イスラーム地域研究5班
c グループ「比較史の可能性」

cグループ「比較史の可能性」研究会趣意書

「比較史の可能性」研究会は、中東・中央アジア、東南アジア、中国の諸現象を、原理的レヴェルに立ち返って、相互比較を行うものです。

趣旨

 アジア諸地域の現象が、固有のコンテキストをもっていることはいうまでもありませんが、固有性の発見には、比較という手続きが必要なことも自明です。しかしこれまでは、それぞれの地域が西洋・ヨーロッパの事象やモデルと比較されることが多く、このため「近代 vs 伝統」「堅い制度 vs 柔構造」「政治と宗教」といった二項対立の説明に陥りがちでした。また、対象地域による現象の異同を発見し(似たもの探し、違い探し)、地域の独自性が強調されるだけに終わる傾向もみられました。本グループでは、異なる文化伝統をもつ上記 3 地域を比較の対象に据え、諸現象の異同の由来を、より原理的レヴェル(文化・社会秩序)から考察することによって、新たな分析概念やモデルの発見をめざしたいと考えています。
 また、比較の対象として、適宜日本を加えることによって、抽象的な比較論ではな く、世界における日本の位置を意識したものにしたいと思います。

活動

  1. 研究会 年3回(6, 9, 12 月)
    • 1-2 年目(1999-2000 年度)は、具体的なテーマに即した中国、東南アジア、中東イスラームの比較を行い、共通する問題・分析概念を探り、関心をもつメンバーを広げる。テーマの設定には、切り口(分析概念やモデル)が見えるようにする。
    • 比較の対象は、時代や地域の限定を設けず、テーマに応じて、ヨーロッパや日本を含めて、フレキシブルに設定し、自在に比較する。
    • イスラームという要素を演繹的に用いることを排し、イスラーム的要因が存在しない地域や場合を意識的に考察に加える。
    • 3 年目は、分析概念(モデル)に基づく、新たな地域・時代枠を設定し、比較を試みる。

      第 1 回研究会「所有をめぐる比較の試み」
      1999 年 6 月 26 日(土)に開催しました 活動報告

      第 2 回研究会「契約:神・共同体・個人」
      1999 年 10 月 17 日(日)に開催しました 活動報告

      第 3 回研究会「市場経済と資本主義」
      1999 年 12 月 23 日(日)に開催しました 活動報告

  2. 後続テーマ例
    ヒエラルヒーとネットワーク(社会モデルとして) 公正(政治理念、倫理から、行政実務まで)

  3. 運営方法
    報告をきいて、おざなりの質問をする、というような研究会ではありません。各報告をじっくり聴いて、つっこんだ質問や討議を行いたいと考えます。このため、事前準備をしっかりやることにします。当該のテーマについて、アンケート形式で文献などの基礎情報を収集し、また報告要旨(レジュメ)などを、事前に参加メンバーに伝えることにします。また、研究会テーマに即した、海外研究者の招聘や国際ワークショップも企画します。
    乞、ご期待。

    99 年度のまとめのページ
研究会幹事
三浦 徹(お茶の水女子大学、イスラーム史)
岸本 美緒(東京大学、中国史)
関本 照夫(東京大学、東南アジア社会人類学)

本研究グループについての質問やご意見があれば、下記にどんどんお寄せください。

連絡先
三浦 徹
Tel&Fax 045-337-0450
E-mail:miura-t@pis.bekkoame.ne.jp


回儒の著作研究会

回儒の著作研究会

(cグループ)

・研究会の名称について

“回儒”( Kaiju or Hui-ru )は、17 世紀以降の中国ムスリム知識人、なかでも中国哲学とイスラ−ム哲学・神学の双方の知識を持ち、漢語を用いて著作活動行った人々に対し用いられる表現である。
ただし、この表現は彼らの自称ではなく、一部の研究者の間でのみ用いられてきたものであるため、研究会の発足にあたり、彼らを指す語として“中国人ムスリム知識層”、“中国回教学者”をはじめとする他の表現を採用することも検討された。しかしながら、これらの語では必ずしも対象が明確とならず、現状では“回儒”がもっとも彼らの特質を反映した語であるとする意見が多数を占めたため、研究会の名称を「回儒の著作研究会」とした。

・ 研究会発足の経緯

“回儒”の存在はかなり早くから国内外の研究者の関心を集め、日本においても第二次世界大戦以前より、桑田六郎、田坂興道等の研究者によって、代表的な“回儒”の経歴や著作活動の歴史的背景について検討されてきた。しかしながら、従来の研究では序文や参考文献目録についてはさかんに検討されているものの、著作の内容に踏み込んで検討を加えたものはほとんど見られなかった。こうした研究状況の一因には、次のような事情から“回儒”の著作の読解は特定の分野の研究者にとって非常に困難なものとなっていることが挙げられる。すなわち、これらの著作においてはイスラーム哲学・神学の概念に解説を加える際に、宋学( New Confucianism )をはじめとする中国哲学の用語・概念が援用されているため、その読解には複数の言語に対する知識が要求されるのみならず、イスラーム哲学・神学と中国哲学の双方に対する広範な知識が不可欠となっていることである。そこで本研究会は、イスラーム学・中国哲学をはじめとする多分野の研究者による共同作業の形で“回儒”の著作の読解を進め、これを通じて主に次のような問題関心に接近すべく発足した次第である。

  1. “回儒”の著作を中国哲学の中にどのように位置付けることができるか。
  2. これらの著作をイスラム哲学の一環としてどのように位置付けることができるか。 ・ 研究活動

     およそ月 1 回から 3 ヶ月に 2 回の頻度で読書会を行う。読解の対象としてはここ 1 年間は劉智( Liu zhi )の著作である『天方性理』( Tian Fang Xing Li )を中心に取り上げる。また、読解の進度にあわせて研究発表の機会をもつ。なお、研究の成果は最終的には注釈加えた翻訳の形で公表することを予定している。

    (文責 黒岩 高)

    上に戻る


    戻る