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第44回東文研・ASNET共催セミナー:ドキュメンタリー映画を見る(第2弾)「それでも種をまく」

  • 報告

【報告】第44回東文研・ASNET共催セミナー:
ドキュメンタリー映画を見る(第2弾)
それでも種をまく

第44回東文研・ASNET共催セミナーが2012年2月9日(木)に開催されました。
以下、報告させていただきます。

日時:2012年2月9日(木)18:00-19:30
場所:東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
当日のスケジュール
(1)『それでも種をまく』(2011年、日本、24分)の鑑賞
(2)笠原眞弓氏(国際有機農業映画祭運営委員)よる解説


笠原眞弓氏による解説と講演

【開催報告】
 初めに映画『それでも種をまく』(2011年、日本、24分)を鑑賞した。福島第一発事故とそれによる放射能汚染は、有機農業をとりまく様々なつながり-生産者と消費者、生産者と地域、そして循環する生態系とのつながり-を暴力的に断ち切った。本作品は、その痛みの中で、なお「つながり」を取り戻すための種をまこうとしている農民の姿を追う、国際有機農業映画祭委員会の自主作品である。
 ニュースや新聞で、被災地の農家の現状について知ることはできるが、農家の「生の声」に触れる機会は、都会に住んでいれば尚更のこと、少ない。その意味で、本作品は我々にとって貴重なドキュメンタリー映画であった。映画鑑賞後、小グループに分かれて映画の感想を話し合い、グループの代表者が各チームの議論の内容を発表した。ニュースでは伝えられない農家の方々の本音を知ることができた、農家の方々の、仕事に対するプライドやメンタリティを理解できた、有機農業をとりまく様々なつながりを断ち切った原発と日本は今後、どう向き在っていくか、など、様々な感想が提示された。
 その後、国際有機農業映画祭運営委員である笠原眞弓氏による解説が行われた。種をまき、土を耕すということは農家の方々の生き方そのものであり、出荷制限に対する補償金で解決される問題ではなく、有機農業を支える様々な「つながり」が原発事故によって断ち切られた後でも、農家の方々は農業を続けていることが、映画に込められたメッセージであった。本映画については、既に英語、中国語版が完成しており、現在、タイ語、フランス語、韓国語にも翻訳されており、世界各地で公開される予定とのことである。[安田佳代]