田中大介『葬儀業のエスノグラフィ』を語る
年間の総死亡者数が約130万人に達し、多死社会とも言われる現在。その一つ一つの死を誰がどこで受けとめているのか。本書のもとになったフィールドワークは、そのような素朴な問いかけから始まりました。そして私が注目した人びとが、ほぼ全ての死と遺体にいつもどこかで接している「葬儀屋さん」です。その仕事は単純な代行請負業といった範疇を超えて、今日では現代の死のかたちを能動的に発信し、更新し、創造するという役割を果たすに至っています。本書を通じて「葬儀屋さんになる」という体験を、あるいは霊安室の向こう側にある世界を共有してもらいながら、現代的な死の様相を垣間見ていただければ著者としても幸いに思います。
東京大学出版会、2017年1月
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-056310-9.html