イスラーム地域研究5班
回顧 <Beyond the Border>

緒言

森本一夫


 さる10月8日から10日にかけての三日間、秋の気配が濃くなってきた頃、イスラーム地域研究プロジェクトの第一回国際会議「Beyond the Border」が開催された。
 いうまでもないが、この会議に参加したのは、内外の"Professors"や"Doctors"だけでない。この会議は、多くの大学院生、またもしかすると学部生にとって、はじめて参加する本格的な国際会議となったのである。
 これからご覧いただくのは、そのような若い参加者の皆さんが執筆して下さった会議の報告記である。会議の公式報告は総括班のホームページに掲載されており、もちろんそちらもご覧になっていただきたいが、総括班のHPでは、限られたスペース、執筆者の多忙さといった制限から、会議の成果が詳細に報告されるわけではない。それに対してこのコーナーでは、各サブセッションにつき4000字から5000字ほどという詳細な報告を提供することができた。また、総括班HPの報告は、あくまで会議を運営した方々によりなされるものであるのに対し、このコーナーに報告記を寄せて下さった方々は、一般の参加者という立場で会議を観察された方々である。このような視点の違いも本コーナーの重要な意義と言える。さらに、みなぎる「若さ」もこのコーナーの特色であろう。会議の若き参加者達は(私も含む)、みずみずしい感性で会議のさまざまな側面を観察し、いろいろな感想を持ったにちがいない。そして、彼らのこの体験は、十何年、あるいは何十年か後、今度は彼らによって企画・実行される国際会議に活かされることになるだろう。しかし、何も彼らが会議の組織者になるまで待つことはない。以下の報告から彼らの考えたことをくみとることによって、それを次回の国際会議に活かしてゆくことも可能になるはずである。
 報告を依頼したのは十四名、全て大学院生である。このうち十一名の方々には各サブセッションを担当していただいた。ほかの三名の方々には会議全体の批評をしていただく予定であったが、うち一名はやむをえぬ事情によりそれが不可能となった。しかしその方はかわりに十月十三、十四日に開催された国際会議「ISLAM AND POLITICS IN RUSSIA AND CENTRAL ASIA」の報告を寄せて下さった。
 各報告はいったん森本がお預かりし、主に表記などにかかわる簡単な校閲作業を行ったのち、掲載した。校閲者、執筆者ともに若輩者であるから、本文中には、経験のなさに起因する単なる認識不足にもとづく批評や、文章のまずさのせいで執筆者の意図がよく伝わってこない箇所も散見する。しかし、「若さ」から学ぶために、「若さ」ゆえの「いたらなさ」を大目に見ていただければ幸いである。また、報告内容のなかには事実関係などで疑問を感じる箇所もあるかと思うが、これは少なからぬ場合において、会議の発表者の言をそのままうつしたものであることに注意していただきたい。
 最後に、外国語での発表・討論に「食らいつき」、力を込めて報告記を執筆して下さった14名の方々に謝意を表したい。ありがとうございました。


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