ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

イスラエルの文化遺産マネジメント

岡田真弓(著)

岡田真弓『イスラエルの文化遺産マネジメント』を語る

古来より多様な民族・文化・宗教の交流地点として栄えたパレスチナ地域には、現在もその痕跡が文化遺産として残されている。これらの文化遺産は、20世紀初頭より当該地域の統治者たちによって管理され、1948年以降もイスラエル自然・公園局や古物局の下で保護され、一般に公開されてきた。一方、シオニズム運動の末に建設されたイスラエルが、国家の正統性の歴史的根拠として文化遺産を政治利用しているという批判も度々なされている。そこで本書では、イスラエルにおける文化遺産の保護と活用における価値観の歴史的変遷と実際のマネジメントの特徴の解明を目指した。当該地域の文化遺産の保護・活用に係る制度と運用実態の両面を分析し、これまで印象論で語られてきた議論をデータに基づいて実証的に再検討した。また、文化遺産の管理主体にも注目し、イスラエル政府と非政府団体それぞれが主導する事例を比較することで、イスラエル建国以来実施されてきた文化遺産マネジメントの多様性を浮かび上がらせた。

慶応義塾大学出版会、2017年9月
http://www.keio-up.co.jp/np/detail_contents.do?goods_id=3426