インド・イスラーム史跡 写真資料データベース公開にあたって



 東洋文化研究所附属東洋学研究情報センターでは東京大学インド史跡調査団の撮影したイスラーム建築遺構の写真を建物ごとに整理してきた。その概要は、白黒ネガフィルムでは4×5サイズ(12枚を1綴りとしたもの)261本、6×9サイズ(8枚綴り)283本、6×6サイズ(12枚綴り)627本、35mmサイズ(36枚綴り)426本、加えてカラー・ポジ・フィルムは650コマにおよぶ。中には記念写真や風物、風景、ヒンドゥーや仏教の遺跡も含まれるが、イスラーム建築を撮影したものだけで20000枚あまりを数える。

 東京大学インド史跡調査団は、山本達郎(団長・現東京大学名誉教授)、荒松雄(副団長・現東京大学名誉教授,歴史学)、月輪時房(現聖心女子大学名誉教授、考古学)、三枝朝四郎(写真撮影)、大島太市(写真測量)の諸氏から構成され,1959〜60年、1961〜62年の二回にわたって現地調査を実施した。調査団の目的は、デリーに遺存するサルタナット期(13世紀初頭〜16世紀中葉)イスラーム建築の悉皆調査であった。加えてベンガル、デカン、グジャラート等、地方の重要イスラーム建造物の調査がおこなわれた。

 これらの写真を建物別に整理すると、デリーでは500件を超え、地方では230件あまりを数え、総計750件近いインド・イスラーム建築の写真データを保有していることとなる。これらの写真資料は、既に破壊された建築、手荒く改修された建築、都市化に取り込まれた建築等々の40年前の状況を知る貴重な資料である。また、大型カメラによる念入りの撮影である点も見逃せない。

 現在、これらの写真資料を再整理し、公開に向けてのデータ・ベース化の作業を行っている。2001年度は、4×5写真3000枚あまりのデジタル化を行った。今回、まず地方の諸遺跡に関する
771点、施設数にすると197件のの4×5写真を、都市毎、建物毎に実験的にホーム・ページとして公開する。なお、各建物紹介は調査団団員でもあった荒松雄東京大学名誉教授の最新刊「中世インドのイスラーム建築」(岩波書店)の解説を引用させていただいた。

2005年度には、6×6白黒ネガ2186点のデジタル化を外注によって行った。あわせて、35mmカラー・スライド2459点のデジタル化を外注によって行った。デジタル化の方式を従来のコダック・フォト・CDからTIFF形式に改めたために、予算内で当初の計画よりも数多くのフィルムをデジタル化することができた。人員雇用によって、35mm白黒ネガ1000点をデジタル化した。なお、撮影対象との同定については、6×6白黒ネガ、および35mm白黒ネガについてはエクセルにファイル化を行った。なお、35mmカラー・スライドの撮影対象との同定は作業が済んでいない。

平成17年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)「東文研蔵アジア写真資料集成データベース」
 (課題番号:178120、代表者:平勢隆郎)
によって、3410件の新規公開データを追加することができた。近日中にデジタル化済みの5500点を追加公開する予定である。


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