ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

イエズス会士と普遍の帝国:在華宣教師による文明の翻訳

新居洋子(著)

新居洋子『イエズス会士と普遍の帝国:在華宣教師による文明の翻訳』を語る

中世以来のヨーロッパでは、実際の見聞を通した中国の姿が数多く語られてきました。そのなかで私がおもに扱った在華イエズス会士アミオの報告は、おおむね中国の文献を下敷きにしている点に特徴があります。アミオの報告と、それらの元になったと推定される漢文や満文の文献とを突き合わせてみると、そのあいだからすこしずつ浮かび上がってきたのは、中国の文献を忠実になぞっただけの透写物(そもそもそのような翻訳があり得るのかという問題でもありますが)ではなく、また従来いわれてきたような単なるヨーロッパの「鏡」としての中国像でもなく、まさにアミオの生きた18世紀当時の中国とヨーロッパの思想的交錯によって生み出されたChineでした。このように在華イエズス会士の翻訳を通して立ち現われたChineの姿を、本書ではカトリックと科学、清朝という視点から読み解いています。

名古屋大学出版会、2017年10月
http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0889-1.html