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第42回東文研・ASNET共催セミナー「資源統治と国家権力:明治日本とシャム(タイ)の比較から」

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【報告】第42回東文研・ASNET共催セミナー
佐藤仁准教授による帰朝報告会
「資源統治と国家権力:明治日本とシャム(タイ)の比較から」

第42回東文研・ASNET共催セミナー(佐藤仁准教授による帰朝報告会)が2011年12月8日(木)に開催されました。
以下、報告させていただきます。

日時:2011年12月8日(木)17:00-18:00
場所:東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
テーマ:「資源統治と国家権力:明治日本とシャム(タイ)の比較から」
報告者:佐藤仁(東京大学東洋文化研究所 新世代アジア部門准教授)

【報告要旨】
 「国家財政への貢献がさほど高くなかった天然資源の管理に、国家が熱心に取り組むのはなぜか」という問いを切り口に、明治日本とシャムを事例に試 論を披露した。とくに森林と鉱山の国家管理が両国でどのように進行し、また、地域社会との関係づくりがどのよう要因によって形成されたのかを歴史的に検討した。天然資源管理は、国内外で生じうる紛争を未然に予防する目的で実施されており、その意味では「脅威の統治」という側面が強い、という結論を出した。また両国政府の地域住民に対する態度の違いについては、資源の地理的分布や労働者の稀少性と社会的位置づけなどから説明を試みた。また、今度は事例対象国と資源の種類を拡張し、国家権力が人々の中に浸透するメカニズムをさらに解明していく見通しを述べた。 
 これに対して、国家権力の質的変容を問わなくてよいのか、近代性の特質は何か、国家が資源管理に熱心であったという客観的な指標は何か、今後、 直接的に植民地化されたアジアの国々と比較する展望は如何に、などの質問がフロアから提示された。これらの質問には、ある程度、答えられたもの、宿題として引き取らざるをえなかったものなどがあったが、いずれも今後の研究を前に進めるための重要なヒントになった。師走の忙しい時期にわざわざおいでくださった参加者の方々に改めて感謝申し上げたい。[佐藤仁]