所長挨拶

  東洋文化研究所は、1941年、「東洋文化に関する綜合的研究」のために創設された東京大学の附置研究所です。本研究所における研究の主な対象地域はアジア諸言語を用いる地域であり、西は北アフリカを含むアラビア語圏から東は日本まで、北はロシア連邦を含むアルタイ諸語圏から南はインドネシアまで、ユーラシア大陸を中心に広大な範囲が含まれます。学問分野としては政治、社会、法律、経済、宗教、思想、文化、人類、歴史、考古、文学、美術などさまざまですが、アジアの過去、現在の諸相を見つめることによって、アジア、さらには世界全体の理解を深め、その未来に資する点が共通しています。各所員の専門地域や学問分野における多様性が、研究所総体としての広い視野を可能にしているのです。

  各所員は国内外に独自の研究ネットワークを持ち、しばしば現地で調査を行ったり、国際的学術会議に参加したり、海外研究者との交流を行ったりしています。さらに、本研究所は国内外の研究機関と学術交流協定を結んで協力関係にあるほか、本研究所の有する漢籍をはじめとした世界でも有数の蔵書の利用や、所員を中心とした日本在住の研究者との交流を目的として、数多くの研究者が海外から訪問研究員として長期、短期に訪れており、アジア研究の世界的拠点となっています。また、附属施設である東洋学研究情報センターは、アジア研究に関する各種の情報を整理し、全世界に発信しています。

  本研究所では日本学術振興会特別研究員などを数多く受け入れ、若手研究者の育成も積極的に行っています。所員はそれぞれの専門領域に応じて東京大学の大学院・学部における教育活動にも従事し、今後のグローバル社会を担う人材養成にも力を注いでいます。東京大学の各部局の研究者が学際的に連携してアジア研究と教育を行う「日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET機構)」、日本学教育、研究を国際的に推進する「国際総合日本学(Global Japan Studies)」の二つの東京大学教育研究ネットワークにおいても本研究所は大きな役割を担い、積極的な活動を行なっています。

  この激動の時代にあって、東洋文化研究所は、アジアに関する各学問分野の深化と、学際的研究および新分野の開拓という双方向への学術発展を目指し、着実に研究を進め、その成果を広く世に問うていきたいと考えています。

2017年4月 所長 桝屋 友子