イスラーム地域研究5班
研究会報告

cグループ「回儒の著作」研究会第14回例会報告

日時 : 2001年7月21日(土)13:30〜
場所 : 東京大学文学部アネックス大会議室
テーマ: 明末清初における外来宗教の受容と耶蘇会士の中国思想解釈
報告者・題目
・堀池信夫(筑波大学教授)「フィギュアリストとその周辺」
・岡本さえ(東京大学名誉教授)「明末西学と破邪論」

 今回は『天方性理』の読解を離れ、同じ外来宗教であるキリスト教の状況がどのようであったのかを知ることで、『天 方性理』読解に裨益させるべく、当時の中国国内のキリスト教の受容と、当時の中国思想を西欧側がどのように捉えてい たかについて、それぞれ専門家に報告していただいた。
 まず堀池氏からの報告では、西欧側からは中国の哲学、思想をはじめとする文化が西欧起源であるとの主張、中国側か らは当時影響を与えた西洋科学とりわけ天文暦算などが本来中国にあったものであるとの主張が、それぞれなされていた ことが発表された。西欧側のジェスイット宣教師は図形(フィギュア)によって説かれる『易経』を研究対象にしたことからフィギュアリストと呼 ばれ、中国の文化がキリスト教と対応しうることを論証しようとした。
 また岡本氏は、明末における西学受容について述べられ、当時、宣教師と中国人との対話が積極的に行われ、彼等の対 話集や暦法・火器をはじめとする科学技術書や宗教書が翻訳著述され、盛んに出版されたことを指摘。その背景には死後 の世界などに対して明確な指針を示せ得ない儒教に対する批判などがあった。しかしそれと同時に天主教を排斥する運動 (破邪論)もおこり、とりわけ明末の福建には相反する二つのグループが存在したことが報告された。

(文責:佐藤 実)


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