本書は、多言語に渡る一次史料を扱い、様々な史学文献の比較検討から、その多様性に注目するグローバル・ヒストリーの研究である。
マニラは、1571年にスペイン領のフィリピン植民地の首都として再建され、南シナ海を始めとした太平洋を結ぶ港町として繁栄した。初期グローバル化時代の近世国家であるスペイン帝国、明朝帝国そして日本の三ヵ国の歴史が、相互に密接にかかわっている。殊に貿易に注目することによって、三ヵ国の外交観念、交通、コミュニケーションなど様々な相互関係が、地域のレベルや外交活動はもとより、マニラの港町としての発展に多大な影響を与えたことが分かった。
本書では、マニラにおける海外貿易という分析視角から、①フィリピンとメキシコを結んだマニラ・ガレオンと呼ばれるスペイン貿易船によるメキシコ産銀と中国製生糸の移動、②日中直接貿易、③食料などの支給貿易、の三つの形成を明らかにする。こうした異文化の特徴を中心に、政治・経済・文化の各側面で実際の交流を担った人々の活動を考察することによって、前近代の複合的・重層的な対外関係を再検討する。
ISBN: 978 90 8964 833 4