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教員の新著が出版されました。 真鍋 祐子 著 『烈士の誕生ー韓国の民衆運動における「恨」の力学』 (韓国語訳)

真鍋 祐子 著 『烈士の誕生ー韓国の民衆運動における「恨」の力学』 (韓国語訳)

  博士学位論文をもとにした原著は1997年に平河出版社より刊行された。韓国の民主化運動における死者の扱いに注目し、1970年に勤労基準法遵守を訴えて抗議の焼身自殺をとげた裁縫工・全泰壹を起点とし、80年の光州事件を機に急増した抗議の自殺者たちの死がどのように受け止められ、運動理念としてどのように合理化され、それが遺族たちも巻き込みながらどのように具体的な運動として結実し、87年の民主化宣言へと韓国社会を導いたかについて、儒教倫理における「孝」-「不孝」、シャーマニズムにおける「恨」-「恨プリ」という二つの軸から、具体的には死者が「烈士」として祀り上げられるまでのプロセスを儀礼論的に分析することで、歴史的動態としての韓国現代史を描出した。
 1987年の民主化宣言以降、1998~2007年の進歩的な金大中~廬武鉉の政権期、2000年の南北首脳会談などをへて、民主化運動とその動因となってきた抗議の自殺はほとんど衆目を集めなくなった感があったが、李明博政権から朴槿恵の現政権にかけて反動化した韓国の政治状況は、再び民主化勢力にとって予断を許さないものになっている。そうした中で、原著出版から18年後にして韓国で翻訳・出版されることになり、改めて本書の真価が問われることになった。訳者の金景南牧師は、1974年の民生学連事件に連座した民主運動家であり、70~80年代のT・K生を中心とした日韓連帯による民主化運動にも深く関与した、いわば本書を織りなした主役たちの一人である。

東京大学東洋文化研究所 東アジア第一研究部門 真鍋 祐子


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登録種別:研究活動記録
登録日時:Thu Jan 14 12:46:17 2016
登録者 :真鍋・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20160114 - 20160414
当日期間:20160114 - 20160114