「比較史の可能性」研究会は、中東・中央アジア、東南アジア、中国の諸現象を、原理的レヴェルに立ち返って、相互比較を行うものです。
趣旨
アジア諸地域の現象が、固有のコンテキストをもっていることはいうまでもありませんが、固有性の発見には、比較という手続きが必要なことも自明です。しかしこれまでは、それぞれの地域が西洋・ヨーロッパの事象やモデルと比較されることが多く、このため「近代 vs 伝統」「堅い制度 vs 柔構造」「政治と宗教」といった二項対立の説明に陥りがちでした。また、対象地域による現象の異同を発見し(似たもの探し、違い探し)、地域の独自性が強調されるだけに終わる傾向もみられました。本グループでは、異なる文化伝統をもつ上記 3 地域を比較の対象に据え、諸現象の異同の由来を、より原理的レヴェル(文化・社会秩序)から考察することによって、新たな分析概念やモデルの発見をめざしたいと考えています。
また、比較の対象として、適宜日本を加えることによって、抽象的な比較論ではな
く、世界における日本の位置を意識したものにしたいと思います。
活動
本研究グループについての質問やご意見があれば、下記にどんどんお寄せください。
(cグループ)
・研究会の名称について
“回儒”( Kaiju or Hui-ru )は、17 世紀以降の中国ムスリム知識人、なかでも中国哲学とイスラ−ム哲学・神学の双方の知識を持ち、漢語を用いて著作活動行った人々に対し用いられる表現である。
ただし、この表現は彼らの自称ではなく、一部の研究者の間でのみ用いられてきたものであるため、研究会の発足にあたり、彼らを指す語として“中国人ムスリム知識層”、“中国回教学者”をはじめとする他の表現を採用することも検討された。しかしながら、これらの語では必ずしも対象が明確とならず、現状では“回儒”がもっとも彼らの特質を反映した語であるとする意見が多数を占めたため、研究会の名称を「回儒の著作研究会」とした。
・ 研究会発足の経緯
“回儒”の存在はかなり早くから国内外の研究者の関心を集め、日本においても第二次世界大戦以前より、桑田六郎、田坂興道等の研究者によって、代表的な“回儒”の経歴や著作活動の歴史的背景について検討されてきた。しかしながら、従来の研究では序文や参考文献目録についてはさかんに検討されているものの、著作の内容に踏み込んで検討を加えたものはほとんど見られなかった。こうした研究状況の一因には、次のような事情から“回儒”の著作の読解は特定の分野の研究者にとって非常に困難なものとなっていることが挙げられる。すなわち、これらの著作においてはイスラーム哲学・神学の概念に解説を加える際に、宋学( New Confucianism )をはじめとする中国哲学の用語・概念が援用されているため、その読解には複数の言語に対する知識が要求されるのみならず、イスラーム哲学・神学と中国哲学の双方に対する広範な知識が不可欠となっていることである。そこで本研究会は、イスラーム学・中国哲学をはじめとする多分野の研究者による共同作業の形で“回儒”の著作の読解を進め、これを通じて主に次のような問題関心に接近すべく発足した次第である。