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ニザームッディーンのラール=マハル(Lal Ma-hal)として知られてきたもので,フマーユーンの墓のほぼ西方750メートル,ローディー=ロードの南約100メートルにある。附図.I-9
この建物は,基壇の上に立っており,十字形の平面をもつ特異な形式のものである。中央には,ドームをいただく十二本柱からなる四角平面の部屋があり,その周囲を,奥行1間の列柱の間がとり囲み,さらに,その外側の四面の中央に,間口3間・奥行1間の列柱部分を張り出したかたちになっている。その張り出し部分の屋上には,ピラミッド型の屋根をいただく四本柱からなる四角平面のチャハトリが,それぞれ一つずつ立っていたが,現在,東のものをのぞいて,まったく失われてしまっている。この建物の北側約7メートルのところに,四本柱からなる四角平面の二層の建物がのこっているが,おそらくは,上に述べた主建物に附属するものであったと推定される。主建物の中央ドームの内部は,放射状にはしる16本の肋材をかたどった石積みが印象的である。建物全体は,赤い砂岩を豊富に用いており,ラール=マハル(赤い宮殿)という名称も,それに由来するものであろう。随処にほどこされている文様には,デリー諸王朝時代初期の特微がよくうかがえる。この建物の建立の時期とその性格については,これまで,二,三の説が発表されているが,なお疑問の余地がのこされている。しかし,この建物がなんらかの宮廷建造物であったことは,おそらく確かであろう。第Ⅰ期。
東研.Ⅲ-5;ASI.Ⅱ-184

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