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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府、中華人民共和国政府及び大韓民国政府の間の三者間協力事務局の設立に関する協定

[場所] 
[年月日] 2010年12月16日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日本国政府、中華人民共和国政府及び大韓民国政府(以下「締約国政府」と総称する。)は、

 二千十年五月三十日に大韓民国の済州島において開催された第三回三箇国首脳会議で決定したとおり、締約国政府の間の三者間協力を効率的に促進し及び運営し、並びに既存の対話の仕組みを強化し及び三国間の協力関係の更なる促進に寄与するために事務局を設立することを希望して、

 次のとおり協定した。

第一条

1 この協定により、三者間協力事務局(以下「事務局」という。)を設立する。

2 事務局は、大韓民国(以下「所在国」という。)に置く。

第二条

事務局は、締約国政府の間の協議の仕組みを運営し及び管理するための支援を提供し、並びに協力案件の探究及び実施を促進することにより、三国間の協力関係の更なる促進に寄与することを目的とする。

第三条

1 前条にいう目的を達成するため、事務局は、次の任務及び活動を遂行する。

 (a)三箇国首脳会議、三箇国外相会議、三者委員会その他の閣僚会議、三箇国外務高級実務者協議等の締約国政府の間の協議の仕組み(以下「協議の仕組み」という。)の運営及び管理に対して事務的及び技術的な支援を提供し、並びに必要に応じて主要な協議の仕組みにその代表を参加させること。

 (b)締約国政府、及び必要に応じて他の国際機関、特に他の東アジアの協力のための仕組みとの連絡及び調整を行うこと。

 (c)締約国政府の間の潜在的な協力案件を探究し及び特定し、並びにこれらの案件を採択のために関連する協議の仕組みに報告すること。

 (d)協力案件を評価し及びこれらの案件に関する報告書を作成し、必要な文書をデータベースに収集し、並びに年次進捗{捗にちよくとルビあり}報告を承認のために三者委員会又は三箇国外相会議に提出すること。

 (e)三者間協力に関連する重要事項に関する調査を行い、事務局のウェブサイトを運営し、及び三者間協力についての理解を促進すること。

2 事務局は、三箇国外相会議を通じて又は三箇国外相会議が決定する方法により締約国政府によって認められた権限の範囲内において、かつ、締約国政府による監督の下で、その任務及び活動を遂行する。

第四条

事務局は、所在国において、次のことを行う法律上の能力を有する。

 (a)契約を締結すること。

 (b)動産及び不動産を取得し及び処分すること。

 (c)訴えを提起すること。

第五条

1 事務局は、次に掲げる方法により指名され及び任命され又は雇用される一名の事務局長、二名の事務局次長及び専門職員(以下「職員」と総称する。)並びに一般役務職員から成る。

 (a)事務局長は、一の締約国政府の指名(大韓民国、日本国、中華人民共和国の順の輪番制による。)に基づいて、三箇国外相会議において任命される。事務局長の任期は、二年とする。

 (b)締約国政府による別段の合意がない限り、事務局長を指名した国の政府以外の締約国政府は、それぞれ事務局次長一名を指名し、これらの者は三箇国外相会議において任命される。事務局次長の任期は、原則として二年とし、三箇国外相会議の承認を得て二年を限度として一回延長することができる。

 (c)事務局長は、締約国政府から専門職員として派遣される人員を任命する。

 (d)事務局長は、事務局の任務及び活動を遂行するために必要な一般役務職員を雇用することができる。

2 事務局に、事務局長及び事務局次長から成る諮問理事会を置く。諮問理事会は、付託される問題について協議し、及び全会一致の原則により決定を行う。諮問理事会は、第三条2の規定に従い、重要事項について締約国政府と協議する。

3 事務局長は、様々な分野における三者間協力を促進することを目的として事務局の任務及び活動を効率

的に遂行するため、三箇国外相会議の承認を条件として、事務局に部局を置くことができる。

第六条

事務局長は、事務局を代表し、並びに事務局が遂行する任務及び活動に対して責任を負う。事務局長は、また、事務局の運営、特に次の事項に対して責任を負う。

 (a)事務局の任務及び活動に関する年次報告書及び必要に応じて特別報告書並びに事務局の年次予算を作成し、並びに三箇国外務高級実務者協議の承認を得た上でこれらを承認のために三箇国外相会議に提出すること。

 (b)三箇国外相会議の承認を条件として、事務局の内部規則を作成し、及び改正すること。

 (c)三箇国外相会議の承認を条件として職員の派遣に関する基本的な条件(給与に関する事項を含む。)を設定し、及び事務局次長との協議を行った上で専門職員の解任について当該職員を派遣した締約国政

府に対して提案すること。

(d)三箇国外相会議の承認を条件として一般役務職員の地位及び給与を含む雇用条件を設定し、資格を有する人員を一般役務職員として雇用し、並びに必要に応じてにいう内部規則に従って一般役務職員を解雇すること。

(e)事務局の運営に必要な契約を締結すること。

第七条

1 事務局次長は、事務局長による任務及び活動の遂行を補佐する。この関連で、事務局次長は、特に次の任務を遂行する。

 (a)三者間協力の漸進的発展の将来の方向性について事務局長に対して助言を行うこと。

 (b)事務局長の認めるところに従い、会議、式典その他の場合において事務局を代表すること。

 (c)事務局の調査活動に対して援助を提供すること。

 (d)事務局長が委任するその他の任務及び活動を遂行すること。

2 事務局次長は、事務局長が不在であり又は任務を行うことができない場合には、前条にいう内部規則に従い、事務局長に代わってその任務を行う。

第八条

1 所在国政府は、事務局の運営のための施設を提供し、及び手配する責任を負う。

2 事務局の事業費は、締約国政府の均等の拠出により支弁するものとし、締約国政府は、それぞれの国内法令に従うことを条件として当該拠出を行う。

第九条

1 事務局及び職員は、事務局の目的を達成し、並びにその任務及び活動を遂行するため、次条及び第十一条に定めるところにより、所在国において特権及び免除を享有する。

2 所在国政府以外の締約国政府は、自国において、自国の法令によって認められた範囲内で、事務局の適正な運営のために必要な便益を与えることができる。

3 契約、又は事務局及び職員が使用若しくは所有する自動車、船舶若しくは航空機により引き起こされた事故による損害であって保険により賠償することができないものに係る民事訴訟については、特権及び民事訴訟又は行政訴訟に関する所在国の裁判権からの免除は、与えられない。

