AHMAD SHAH'S OLD JAMI

 

 広大な敷地を持つモスクで、東側と北側に入口として小規模の門を備えている。このモスクの形態と構造は単純で、東側アーチ壁をみれば、広く高いアーチを持つ一段高くなった中央の部分を挟んで両側にそれぞれ二つのアーチの入口を開いている。これは、クトゥブ・シャーのモスクと同じファサードである。中央の部分の左右には、凸部に設けられた階段がミーナールが設けられていたことを物語るが、軒線より上の部分は今はない。この中央部のアーチの両端は、他にはあまり例のない簡素な線型の文様で彩られている。おそらく、ハイバット・ハーンのモスクと他のアフマド・シャー朝のミーナールを繋ぐ過渡的な形態であろう。バトゥルメントで縁取りされた屋上にはそれぞれの入口のアーチに呼応して、間口の五つ、奥に二つの合計で10個のやや低いピラミッド形に近いドームを頂いている。これ以後アフマド・シャー朝で目立つ中央の12本柱ドームを高く吹き抜けとする技法はここでは見当たらず、中央アーチの背面の矩形の部分だけが高く構築されている。
 モスクの内部へ入ると、ヒンドゥーあるいはジャイナ教の神殿からとったと思われる多数の柱の列に驚かされる。ドームに呼応する内部の天井も異教のそれと同じ造りで、その彫刻は他にみられない特異なものである。モスク特有のミフラーブやミンバルがなかったら、ヒンドゥーあるいはジャイナ教の神殿のなかにいるのではないかという錯覚さえ感じさせられる。柱のなかには、人像をのぞいて元の彫刻がそのまま残されているものも多い。五つのミフラーブはいずれも大理石造で至るところに彫刻を施されているが、それぞれに凝った造りと文様彫刻で南アジアのモスクのミフラーブとしては特筆に値する。
 モスクの内部の北西隅には二階床が挿入され、柱列に支えられて女性のためのザナーナが設けられている。注目すべきはこのザナーナの柱間に施された透かし彫りの窓で、幾何学文様の精巧なつくりである。このザナーナの壁面のそれよりはやや単純ではあるが、これらと同じような透かし彫りは中央の部分の屋根に設けられた小部屋の壁にもみられ、正面入口から入ると、その透かし彫りの蔭が効果を発揮するように造られていて驚かされる。これまた他のモスクには見られないこの建造物の特徴の一つといえそうである。ただし、これらの凝った造りに比べると、外壁に設けられた門の入口は小規模で目立たない造りである。(荒松雄)
 サブラマティー川に面する西市壁中央部ある内城にあり、その南壁に食い込むような形で位置している。(深見奈緒子)

 

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