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自著を語る

商人たちの広州:一七五〇年代の英清貿易

藤原敬士(著)

藤原敬士『商人たちの広州:一七五〇年代の英清貿易』を語る

経済史研究を志す者にとって、日々の取引記録ほどの詳細な史料を利用できるような幸運に浴することは、非常に稀なことではないだろうか。拙著の特長を一言で言えば、イギリス東インド会社が残した取引記録を体系的に用いることができた、ということになろう。政治史や法制史として、あるいは東西関係史や国際関係史、さらには商人たちのパーソナルヒストリーとして語られることの多かった広州貿易の歴史は、ようやくその貿易そのものを分析できる段階に差し掛かったのである。

イギリス東インド会社の貿易記録には日々の取引が記録されており、その分析を通じて明らかになった内容は単に瑣末な貿易の実態の解明にとどまらず、従来の定説に対して大きな変更を迫るようなものであった。
 行商に貿易を独占させるような制度は果たして存在したのか?
 西洋人は行商以外とは取引できなかったのか?
 行商たちは結託して価格をつり上げて西洋人を苦しめたのか?
 西洋人は本当に清朝官僚と談判できなかったのか?
これらの問いに真正面から答えようとしたのが拙著『商人たちの広州』である。

東京大学出版会、2017年9月
http://www.utp.or.jp/book/b308490.html