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東文研セミナー 「International Workshop on “From Accumulation of Data to the Creation of Grounded Theories: Challenges of Sociological China Study”」が開催されました

2017年3月13日(月)の午後2時から5時半まで、東洋文化研究所3階大会議室で、十名強の聴衆を得て上記セミナーが実施されました。プログラムは以下の通りです。

プログラム

14:00-14:05Welcoming Remark Shigeto Sonoda
14:05-14:45Keynote Speech
“The Puzzles Surrounding Chinese Popular Attitudes toward Rising Income Inequality” Martin K. Whyte
14:45-15:15Report (1)
“Harnessing the Theoretical Leverage of Contrast in Survey Research for China Studies” Tony H. W. Tam
15:15-15:45Report (2) “Accomplishments of Third Wave of Four-city Survey, 1998-2014” Shigeto Sonoda
15:45-16:05Comments Michael H. H. Hsiao
16:05-16:15Q & A (Chair) Shigeto Sonoda
16:15-17:00Roundtable (Chair) Shigeto Sonoda

報告

  基調講演で、ハーバード大学社会学部名誉教授のM・ホワイト教授は、1960年代に始まる自らの中国を対象にした社会学的研究を回顧しつつ、2010年にThe Myth of Social Volcano(Stanford University Press)として結実する調査研究が2000年の北京調査に始まること、2004年、2009年、2014年と三度にわたる時系列調査を行った結果、予想以上に「配分的不正義(distributive injustice)」をめぐる意識には変化が見られず、他国に比べての中国人の収入格差に対する「耐性」が顕著に見られることなどを、多くのグラフを用いて説明しました。
  香港中文大学社会学系の譚康榮(Tony H. W. Tam)教授は、一時点でのデータでも他の時系列データをうまく組み合わせれば変化を捉えることができること、また近年、スマートフォンをもつ中国人を対象にした大規模調査プラットフォームができつつあり、数十万規模のサンプルを対象にした実験的調査が比較的安価に実施可能となっていることからも、たとえば、従来西側で展開されてきた平等主義的価値観をめぐる議論も、新しい地平から再検討できるようになってきていることを指摘しました。
  本研究所の園田教授は、自身の四都市(天津、重慶、上海、広州)調査での三時点での調査経験を踏まえ、1998年の最初の調査から一貫して社会問題への否定的な評価と党・政府に対する肯定的な評価が併存するといった「謎」が存在してきていること、ところがその「謎」は、回答者の暮らし向き評価といった変数を導入することによって解決すること(党・政府に対する肯定的な評価は、社会問題への評価とは関連しておらず、むしろ回答者個人の暮らし向きがよくなっているとする評価と結び付いているということ)などを紹介し、制度を支える社会心理学的研究の重要性を指摘しました。
  中央研究院社会学研究所(台湾)の蕭新煌(Michael H. H. Hsiao)教授は、以上の3つの報告を「中国を対象にした刺激的な社会学的研究だ」と総括しつつ、(1)生活保守主義とでもいえる中国社会の状況に変化する兆しは見られないのか、(2)インターネットを利用した調査データの信頼性・妥当性はどのようなものか、(3)質問票調査の結果から将来を予測することはどこまで可能か、といった問いを投げかけ、これらの問いをめぐってひとしきり議論が行われました。フロアからは、東アジアにおける比較研究の意義やインターネット調査の具体的な手続き、具体的なデータの解釈の仕方などについて多くの質問が出されたこともあり、予定していたラウンドテーブルは行わなかったものの、それでも予定より30分以上オーバーするという熱のこもりようでした。
  最後に蕭教授が「この続きのラウンドは、必ずどこかで行うべきだ」と発言し、本セミナーを締めくくりました。

当日の様子



登録種別:研究活動記録
登録日時:Fri Mar 17 10:51:56 2017
登録者 :園田・藤岡
掲載期間:20170313 - 20170613
当日期間:20170313 - 20170313