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第38回東文研・ASNET共催セミナー「碑文から何を読み取れるのか?―3点のパーラ期碑文を例に―」

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【報告】第38回東文研・ASNET共催セミナー
古井龍介准教授による帰朝報告会
「碑文から何を読み取れるのか?―3点のパーラ期碑文を例に―」

第38回東文研・ASNET共催セミナー(古井龍介准教授による帰朝報告会)が2011年10月20日(木)に開催されました。
以下、報告させていただきます。

日時:2011年10月20日(木)17:00-18:00
場所:東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
テーマ:「碑文から何を読み取れるのか?―3点のパーラ期碑文を例に―」
報告者:古井龍介(東京大学東洋文化研究所南アジア研究部門准教授)

【報告要旨】
 本報告では、ベルリンでの在外研究中に解読した3点のパーラ朝期(8-12世紀)北ベンガルに関わる新発見碑文の読解・解釈の実践を通して、碑文から何を読み取れるのかを議論した。具体的には各々の碑文から王と従属支配者間の権力関係、農耕の拡大と貨幣単位に基づく取引の農村への浸透、商人集団の組合による集合的活動などが読み取られること、またそれらを他の史料も含めた文脈に置き直すことにより、権力関係のより複雑な様相や商人集団の歴史、さらには農耕拡大と貨幣単位に基づく取引・市場・商業活動の農村への拡大の連環が捉えられうることを述べた。その上で僅少な史料を解釈する上での恣意性に文脈理解と歴史的変化への意識により対抗することが必要であること、また碑文解釈の実践が史料解釈による文脈・歴史変化への展望の形成とそれによる史料解釈のさらなる深化という円環的過程となることを論じた。
 以上のような専門的な内容にもかかわらず、参加者からは今後の研究の進展に資する非常に興味深い質問・コメントを、報告会後も含めていただいた。この場を借りてお礼申し上げたい。
[古井龍介]