イスラーム地域研究5班

 

平成10年度の研究班5の研究計画

「イスラームの歴史と文化」を研究課題とする研究班5は、「歴史学者と人類学者の共同作業」にもとづいて研究活動をつづけています。本計画の初年度に、いくつもの新しい学問的課題を提起してきましたが、本年度(平成10年度)は、提起された問題群を学問的に整理する「方法論開発の年」となります。

昨年度にひきつづき、「生活のなかのイスラーム」を研究課題とするaグループと、「歴史のなかのイスラーム」を研究課題とするbグループに分かれて研究活動をおこないますが、「移動」を両グループの共通の中心的テーマとして設定します。移動は、人間の移動に限らずに、情報や物資の移動、そして文学や美術のモチーフの移動・伝播も研究対象となります。

研究活動の具体的な予定は以下です。 

1 研究会

aグループの研究会

  1. 加納弘勝担当:メディア上のイスラームにかかわる内容になる予定。
  2. 清水芳見担当:「中東研究者の見た東南アジアのイスラーム」といった内容になる予定。秋以降の開催。
  3. 和崎春日担当:アフリカのイスラームにかかわる内容になる予定。
  4. 鷹木恵子担当:イスラームと衣の文化に関わる研究会。年間数回を予定する。
  5. 赤堀雅幸担当:聖者信仰研究会。年に2回程度の研究会の他に、グループ2cスーフィズム研究動向研究会との共同により、合宿形式で行う。また国際ワークショップの準備をおこなう。
  6. ヤマンラール水野美奈子担当:「サライ・アルバム 研究会」年間数回を予定する。派遣研究、2000年度に予定している国際ワークショップに備える。
  7. 赤堀雅幸担当:「モロッコにおける『聖者信仰』と観光化現象」研究会。

bグループの研究会

若手の研究協力者を募った結果、13組、15人の研究協力者が研究活動に参加することになりました。今年度は、この研究協力者が、以下の5つのテーマの下で、研究分担者をリーダーとする小グループを作り、研究を進めます。各グループが最低年1回はそれぞれ独自の研究会を行います。

  1. 坂本勉担当:移動とネットワーク
     

    松長昭(文京女子短期大学非常勤講師)「カザン・タタール人のトルコへの移住に関する歴史学的研究」

     
    亀長洋子(東京大学大学院人文社会系研究科)「イスラム世界とジェノバ」
     

    前田弘毅(東京大学大学院人文社会系研究科)「コーカサス出身支配エリートの研究」

  2. 中里成章担当:アイデンティティーとエスニシティー
     

    小松香織(筑波大学専任講師)「オスマン帝国末期の海洋活動」

     
    松井真子(東京大学大学院総合文化研究科)「オスマン帝国の通商政策の変容−18世紀後半〜1838年−」
     
    大石高志(日本学術振興会特別研究員)「近現代南アジアにおけるパン・イスラーム主義運動の発揚過程に関する社会経済史的分析」
     
    9月26日(土)午後2時から4時まで東洋文化研究所で、「打合会」を開き、問題意識の共有化をはかる。それを受けて98年度中に「研究会」で一回開催する。
     
  3. 間野英二担当:史料学の可能性
     

    森高久美子(大阪外国語大学助教授)「中世イスラーム帝国における君主論」

     

    岩武昭男(関西学院大学文学部専任講師)・矢島洋一(京都大学大学院文学研究科)「モンゴル期イラン=イスラーム社会の諸相」

     
    高松洋一(東京大学大学院人文社会系研究科)・清水保尚(龍谷大学大学院文学研究科)「オスマン朝文書史料の機能論的研究」
     
  4. 杉田英明担当:ミクロへの接近
     

    深見奈緒子(東京大学東洋文化研究所非常勤講師)「イスファハーンに遺存するイスラーム宗教建築の調査研究」

     
    栗山保之(中央大学大学院文学研究科)「ハドラマウト研究」
     
    松本弘氏を中心に、マドラマウトに関する英語及びアラビア語資料の読書会を半ば公開の形で継続的に行う。11月に一度研究報告会を実施する。深見奈緒子氏がイスファハーン、松本弘・大坪玲子・栗山保之の諸氏のうち1〜2名がイエメンのシハームを取り上げ、例えば都市景観の相互比較などの視点から整理紹介する予定。
     
  5. 高山博、岸本美緒担当:異文化の接触
     

    草生久嗣(東京大学大学院人文社会系研究科)「ビザンツ異端論駁書に見られるイスラム像」

     
    工藤晶人(東京大学大学院人文社会系研究科)「フランスのアルジェリア支配について」

なお、両グループの研究会は、適宜相互乗り入れします。また、研究会はすべて公開でおこなう予定ですので、多くの方々の積極的な参加を期待します。

2 派遣研究

ヤマンラール水野美奈子を団長として、研究者数名の調査隊をトルコに派遣し、イスタンブルにて調査を行う。派遣期間2週間、派遣時期は8月もしくは12月。
以下の4名から成る調査隊をイラン、グルジア、アルメニアに派遣する。(団長)杉田英明、(団員)深見奈緒子、前田弘毅、岩武昭男

3 国際ワークショップ

「ズィヤーラ(参詣)」とテーマとし、2日間にわたるワークショップをaグループを中心に秋以降に行う。

赤堀雅幸が担当する。招聘者としてはAbderrahman LAKHSASSI(モロッコ、モハメド5 世大学)およびYusuf RAGHIB(コレージュ・ド・フランス専任研究員)を予定し、あわせて参加者の公募を国内外に行う。