イスラーム地域研究5班
研究会報告

aグループ第11回中近東窯業史研究会報告

日時 : 2002年2月2日(土)〜2月3日(日)
会場 : 中近東文化センター

プログラム:

2月2日

1.島田守氏による復元ガラスの展示解説
2.中近東文化センターで開催中の「エジプトのガラス」展関連公開研究会
  (中近東文化センター及び日本ガラス工芸学会の共催)に参加
真道洋子(中近東文化センター)「エジプト・ガラスへのアプローチ」
池田和美(早稲田大学)「新王国時代のコア・ガラス」
島田守(奈良大学)「カラニス・タイプ皿の技術的復元」
山田祥子(東京理科大学)「可搬型蛍光X線分析装置によるトゥール、ラーヤ 遺跡出土のその場分析第2報」

2月3日

1.研究発表
山花京子(東海大学)「古代エジプトのファイアンス」
山内一也(シルクロード研究所)「2001年度のイラン踏査報告」
2.「エジプトのガラス」展見学

報告の概要:

真道洋子(中近東文化センター)「エジプト・ガラスへのアプローチ」
紀元前15世紀の古代王朝時代から16世紀のイスラーム時代に至るまでの、エジ プト・ガラス史研究の観点を概説した。

池田和美(早稲田大学)「新王国時代のコア・ガラス」
エジプト新王国時代(紀元前1570-1293年頃)のコア・ガラスについて、器形と 地域的分布の関連を論じた。

島田守(奈良大学)「カラニス・タイプ皿の技術的復元」
中近東文化センター所蔵のカラニス・タイプ皿を実際に復元することによって 新たにわかった古代ガラス技法の特徴を述べた。

山田祥子(東京理科大学)「可搬型蛍光X線分析装置によるトゥール、ラーヤ遺 跡出土のその場分析第2報」
中近東文化センターのトゥールおよびラーヤ遺跡(シナイ半島)発掘に、可搬 型蛍光X線分析装置を持ち込んでその場で行われた、ラスター彩ガラスとクフル 瓶についての非破壊分析の成果を報告した。

山花京子(東海大学)「古代エジプトのファイアンス」
古代エジプトのファイアンスについて基礎的な知識を呈示した。「ファイアン ス」は、青釉陶器の生産地として知られるイタリア都市ファエンツァを語源とは するが、古代エジプトの「ファイアンス」は胎の主成分を石英とし、表面にガラ ス質の釉を施して焼成したものを指す。従って、釉の色は青が多いものの、それ だけではなく、赤、黒、白なども含まれる。ガラスとは原材料は同じであるが、 組成の割合が異なっているほか、ファイエンスは2層構造で外側はガラス質、内 側は結晶であるのに対し、ガラスは非結晶である点が大きな相違点である。ま た、ファイアンスの胎土は90パーセントが石英であるのに対し、焼物では胎土は アルミナなど土成分であって、性質を異にする。ファイアンスの製法には、白華 技法、浸灰技法、塗り付け技法、これらの組み合わせの4つがあり、焼成温度は 850〜1000℃以上である。成形方法としては手捏ね、削りだし、型成形、型成形 の後の削りだし、コア成形、ロクロ成形がある。用途にはビーズ、護符、小像、 タイル、容器(日常用・儀式用)、葬送用具がある。

山内一也(シルクロード研究所)「2001年度のイラン踏査報告」
2001年8〜9月に、日本から4名、イランから8名の調査団がイラン、ギーラ ーン州のサフィードルード川西岸で行った遺物の表採について報告した。この地 域には古代からイスラーム時代に至る墓が急斜面に存在しており、その付近の集 落は、高さにして300〜600m離れている冬営地と夏営地を毎年移牧するという、 特徴的な生活形態を古代から維持しているようである。イスラーム墓からのみ、 施釉および無釉陶器が出土している。

(文責:桝屋友子)


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