『紀要』第132冊要旨


『紀要』第132冊 青木 敦「淳煕臧否とその失敗−宋の地方官監察制度に見られる二つの型(1)−」要旨
『紀要』第132冊

青木 敦「淳煕臧否とその失敗−宋の地方官監察制度に見られる二つの型(1)−」要旨

宋代、監司による監察はうまく行かずに、台諌に頼らざるを得なかった。その背景を、淳煕年間の「臧否」制度の顛末を通じて考える。「臧」とはよい、「臧否」で善し悪し、転じて動詞的に人の善し悪しを云々する意である。『後漢書』に地方官の臧否が人事評価として使われた例がある。ところがこれはむしろ例外的で、宋以前では「臧否」は、人物評価といった意味で使われることが多かった。殊に、魏晋南北朝期には、文人による人物評価が流行ったが、「人物を臧否するを好む」という用法が定型句の如くにしばしば見られるようになる。しかし隋には国史を撰集とともに民間での人物の臧否が禁ぜられた。これが隋唐における科挙の成立などの一連の官制改革と表裏していることは言うまでもなく、国政にかかわる人物評価はこれ以降、あくまで皇帝およびその官僚によって行われるのが筋となる。南宋には、この「臧否」が孝宗のイニシァチブのもとに、制度として実施された。すなわち、監司が各の路の守臣につき、その臧否を毎年定期的に上奏して、全国の守臣を黜陟(昇任・降格)する。この形は、皇帝がその「耳目」としての監司を要に、中央— 路−府州軍−県というヒエラルキーを通じて全国をコントロールしようとする、宋の地方制度の理想を前提にしたものである。ところが、結論的にいえば、この制度は失敗であった。度重なる督促にもかかわらず、監司は命令を遵守しない。朱熹などは、強固に朝廷の命令に抵抗し続けた。またたまに実施する地方があっても、公正さを欠き、私情に走るとの批判が渦巻く。しかもその結果、政争が悪化する。ついに孝宗もその実施をあきらめる。結局、朱熹らが主張した弾劾・薦挙といった非形式的な方法に頼るしかなかった。そして、ここで忘れてならないのは、この時期には決して王朝が秩序維持の機能を失って、各地方の分権化に進むという傾向は見られなかったという事実である。官僚制における形式性は、かならずしも「中央集権的」な、つまり皇帝を中心とする伝統的な中華帝国の一体性維持の要件ではない。この非形式的な人事評価の方法にたよりつつ、王朝の体制の秩序、延いては伝統的な中央地方関係たる大一統を保つ上で最終的に重要になるのが、地方官一人ひとりの個人的な態度・資質である。弾劾に熱心な朱熹の興味がこの内面的な部分に向けられていたことは、改めて指摘するまでもない。
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『紀要』 第132冊 松岡俊裕「魯迅の祖父周福清攷(八)——その家系、生涯及び人物像について——」要旨
『紀要』 第132冊

松岡俊裕「魯迅の祖父周福清攷(八)——その家系、生涯及び人物像について——」要旨

(八)は第六章「内閣中書時代」第二節「正任中書時代」の一部分(二「文郁の郷試受験」中の「周福清の文郁宛て書簡」、三「三孫周建人の誕生」、四「光緒十五年の紹興府大水害」、五「光緒十六年の順天府大水害」、六「二人の珠姑(外孫娘)の誕生」,七「母親戴氏の死による帰郷」、八「交遊状況」)。七:光緒十八年大晦日に戴氏が亡くなってから福清が北京を離れるまでの経過と帰郷後の福清及び家内の動静を詳しく紹介した。福清は光緒十九年二月末から三月始めの間に帰郷し,三ヶ月間服喪した。いわゆる福清の実家での癇癪騒ぎは,恐らく一般に言われている五七の日(二月五日)ではなく,百ヶ日の日(四月十一日)のことであったと思われる。
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『紀要』第132冊 今村弘子「中国の所得格差に関する考察」要旨
『紀要』第132冊

今村弘子「中国の所得格差に関する考察」要旨

中国では78年の改革閉放政策以降、経済力を向上させることにカを注いできた。89年の天安門事件以降、経済発展は一時的に頓挫するが、92年の鄧小平の南巡講話以降、再び経済の高成長路線をとることになった。このときの経済発展は「先富論」という言葉に表されているように、条件のある地域から経済発展を図り、経済発展した地域が後発地域に投資をするなどして、中国全体の経済発展を図ろうというものであった。しかし実態は、「条件のある地域(あるいはヒト)の経済発展ばかりが進み、開発に取り残される地域が生じるほうになった。中国の所得格差には、農村と都市、沿海地域と内陸地域、同一地域内(農村内部・都市内部)の格差がある。そのいずれも拡大しているが、農村では郷鎮企業が発展している地域とそうでない地域との格差は拡大しており、また都市では国有企業改革が進展するにつれて、失業者が増大する可能性も高く、所得格差は拡大するものと思われる。また省内でも交通の便のよいところとそうでないところの格差も拡大している。経済発展に伴って中国はいまだに所得格差が拡大する状況にある。
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