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トゥグルカーバードの堰堤Iとよぶ。アーディラーバード城砦の南にひろがる丘陵地帯の一角にあり,ガヤースッディーン=トゥグルクの墓の南方約600メートルのところに位置する。附図.J-14
この堰堤は,丘陵のふところに深く入り込んだ谷間の出口をふさぐかたちに構築されたもので,ほぼ南北方向に走っている。現在では,中央部分は崩壊しているが,両端の部分の石積みはよくのこっており,元来は,全長が200メートル以上に達するものであったと思われる。この堰堤の石積みは,近くの,トゥグルカーバードやアーディラーバードの城壁のそれに比較して粗雑である。崩壊した中央部分には,かつては,水門のような施設が設けられていたと推定されるが,現在では,まったく痕跡が認められない。
この堰堤の構築された時期と,その構築の目的および機能については,必ずしも確定的なことはいえないが,おそらくは,トゥグルカーバード城砦の南にひろがる広大な平坦地に対する大水利計画の一環として,のちに述べるトゥグルカーパードの堰堤Ⅱやアーディラーバードの堰堤城壁と関連して,ほぼ同時期に構築されたものと思われる。この大水利計画のなかで,この堰堤Iに与えられた役割りとしては,この堰堤の東南につづく谷間に集められた雨水をせきとめることによって,雨期の間には,雨水が平坦地に一挙に流入するのを防ぎ,また,雨期明けには,貯水された水を農業用水として供給すること,などであったと推定される。第Ⅱ期。
東研.Ⅹ-21

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