも闘牛場に入ることがない女性たち5名が、角突きをめぐる性差の問題について、忌憚のない意見を率直に語り合った。

当日の様子

開催情報

日時: 2018年7月16日(月)13:00―16:00

会場: 小千谷市東山住民センター(東山連絡所)http://www.city.ojiya.niigata.jp/site/shisetsu-map/shisetsu-13.html

勉強会のテーマ: 「角突きの女人禁制について考える(1)―女性たちが角突きの『伝統』を語り合う」

スケジュール:
13:00―16:00 サントリー文化財団「地域文化活動の実践者と研究者によるグループ研究助成」第10回勉強会
○司会・進行 菅豊(東京大学) 問題提起
○参加者による「語り合い」

勉強会の趣旨
 伝統文化―過去の祖先たちから受け継ぎ、また未来の子孫たちへと受け継ぐべき大切な文化の遺産として、近年その「一部」は認識され、価値あるものとして評価されている。しかし、ここで「一部」と書いたように、伝統文化の「すべて」が、その価値を認められているわけではない。過去からいまへと伝えられた文化は、現代人の価値観で、その善し悪し、あるいは優劣が決められている。そして、その判断の基準は、かなり恣意的に運用されている。またその基準は、私たち自身が考えたものというよりは、世界的な政治や運動のなかで、徐々に変化させられ、浸透させられてきたものである。
 当然だが伝統文化は、現代的価値観と必ずしも相いれるわけではない。伝統文化は、過去の価値観と合理性のなかで形作られてきたのだから、現在の価値観とどうにもしっくりいかないことがあるのは当たり前である。だから伝統文化は、ときに現代人にとっては不合理に見え、その存在を受け入れがたく感じ取られることがある。もちろん、現代の価値観に合わせて修正ができる、あるいは捨ててしまうことができる伝統の部分もある。しかし一方で、その部分を変えたり、放棄したりしてしまうと、その伝統を本質的に変えてしまったり、潰してしまったりすることもある。伝統をめぐる価値に関する問題は複雑であり、意見が多様であり、そのためその解決や意見の一致は容易ではない。
 越後の牛の角突きも、そのような現代において不合理性を抱えた伝統文化である。たとえば、闘牛場内への女性の立ち入りを禁じるタブー。日本の伝統社会でときおり見られるこの女人禁制の慣習は、男女平等という現代的で普遍的な価値を尊重し、性差にもとづく不平等を否定する立場からは違和感を抱かれ、不合理で受け入れがたい因習と見なされる可能性がある。
 しかし、その文化を祖先より継承し、長年経験して、その文化へと深くのめり込む人びとにとって、その慣習はごく普通の当たり前のものとして存在してきた。いや、動物の剥き出しの闘いではなく、勢子も含めた様式美こそを大切にする越後の角突きにとって、その慣習は、これまで大切にしてきた角突きの様式の根本的な一部であり、その慣習が否定されることは、自分たちの角突き自体を否定されてしまうような感覚を生み出すのである。
 私たちは、越後の角突きに付随する性差をめぐる問題を、真剣に考えてみたい。私たちは、この問題を簡単に解決できるとは考えていない。また、たとえどんなに議論を重ねても、本心から解決できるとは考えていない。むしろ、私たちはこの問題に対して性急に結論を出し、急激に変化させることが、人びとの間に新たな軋轢を生み出すものだと考えている。そのためその議論に、長い時間をかけるべきだと考えている。まずは角突きの内と外においてさまざまな価値観や考えが存在すること、すなわち意見が多様であることを認めることが重要である。そして、その多様な意見を学ぶことが重要である。
 今回の勉強会はその手始めとして、従来、角突きの表舞台に登場することのない女性、そして角突きに関わりながらも闘牛場に入ることがない、さまざまな立場の女性たちが忌憚のない意見を率直に語り合う。
 なお、本勉強会の課題は、従来、女性たちが声を上げることが遠慮される課題である。そのため、より自由で気楽な発言を促すために「語り合い」の場は、あえて男子禁制とする。平沢忠一郎と菅豊は、その「語り合い」を促すファシリテーターとして参加する。

コーディネーター・ファシリテーター:
平沢忠一郎(小千谷闘牛振興協議会実行委員長)
菅豊(東京大学東洋文化研究所教授)

主催:
小千谷闘牛振興協議会、「地域文化活動(闘牛)に対する外部影響と、その対応に関する協働的研究―新潟県の国指定重要無形民俗文化財「牛の角突き習俗」をめぐって―」プロジェクト(サントリー文化財団「地域文化活動の実践者と研究者によるグループ研究助成」)、日本学術振興会科学研究費補助金「パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」(研究代表者:菅豊)、東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会(主任:菅豊)

担当:菅



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuJul1904:40:092018
登録者 :菅・川野・藤岡
掲載期間:20180716 - 20181016
当日期間:20180716 - 20180716