以下の通り、第75回目の東文研・ASNET共催セミナーを開催しました。
【日 時】 7月4日(木) 17:00-18:00
【会 場】 東京大学 東洋文化研究所 1階 ロビー
【報告者】 松村智雄 (東京大学学術研究員、東京理科大学非常勤講師)
【題 名】 インドネシア政治の中の華人
【報告要旨】
中国系住民はオランダ植民地期以前から、現在のインドネシアにあたる地域に居住しており、今では、彼らは法的にもインドネシア国籍を取得している。しかし、「華人」という存在は、政治的、社会的にさまざまな場面で構築され、その他の民族との差異が強調されて、排撃の対象にもなってきた。たとえば、1998年5月にジャカルタで起きた暴動のさなかの華人への暴徒の攻撃は、現在にまで社会に傷痕を残している。
本発表では、「華人」という存在は、インドネシア政治、インドネシア社会の中である種「特別」な要素を持っているが、それがどのような歴史的経緯を持って形成されてきたのかを紹介する。そこでは、インドネシアへの「同化」が鍵概念になるであろう。すなわち、もともとインドネシアへの帰属意識がなかった人々が「インドネシア人」となっていく過程である。
しかし、これ以外の道を選択した人々にも注目する。それは、インドネシアに中国系住民として生まれるが、人生のある時期にインドネシアに住むことをやめ、中国や台湾、そのほかの地域に移り住んだ人々の存在である。彼らのストーリーは、「中国志向の華僑から居住地志向の華人へ」というストーリーの裏に張り付いた別のストーリーであり、華人のこのような動きに注目することは、国民国家の歴史、すなわちナショナル・ヒストリーを相対化するような歴史の描き方への可能性を持っていると考えられる。
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【Date】 July 4 (Thu), 17:00-18:00
【Venue】 Ground floor, Tobunken
【Speaker】 Matsumura Toshio (Research Fellow, UT; Lecturer, Tokyo University of Science)
【Title】 Chinese in Indonesian Politics
【Abstract】
Chinese have lived in Indonesian archipelago before the Dutch colonial era, and almost all of them are now already Indonesian citizens legally. However, the existence of Chinese has been constructed politically and socially, and the differences with other ethnic groups have been emphasized, and sometimes they have become the target of attack. For instance, in the May Riot in Jakarta 1998, so many Chinese shops were attacked by mobs, and this incident left a scar in Indonesian society.
In this presentation, I will explain how this ‘special’ feature of Chinese has been formed historically in Indonesia. In this process, “the assimilation of Chinese” became a key concept, in other words, the process where people without a sense of belonging to Indonesia became ‘Indonesian’.
At the same time, I will emphasize Chinese people who chose another way, that is, although they were born in Indonesia, they quit living there, and decided to live in China, Taiwan and other states. Their story is another one adhered behind the story of Chinese becoming Indonesian. By way of recognizing the story of who left Indonesia, it will be possible to do the relativization of “national history”.
「華人」にスポットライトをあてながらインドネシアを眺めると、その歴史や社会が新しい形に見えてきました。
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