『紀要』第129冊要旨


『紀要』第129冊 吉開将人 「先秦期における単字模鋳造法について——曽侯乙墓出土青銅器群を中心に」 要旨
『紀要』第129冊

吉開将人 「先秦期における単字模鋳造法について——曽侯乙墓出土青銅器群を中心に」 要旨

中国湖北省で発見された前5世紀の「曽侯乙墓」からは、数多くの銘文をもつ青銅器が出土した。それらの銘文中には、書体の細部だけでなく寸法までが一致し、活字状の「単字模」を鋳型の製作の際に用いたとしか考えられない文字が多々認められる。これを踏まえて、今までに存在が知られている先秦時代の青銅器銘文を検討してみると、実はこうした単字模による例が、少なからず存在していることがわかる。時期や地域的などの点でも、この曽侯乙墓の例はそれらと共通しており、これが単字模によるものである可能性はきわめて高いと考えられる。そして何よりも、この時期にこうした特異な銘文鋳造技法が行なわれた背景には、鋳銘から刻銘へ、また祭祀にかかわる記念文から生産管理にかかわる記録文へと、青銅器の銘文そのもののあり方が変化を始めた過渡的な時代相が反映されていると考えられる。
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『紀要』第129冊 神塚淑子 「六朝道経の形成とその文体——上清経の場合——」 要旨
『紀要』第129冊

神塚淑子 「六朝道経の形成とその文体——上清経の場合——」 要旨

六朝時代は道教の教理・思想、教団組織の形成期にあたり、多くの道教経典が作られた。六朝道教の諸流派のうち、上清派は独白の宗教的世界観と救済論を備え、『真誥』や上清派の経典群(上清経)は宗教文学としても注目すべき面を持っている。本論文の第一章は、上清経の形成過程について考察し、『魏夫人内伝』などの内伝類と深い関わりを持ちつつ上清経が形成されたことを明らかにした。第二章では、『霊書紫文上経』『金真玉光八景飛経』など四点の主要な上清経の思想と文体を具体的に検討し、そこに五言詩や駢文など修辞的な文体が多く用いられているのは上清教教の担い手であった江南土着士族の文化湖流と関わることを指摘した。
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『紀要』第129冊 大塚秀高 「宋代社会と物語」要旨
『紀要』第129冊

大塚秀高 「宋代社会と物語」要旨

宋代における物語の変遷を汀州、杭州、燕京、開封などの諸都市に固有の部市伝説を取り上げて論じ、あわせてその変遷のメカニズムについて考究したもの。
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『紀要』第129冊 大瀧幸子 「状語中心語統合型の統合意義特徴——形容詞と動詞の組み合わせを対象として——」 要旨
『紀要』第129冊

大瀧幸子 「状語中心語統合型の統合意義特徴——形容詞と動詞の組み合わせを対象として——」 要旨

本稿は、(1)稿で扱わなかったA地V型に関する統計的資料のほかにA地V型に挿入できてもVA型には挿入できない動詞と形容詞の組み合わせ、さらにVA型とA地V型に挿入できてV得A型には挿入できない動詞との組み合わせとV得A型にも挿入できる動詞との組み合わせの比較を検討対象に取り上げ、3種類の統合型の統合意義特徴をより詳しく解明することを目的とする。明らかにできたのは以下の点である。①可能補語形式“不・得”を挿入できないVA型には3タイプあり、いずれも典型的VA型(現象枠として穏当な変化を指示するもの)ではない。②A地V型には、「動作主の行為にあたっての目的意識」(状況を詳述して現象枠を構成:主語を指向する)を判断・描写する統合的意義特徴も存在する。「AA地」は流相の「動作のやり方」に対する目的意識を表示し、「很A地」は異相の「到達する様相」についての目的意識を表示する。③A地V型が表示する目的意識は「社会通念として求められやすい価値」と結びついている。④感覚感情形容詞が状語として挿入された場合、「A地」は中心語となる動詞とともに同一の現象枠を構成し因果関係のスキーマー(原因格の部分)を詳述する。「很A地」はそれを含む文が指示する状況内の動作・出来事を原因として認知して、それによって引き起こされた感覚感情を詳述する。「AA・地」は動作主中心とする出来事と並存する動作主の感情感覚を詳述する。
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