イスラーム地域研究5班
研究会報告

第二回「回儒の著作研究会」研究会報告

 5月22日に東京大学文学部アネックスで行われた第2回の研究会では、前回に引き続き劉智(Liu Zhi)の『天方性理』(Tian Fang Xing Li)について以下の部分を取り上げ、読解を進めた。

  1. 「図伝第1章第2節」発表・翻訳担当 鈴木弘一郎(東京大学大学院 博士課程)
  2. 「図伝第1章第3節」発表・翻訳担当 松下道信(東京大学大学院 博士課程)
 「1.」 では、前回で取り上げた「最初無称図」(Zuichuwucheng-tu)をさらに6段階にわけた図説の中、その第1段階にあたる「真体無着図」(Zhengtiwuzhuo-tu)を取り上げ読解を進めた。またこの際、劉智に見られる流出論的世界観がワフダ・アルウジュード(存在一性論)派のそれときわめて近いことが指摘された。また、「知」(zhi)と「能」(neng)の対概念については、イスラーム哲学における‘ilmとqudraの対比を中国語にうつした可能性が高いことが指摘された。

 「2.」 では、「最初無称図」を6段階にわけた図説の中、その第2段階にあたる「大用渾然図説」(dayonghunran-tu)を取り上げ、読解を進めた。ここでは、劉智の流出論において、「個別的本質による規定」の段階が説明される。その際に劉智は「全体大用」(quantidayong)、「初動」(zudong)等、宋学的用語を用いて叙述を行っていることが確認され、『天方性理』全体を通じたこれらの用語の用法を詳細に分析していくことが今後の課題とされた。


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