ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

ASNET関連セミナー

第45回東文研・ASNET共催セミナー「オスマン帝国と立憲政」

  • 報告

【報告】第45回東文研・ASNET共催セミナー
「オスマン帝国と立憲政」

第45回東文研・ASNET共催セミナーが2012年3月1日(木)に開催されました。
以下、報告させていただきます。

日時:2012年3月1日(木)17:00-18:00
場所:東京大学東洋文化研究所 第三会議室
報告者:藤波伸嘉(東京大学大学院総合文化研究科特任助教)

【開催報告】
 今回の発表では、昨年末に刊行された報告者の単著『オスマン帝国と立憲政』を取り上げ、その内容を章ごとに紹介すると共に、オスマン立憲政が持つ比較史的な意義について考察を試み、更に今後深められるべき次の課題について議論を行なった。その際、1908年の青年トルコ革命後、20世紀初頭のオスマン帝国で展開された多民族多宗教的な立憲政の実態について、共和主義的解釈と共同体主義的解釈との相克が見られたこと、国政の次元と宗派共同体内政治の次元とでの政治過程の連動が観察されたことが指摘された。また今後の課題として、オスマン帝国、ギリシア王国、正教徒共同体、そして国際商業の場で活動したギリシア人銀行家やギリシア人歴史家に着目した、新たなオスマン国制史叙述の可能性について議論された。
 質疑に際しては、立憲政における制度と政治の相関、イスラーム国教条項の意義、公用語がトルコ語であったことの捉えられ方、青年トルコ革命の政治文化のあり方、立憲制導入と政治の安定化・不安定化の関係などの諸点について討論を行なうことができた。[藤波伸嘉]