『紀要』第135冊要旨


『紀要』第135冊 松岡俊裕 「魯迅の祖父周福清攷(十)——その家系、生涯及び人物像について——」要旨
『紀要』第135冊

松岡俊裕 「魯迅の祖父周福清攷(十)——その家系、生涯及び人物像について——」要旨

 (十)は 第七章「科挙不正事件」第四節「事件の真相に迫る——謎と疑問を解く——」:当局の調査報告による基本資料が伝えるこの事件の経緯には,謎や疑問点が少なくなく,そのまま全てを鵜呑みにするわけにはいかない。愚見は以下の通り:この事件は周福清といわゆる五氏との間の事前謀議に基づく計画的犯行であり,教唆犯は福清の姉の夫章某かと思われる。章某は陳某の家僕を蘇州に派遣し,家僕は「年愚弟」と書かれた名刺と中に銀一万両の空小切手が入った封筒を一緒に福清の進士同年の正考官殷如璋の船に届けたが,副考官の周錫恩がその場に居合わせていて摘発を主張したため,殷如璋もやもなく摘発せざるを得なかったのであろう。福清は罪を逃れることはできないものと観念し,一人で役所に自首して出た。刑部が上奏する前に,福清の在京同郷人の御史李慈銘が周錫恩に対して報復を加えるため,かつまた福清に温情判決が下るよう願って,周錫恩を弾劾した。光緒帝は御史(李慈銘)が“関係している”ことを知って激怒し,刑部の流刑擬定案を“斬監候”(重刑)に改めた。
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『紀要』第135冊 菅 豊 「閉じこめられたヒツジたち」要約
『紀要』第135冊

菅 豊 「閉じこめられたヒツジたち」要約

 中国浙江省嘉湖地方を含む江南地域は、生業形態の分類でいうと農耕社会であり、そこには、牧畜社会などとは異なったサブシステンス・エコノミーの中心が存在する。したがって、そこに存在する家畜は牧畜社会の家畜と比べ、それほど大きな影響力をもたないことが予想されるが、実際は文化的な存在として、それを取り巻く社会の状況を反映している。本稿では、農耕の卓越する中国江南地方において飼育されてきた特異的なヒツジ・湖羊の飼育形態、飼育目的、繁殖形態、品種特性を、その成立過程と照合することによって、湖羊に刻み込まれた歴史を検討した。その結果、湖羊の特異的な飼育形態、飼育目的、繁殖形態、品種特性は、江南地方の商業経済の発達なかで産み出されたものであり、積極的に自家の生活レベルを向上させようとした農民の意欲と大きくかかわっていたことが明らかになった。本来北方的なヒツジが長きにわたって江南地域で飼育されることにより、その性質を変容させ特定の品種として固定されてきた。その変化の道筋は、商業経済の発展という社会状況や、温暖湿潤で狭隘な土地という環境にまさに適合したものととらえることができる。動物の性質、そしてそれを管理する人間の接し方に、動物と人間を取り巻く歴史が凝縮されているのである。
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『紀要』第135冊 今村弘子 「北朝鮮の食糧事情と中国の援助」 要旨
『紀要』第135冊

今村弘子 「北朝鮮の食糧事情と中国の援助」 要旨

北朝鮮で津70年代から食糧政策の失敗があって、80年代にはすでに「一日二食」運動が行なわれていた。さらに90年代半ばには自然災害に見舞われたことから、食糧生産は壊滅的な被害をうけ、国際社会に援助を仰がなくてはならないほどになった。それでは北朝鮮にとって援助はどのような意味を持つのか。北朝鮮は独自の路線で経済成長を遂げてきたと言っているが、実際にはソ連や中国の援助なしには経済運営もままならない「被援助大国」てあった。それがソ違の崩壊とともにソ連からの援助が減少、また中韓国交村立以降は、中国からの援助も北朝鮮は拒否していた。このため北朝鮮の経済の困窮がますます進んだのである。中国は90年代半ば以降、北朝鮮への援助を再開し、食糧やエネルギーを供与している。また輸出でも食糧やエネルギーが主体となっている。
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