4月10日に東京大学文学部アネックスで行われた第一回の研究会では、劉智(Liu Zhi)の『天方性理』(Tian Fang Xing Li)について以下の部分を取り上げ、読解をすすめた。
次に、「2.」 では劉智が本書を執筆するにあたっての動機あるいは目的といった点について、先行研究と対照し再確認を行った。その際、本書がこの時代におけるいかなる層を読者として想定しているかが不明確であることが指摘され、その究明が課題となった。
「3.」 では万物生成の根源を説明した「最初無称図」(Zuichuwucheng-tu)の読解をすすめ検討を加えた。ここでは、劉智が中国哲学諸家の概念を援用しつつも万物生成における究極のはじめについての概念については独自の見解をあらわしていることが指摘され、また、劉智の万物の成り立ちに対する概念には宋学においてしばしば見られる流出論的世界観と相通ずるものであることが確認された。一方、「知」(zhi)と「能」(neng)、あるいは「名」(ming)と「義」(yi)など中国哲学では見られない対概念が用いられていることも指摘された。さらに、これらの流出論的世界観や対概念がイスラーム神学・哲学にみられるものであるのかという点が問題となったが、今回はイスラーム学からの参加者が無かったため、これについては次回への課題となった。