用語解説3:石造建築技術

■グリッド式と12柱式
■迫り持ち式と持ち送り式


■グリッド式と12柱式―土着の石造建築技術における空間の作り方

 梁柱構法はインド土着の構法である。柱の上に梁をかけて囲まれた空間を作りその上に天井を架けるわけであるが、注目すべき空間の作り方が二つある。一つは柱をグリッド状に立て、梁を四角形に回し、そこに平天井やラテルネン・デッケを架ける方法である。この場合柱間隔は長くとも2メートル余りで、これ以上大きな空間を作る際には柱が林立してしまう。もう一つは柱を正方形の1辺に4本づつ計12本立て、梁を四角形に回すとともに隅の部分に斜行する梁材を渡し、そこに持ち送り式のドームを架ける方法である。こうすることにより、直径7メートル余りの空間を作ることが可能となる。前者をグリッド式、後者を12柱式と呼ぶことにする。

■迫り持ち式と持ち送り式―石材の積み方

 石造建築や煉瓦造建築の場合、小さな部品を積み重ねることによって巨大な建築を作ることが多い。こうした建築の作り方を一般に組積造建築という。組積造建築においてアーチやドームなどの曲面を構築する場合、小さな部品を垂直方向に少しづつ前面に出すように構築して空間を作る場合を持ち送り式といい、小さな部品を曲線の法線方向に並べて部品同士にお互いに押し合うような力が働く状態にすることを迫り持ち式という。持ち送り式では、一つ一つの部材に垂力が働くために巨大なアーチやドームを構築することは不可能である。迫り持ち式にすれば垂力はアーチやドームを支える壁体やピアへと伝達されるので、巨大な空間を作ることが可能となる。インドではイスラーム以前のヒンドゥー建築やジャイナ教建築においてはドームやアーチへの嗜好が弱かっただけでなく、曲面を構築する場合は持ち送り式によっていた。中東においては、特にメソポタミアからイランの煉瓦造建築で古くから持ち送り式が発達し、中東のイスラーム建築はその構法を継承し、アーチを多用し巨大なドーム空間を構築する術を熟知していた。


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