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第2回東文研・ASNET共催セミナー「日米同盟の制度化」開催報告

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第2回東文研・ASNET共催セミナー「日米同盟の制度化」開催報告

5月27日(木)17時から18時過ぎまで、東洋文化研究所1階ロビーにて、第2回東洋文化研究所・ASNET共催セミナーが開催されました。
このセミナーは、東京大学に所属する、広くアジア研究に携わる若手研究者に、発表の場を提供することを目的とするものです。
今回は日本学術振興会特別研究員・吉田真吾氏に「日米同盟の制度化」という題目で研究発表を行って頂きました。
有機ワインとコーヒー、手作りクッキーを囲みつつ、活発な議論が行われました。

【プロフィール】
吉田氏は、慶應義塾大学大学院にて、日米同盟の史的展開に関する研究を進めてこられました。
そして、昨年度、博士論文を提出され、今年度より日本学術振興会特別研究員として東洋文化研究所で研究されています。
今回のセミナーでは、その博士論文の概要を報告していただきました。
 

【報告要旨】
 現在、日米同盟の制度化のレベルは、それぞれ1951年と60年に行われた旧安保条約と新安保条約の調印の時期とは見違えるほど高まっています。すなわち、両国間に多くの安全保障協議のチャンネルが設置されるとともに、平時における自衛隊と米軍の軍事協力は着実に深化してきました。これらの面において現在の日米同盟の基礎が出来上がるのは、60年代中盤から70年代後半にかけての時期でした。なぜ、この時期に日米同盟の制度化が進んだのでしょうか。この問題に対し、今回の報告では、日米両国の一次資料に基づき、通説的な解釈が重視する外部の脅威という要因ではなく、相手の機会主義的行動に対する日米の相互不安という同盟内部の要因が作用した結果であるという議論を提示しました。

【主な質疑内容・応答】
 質疑応答のセッションでは、参加者の多様性を反映し、それぞれの立場や関心に基づいた幅広い質問やコメントが提起されました。いくつか例を挙げると、史実の解釈については、日米同盟の制度化が進むのは80年代であり、60年代から70年代にかけての時期ではないのではないかという疑問が提示されました。また、日米の政権ごとの政策の違いや政治家と官僚の関係など、国内政治と日米同盟の関係についての質問もなされました。概念の問題については、「同盟の制度化」や「相互不安」といった本報告で重要な位置を占める概念をより明確かつ説得的にすることの必要性が指摘されました。方法論については、外交文書から政策当局者の「意図」を汲み取ることは可能かという問題が指摘されるとともに、今回の報告の内容に鑑み、ゲーム理論の観点を取り入れることが提案されました。そして、多くの有益なコメントを今後の課題として受け入れさせていただきつつ、それぞれの質問に対して報告者から応答をさせていただきました。
[吉田真吾]