T079

シカンダル=シャー=ローディー(Sikandar Shah Ludhi)の墓として知られており,サフダル=ジャングの墓の東北約1.3キロメートル,ローディー=ロードの北方約600メートル,ローディー公園の北端にある。附図.H-8
ドームをいただく八角の平面をもつ建物で,墓室とその周囲の廻廊とからなっている。この建物は,四周を一辺約80メートルの壁で囲まれた庭の中央に位置しており,その西壁の中央の部分は,一段と高くなっていて,三つのミヒラーブをもっている。庭全体は,高い基壇をなしていて,周囲に龕をめぐらし,四隅には八角のバスティオンをそなえている。南壁の中央には正門があって,その外側に,四本柱からなる二つのチャハトリをもつ,東西18.5メートル,南北16メートルの突出部がある。
この八角形の墓建築は,一辺9.8メートルの大きさをもち,各面は三つのアーチからなっており,その両端はバットレスによって補強されている。廻廊の屋上には,かつては八角平面をもつ8個のチャハトリが立っていたと推定されるが,現在では,すべて倒壊してしまっていて,わずかにその基台をのこしているにすぎない。墓室は,西面をのぞいてすべて開かれているが,西の部分は,現在では,明らかに後代のものと思われる乱雑な石積みによって閉ざされている。おそらく,本来はミヒラーブがあったものと思われる。室内の各面のアーチの周辺やその上にある16個の龕列は,いずれも青・緑・黄などの彩色タイルを用いた文様によって,派手に彩られており,また,ロームの内部も,中央の円形文様や,基部をめぐる帯状の碑文・文様によって装飾されている。床面には,1基の墓の痕跡が認められる。この墓は,ローディー朝の第二代のスルターンであったシカンダル=シャーの墓とされてきたが,それを証明する歴史的な資料はなに一つないのである。第Ⅲ期。
東研.Ⅲ-4;ASI.Ⅱ-49

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