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第43回東文研・ASNET共催セミナー:ドキュメンタリー映画を見る(第1弾)「懐かしい未来:ラダックから学ぶ」

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【報告】第43回東文研・ASNET共催セミナー:
ドキュメンタリー映画を見る(第1弾)
「懐かしい未来:ラダックから学ぶ」

第43回東文研・ASNET共催セミナーが2012年1月26日(木)に開催されました。
以下、報告させていただきます。

日時:2012年1月26日(木)18:00-20:00
場所:東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
当日のスケジュール
(1)『懐かしい未来:ラダックから学ぶ』(27分)の鑑賞
(2)鎌田陽司氏(NPO法人懐かしい未来、代表理事)よる解説と講演「懐かしい未来へ:幸せの経済学とローカリゼーション」

【映画の解説】
ヒマラヤの辺境ラダック(インド)の伝統的な社会と「開発・発展」による変化は、私たちに「近代化」「発展」「進歩」とは何なのか、ということを根底から考えさせる。問題の根本を見極めることで、希望の未来が浮かびあがる。映像は、三部構成となっている。第一部:伝統の中のラダック、第二部:変わりゆくラダック、第三部:ラダックから学ぶこと。最近話題の『幸せの経済学 Economics of Happiness』はこの続々編にあたる。


鎌田陽司氏による解説と講演

【開催報告】
 初めに映画『懐かしい未来:ラダックから学ぶ』を鑑賞した。鑑賞した映画は、『Ancient Futures: Learning from Ladakh』(制作:ISEC [International Society for Ecology and Culture] 、1993年、60分)のダイジェスト版で、講師の鎌田氏はその構成・制作や、ヘレナノーバーグ=ホッジ著『懐かしい未来 ラダックから学ぶ』(懐かしい未来の本 2011年)の翻訳をしている。
 映画鑑賞後、まず小グループに分かれて映画に関して議論を行ない、全体での議論に移った。ラダックの伝統社会の描かれ方は、歴史的に見れば一時の特殊な時代の姿だという意見や、ラダックがユートピア的に描かれているのではないかという指摘が参加者から出されたが、この映画は先進国の人々が気付いていないことを気付かせることに主眼があることに注意すべきだろう。先進国では何世紀もかけて徐々に変化してきたために気付かないことも、ラダックでは急激な変化として起こっているため、よく理解できるという点は映画でも述べられていた。
 その後、鎌田氏が「懐かしい未来へ:幸せの経済学とローカリゼーション」と題する講演を行なった。経済のグローバル化が何を破壊してきたのかが論じられ、ローカリゼーションの重要性が主張された。講演後の議論としては、「何のグローバル化か」「何のローカリゼーションか」が重要なのではないかに関して議論が行なわれた。例えば、グローバル化として括られるすべての現象がよくないのか、逆にローカリズムが偏狭主義に陥る可能性はないのか。活発な議論が続き、通常なら1時間で終わるセミナーが2時間も続いた。機会を改めて、もう一度、セミナーで取り上げたい。[池本幸生]

【鎌田陽司氏プロフィール】
東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒。サセックス大学開発と社会変容の人類学修士。NPO法人 懐かしい未来(http://afutures.net) 代表理事。ヒマラヤ伝統医師協会アドバイザー。国際有機農業映画祭運営委員。明治学院大学国際平和研究所研究員。深くて包括的な学びのプログラムづくり・場づくりに、日本そしてネパールで取り組んでいる。主論文に「Indigenous Knowledge, Cultural Empowerment and Alternatives」等。根底にある信念としては、すべての人に仏陀と同じ仏性が宿っていること、希望の種はあちこちに埋まっていること。