概要
公開講座のポスターに映っているカワウたちは、なぜ逃げないのでしょうか?
飛べないのでしょうか? 飛ばないのでしょうか?
このカワウたちは、鵜飼い漁という漁法で使用されています。鵜飼い漁とは、カワウやウミウを使って魚を獲る漁法です。日本では、野生のウミウを使って魚を獲る岐阜市長良川の“観光鵜飼”が有名です。一方、中国では暮らしを立てていくための仕事として鵜飼い漁に従事している人たちがいます。中国の鵜飼い漁師たちは、自宅でカワウを繁殖させて、それを飼い慣らして漁に利用しています。
では、なぜ中国で鵜飼い漁が生計を成り立たせる仕事として成り立つのでしょうか? そもそも、国土面積が日本の25倍もある中国においてどこでどのような漁法がおこなわれているのでしょうか?
この講座では、鵜飼い漁に関わるさまざまな疑問を切り口に、その背後にある中国の自然環境や食文化、自然と人間との関係について考えてみたいと思います。
講師紹介

東アジアのさまざまな環境条件あるいは社会的文脈に生きる人間集団を対象に、①自然や社会環境の変化と人びとの適応形態のダイナミズムを理解し、②複数の集団間でみられる普遍性やパターンを導き出すことを研究の目的としています。
現在は、中国大陸と日本列島を対象に、フィールド調査と空間情報技術を併用しながら、河川や湖沼、森林における環境の変化と在地の生業・健康転換のプロセスを研究しています。具体的には、自然や社会環境の変化が生活の現場にもたらしたインパクトと在地の人びとの対応の実際を村落と世帯レベルから検討しています。
これまでは、日本・琵琶湖における外来魚(オオクチバスやブルーギル)の移入と漁師たちの技術的な対応、高齢化が進む房総半島白浜の海女たちの生計のたて方、中国・海南島における焼畑禁止後のリー族の生活変容、漁場面積が季節的・時代的に大きく変化する江西省ポーヤン湖における鵜飼い漁師たちの生計維持のメカニズムを事例として取り上げてきました。
今後は、地域や生業の違いを超えた比較的大きなスケールから各事例を捉えなおし、人びとの生き方の多様性や差異のなかにある普遍性や類似性を考察していきたいと考えています。このことではじめて、“人間とは何か”という人類学の問いに接近できると考えているからです。ただ、進むべき道は長いです。
1975. | 滋賀県生まれ |
1998. | 立命館大学卒業 |
2000. | 同大学大学院理工学研究科修了 |
2000. | 日本学術振興会 特別研究員(DC1) |
2003. | 総合研究大学院大学文化科学研究科修了(博士(文学)) |
2005. | 日本学術振興会 海外特別研究員(海外PD) |
2005. | 中国・中央民族大学民族学社会学学院 滞在訪問学者(2005-2010) |
2008. | 日本学術振興会 特別研究員(PD) |
2011. -- |
東京大学日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET機構) 東洋文化研究所(兼任)特任講師 |