4 事務局は、この協定に基づいて与えられる特権、免除及び便益に関連する濫用の発生を防止するために、所在国の関係当局と常に協力する。

5 所在国政府がこの協定に基づいて与えられる特権又は免除の濫用があったと認める場合には、濫用があったかどうかを決定するため、及び濫用があったと決定するときはその濫用が繰り返されないことを確保するため、所在国政府と事務局との間で協議を行う。

第十条

1 事務局並びにその財産及び資産は、免除を明示的に放棄した場合を除き、訴訟手続の免除を享有する。民事訴訟又は行政訴訟に関する裁判権からの免除のいかなる放棄も、その判決の執行についての免除の放棄をも意味するものとみなしてはならず、判決の執行についての免除の放棄のためには、別にその放棄をすることを必要とする。前記にかかわらず、事務局が自ら訴訟手続を開始した場合は、訴訟手続の免除のみならず判決の執行についての免除をも放棄したものと推定する。

2 事務局の構内は、不可侵とする。事務局の記録並びに一般に事務局が所有するすべての公用の書類及び文書は、不可侵とする。

3 事務局は、その公用通信に関して、所在国政府が所在国において外交使節団又はあらゆる国際機関に与える待遇よりも不利でない待遇を享有する。事務局は、信書その他の公用通信を伝書使又は封印袋により発送し、及び接受する権利を有する。伝書使及び封印袋は、外交伝書使及び外交封印袋と同一の特権及び免除を有する。

4 事務局は、財政上のいかなる種類の管理、規制又はモラトリアムによっても制限されることなく、

 (a)基金又はいかなる通貨をも保持し、及びいかなる通貨の勘定をも設けることができる。

 (b)基金又は通貨を所在国へ及び所在国から又は所在国内において移動し、並びにその保持する通貨を他の通貨と交換することができる。

5 事務局は、4に規定する権利を行使するに当たっては、所在国の国内法を遵守し、及び所在国政府の申入れに対して、事務局の利益を害することなくこの申入れを実施することができると考える限り、妥当な考慮を払う。

6 事務局並びにその財産及び資産は、

 (a)事実上公益事業の使用料にすぎないものを除き、すべての直接税を免除される。

事務局がその公用のために輸入し、又は輸出する物品に関しては、関税並びに輸入及び輸出に対する

 (b)禁止及び制限を免除される。もっとも、この免除を受けて輸入した物品は、所在国政府の決定した条件によるのでなければ、所在国では売却してはならないものと了解される。

 (c)事務局の刊行物に関しては、関税並びに輸入及び輸出に対する禁止及び制限を免除される。

7 事務局は、原則として消費税並びに動産及び不動産の売却に対する税でその価格の一部をなすものの免除を要求しない。もっとも、所在国政府は、事務局が公用のために財産の重要な購入を行うに際しこれに前記の税が課された場合には、可能なときはいつでも、税額の減免又は還付のため適当な行政的措置をとることができる。

第十一条

1 職員は、

 (a)事務局が支払った給料及び手当に対する課税を免除される。

 (b)所在国に居住する配偶者及び扶養親族とともに、出入国制限、外国人登録及び国民的服役義務を免除される。

 (c)事務局に最初に着任する際に、自己の個人的な使用又は配偶者及び扶養親族の使用のための家具及び家庭用品を無税で輸入する権利を有する。

 (d)為替の便益に関して、所在国に着任した他のあらゆる国際機関の職員であって自己の地位と同等の地位のものに対して与えられる待遇よりも不利でない待遇を受ける。

2 所在国政府は、所在国の国民である職員又は所在国に通常居住している職員に対して、この条に規定する特権及び免除を与える義務を負わない。

3 特権及び免除は、事務局の利益のためにのみ職員に与えられるものであって、職員個人の便宜のために与えられるものではない。事務局長は、この協定に基づいて職員に与えられる免除が正義の実現を阻害するものであり、かつ、事務局の利益を害することなくこれを放棄することができると判断する場合には、事務局次長との協議を通じて、その免除を放棄する権利及び義務を有する。事務局長及び事務局次長に与

えられる免除は、必要に応じ、三箇国外相会議において放棄することができる。

第十二条

 事務局の常用語は、英語とする。

第十三条

 事務局の会計は、毎年、検査し、及び三箇国外相会議に報告する。事務局長は、三箇国外相会議の承認を条件として、その検査の手続を定める。

第十四条

 いずれの締約国政府も、この協定の改正を提案することができる。この協定は、締約国政府の書面による合意によって改正することができる。

第十五条

 各締約国政府は、他のすべての締約国政府に対し、この協定の効力発生のために必要なそれぞれの内部手続が完了した旨を外交上の経路を通じて書面により通告を行う。この協定は、当該通告のうち最も遅いものが行われた日に効力を生ずる。

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。

 二千十年十二月十六日にソウルで、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために 武藤正敏

中華人民共和国政府のために 張鑫森

大韓民国政府のために 金星煥