イスラーム地域研究5班

 聖者信仰研究会・スーフィズム研究動向研究会

合同研究合宿報告

日時:1月30日〜1月31日
場所:関西大学100周年記念セミナーハウス・高岳館(関西大学高槻キャンパス内)

報告:

聖者信仰研究会(5-a)、スーフィズム研究動向研究会(2-c)の合同研究合宿が、去る1月30〜31日、大阪府高槻市の関西大学セミナーハウス高岳館において催され、28名の参加者を得て、活発な議論が展開された。
今回の合宿は、読書会、研究発表、概説・研究動向の3本立てで行われた。
読書会では、A. Popovic & G. Veinstein (eds.), Les voies d'Allah の第1部(全4章)を通読した。「タリーカ」の通史を扱ったものであるが、修行道としての「タリーカ」と教団としての「タリーカ」を連続的に扱おうとする姿勢は、スーフィズムを総合的・包括的に論じようとする本書の意図を端的に表すものといえる。議論のなかでは、「タリーカ」=「スーフィー教団」と理解することの問題点が浮き彫りにされた。
研究発表は、パキスタン南部とエジプト西部の聖者信仰の例がそれぞれとりあげられ、実見に基づいた精緻かつ大胆な報告が行われた。聖者信仰が各々の基層文化と分かち難く結びついており、イスラームの中のスーフィズムという枠組みの中でとらえられるものでは必ずしもないことが明らかにされるとともに、「聖者」という用語の問題点も改めて指摘された。
概説・研究動向は、今回の合宿で初めて取り入れられた新しいタイプの発表であるが、さまざまなディシプリン・専門地域をもつ研究者のあいだに共通理解をもたらすため、各分野の専門家が、最新の研究動向にふれつつ、研究史を概説するものである。今回は、東トルキスタンにおけるスーフィーたちの活動に関する歴史学の研究成果が、明解に提示された。
一般に、スーフィズムとタリーカと聖者信仰は一体のものとして漠然と理解されているが、より緻密な分析に基づく再考が必要とされることが明らかになったのは、本合宿の成果のひとつである。スーフィズムの分析と聖者信仰の分析は、重なり合いながらも、どこかでは分岐せざるを得ない、ということにも気づかされることとなった。
なお、初日の夜9時半からの懇親会も、聖者信仰に関する英語のビデオを見ながら行われるなど、聖者とスーフィーの世界にどっぷりと浸った2日間の合宿であった。
 

聖者研究会・スーフィズム研究会合同合宿スケジュール表

1998年1月30日(金)(第1日目)

13:00

高槻市関西大学セミナーハウス・1階ロビー集合 (時間厳守)

13:15〜14:30

研究会開始 挨拶 堀川徹(京都外国語大学)
研究発表
1(ビデオ使用)
「パキスタン南部の神と聖者―その祈りと歌のかたち」
発表者
村山和之(和光大学)

14:30〜15:00

コメントと質疑応答
コメンテーター
和崎春日(日本女子大学)

15:00〜16:00

読書会
A.Popovic and G.Veinstein(eds.),
Les Voies d'Allah 第1部第1章
Les debuts du soufisme ” (Denis Grill)
発表者
東長靖(東洋大学)

16:00〜16:15

質疑応答

16:15〜16:45

(各自部屋にチェックイン)

16:45〜17:45

読書会 前掲書 第1部第2章
L'apparition des voies:les khirqa primitives ”(Eric Geoffroy)
発表者
森山央朗(東京都立大学大学院)

17:45〜18:00

質疑応答

18:00〜20:00

20:00〜21:00

概説・研究動向
「東トルキスターンのスーフィーたち」
発表者 澤田稔(帝塚山学院短期大学)

21:00〜21:30

質疑応答とディスカッション

21:30〜

懇親会(自由参加) ビデオ鑑賞 タイトル「Saints and Spirits」

 

1998年1月31日(土)(第2日目)

時 間

活 動 内 容

7:30〜 9:00

朝 食 (各 自)

9:00〜10:00

読書会 3 前掲書 第1部第3章
“ La《seconde vague》fin XIIIe -XVe siecle ” (Eric Geoffroy)
発表者 : 矢島洋一(京都大学大学院)

10:00〜10:15

質疑応答

10:15〜11:15

読書会 4 前掲書 第1部第4章
“ Le renouveau confrerique (fin XVIIIe-XIXe siecle) ”
(Marc Gaborieau, Nicole Grandin)
発表者 : 黒岩高(東京大学大学院)

11:15〜12:00

読書会全体についてのコメントと質疑応答
コメンテーター : 堀川徹(京都外国語大学)、私市正年(上智大学)

12:00〜13:00

昼 食 と 休 憩

13:00〜14:00

研究発表 2
「砂漠の聖者の末裔たち―聖者性の継承についての事例研究」
発表者 : 赤堀雅幸(上智大学)

14:00〜14:30

コメントと質疑応答
コメンテーター : 大坪玲子(東京大学大学院)

14:30〜

ビデオ鑑賞(自由参加)
タイトル「Sufis round Khartoum」 研究会終了 現地解散

5jimu@culture.ioc.u-tokyo.ac.jp