MOSQUE OF HAIBAT KHAN
このモスクはアフマド・シャーのモスクに似ているといわれるが、その東正面のアーチ壁は中央がやや高く、三つのアーチ形の入口を開いている。中央部の両端には地面から立ち上がるミーナールがなく、バトゥルメントを連ねた軒線上に細めの双塔を掲げている。中央の高めのドームを挟んで二つのドームがあり、西側背面には内部の三つのミフラーブに応じて半円形の張り出し部分があり、背面の南北両端には円形断面の特異な塔を備えている。中庭の三方に入口を持つが、東側が正門で低いドームを頂く四角平面の構造を持ち、モスクの内部と同じく、ヒンドゥーあるいはジャイナ教の神殿のものをそのまま利用した12本の柱を用いている。
このモスクの東正面は、三つのアーチ型入口の中間に造られた小さな透かし彫りの窓をのぞいて装飾は施されていない。その内部は異教の神殿の柱や天井の部分をそのまま利用していて一見したところではモスクの礼拝室にいるとは思われない。私の探査経験では、南アジアでもこれほど露骨に異教の神殿の柱その他の資材を転用している例は少ないと考える。（荒松雄）