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第31回東文研・ASNET共催セミナー「地域に根ざす有機農業―日本と韓国の経験」

第31回東文研・ASNET共催セミナー
「地域に根ざす有機農業―日本と韓国の経験」

下記の要領で第31回セミナーを開催いたしますので、ご案内いたします。

日時:2011年6月23日(木)17:00-18:00
会場:東京大学東洋文化研究所1階 ロビー
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
テーマ:「地域に根ざす有機農業―日本と韓国の経験」
報告者:金氣興(日本学術振興会 外国人特別研究員)
*English Version
http://www.asnet.u-tokyo.ac.jp/node/7167

報告要旨
有機農業は、食の安全と環境という大きなふたつの課題に関して、「ラベル」による認証と、「領域性」による産消提携及び地域密着というふたつの対策方法からそれらの問題を解決しようとしてきた。本報告では、日本と韓国の経験を基に地域に根ざしていく有機農業の発展様子を紹介する。

参考
 日本における有機農業は、環境問題が深刻化していた1970年代に、農薬を使わない安全な食材を求める都市消費者と、環境負荷の大きな近代農業を止めて「環境にやさしい」有機農法に転換したいと考えていた農家とが、相互の理解と利益に基づいて「産消提携」の形で始まった。その後、80年代に入ると有機農産物の市場が拡大し、多くの専門流通業者等が参入するようになる。そのことが、有機食品の不当表示問題を引き起こし、それをきっかけにして政府は90年代初めに有機農産物のガイドラインを作成し、有機認証制度が確立される。これによって有機認証を受けて広域的市場に進出する大規模生産者が現れる一方、有機認証を得るためのコストを負担できない小規模生産者は産消提携や地域密着を強化し、有機農業の原点に回帰するという現象が生じた。
 韓国の有機農業は、日本と同様に1970年代に先駆的な農民個人と生産者団体によって始まった。80年代に入って都市の消費者に向けて直売が開始されるが、日本のように不当表示問題が顕在化するほどの拡大は示さなかった。認証制度が導入されるのは、日本と同様に90年代であるが、日本との大きな違いは、韓国の場合、政府主導によって「親環境農業」が強力に推進されたことである。その結果、韓国ではラベル型の発展を遂げていく。しかし、韓国では認証制度によって拡大したために、認証を取った親環境農産物市場において競争圧力は増し、競争に耐えられない小規模生産者グループは地域密着に移行しつつある。
金氣興『地域に根ざす有機農業:日本と韓国の経験』(筑波書房、2011年)の本文から

お問合せ先:日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET)
電話:03-5841-5868
e-mail: asnet[at]asnet.u-tokyo.ac.jp