JAMA MASJID


 このモスクの礼拝室西側にはアーチ形のミフラーブとして設けられている。それらも他のモスクの場合とやや異なって深く造りこまれ、とくに常時カーテンで被われている中央のミフラーブはいわば三重のアーチ形を重ねる複雑な形態と様式を示しており、スルターン・ムハンマドによって彩色を施されたという。モスクの外観の清楚さとは正反対の印象を抱かせるほどのアラビア文字や建築の絵や奇妙な感じを与えさえするさまざまな文様は、南アジアのモスクばかりか他のムスリム建造物のなかでもまったく異色なものである。この中央ミフラーブの様式と文様とは、中央ドームにある交差アーチ用いてドーム径を減衰させる技法とともに、他の南アジアのモスクの歴史にその例を見ないユニークな性格を備えている。このミフラーブの彩色に関しては詳しくはヘンリー・カゥズンスの著書の冒頭に載せられた色彩写真を参照していただきたい。それだけの価値のある奇抜さで、近代の抽象絵画の図案を見ているようだと記せばわかっていただけるであろうか。
 さまざまな特徴を持つこのジャーマ・マスジドは、アリー・アーディル・シャーI世によって創建されスルターン・ムハンマドの時に完成をみたとされている。ただし、モスクの北側の壁から張り出した門は、のちにアウラングゼーブの治世に添加されたものである。いずれにせよ、このビジャープルのジャーマ・マスジドは、南アジアに残るモスクの建設史上にその名を残し得る歴史的建築遺産といえよう。(荒松雄)

 

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