ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

インドネシア国家と西カリマンタン華人:「辺境」からのナショナリズム形成

松村智雄(著)

松村智雄『インドネシア国家と西カリマンタン華人:「辺境」からのナショナリズム形成』を語る

中国国外の中国系住民(華人)については、これまで居住国の国家建設、国民統合におけるその同化過程に注目が集まり、国民国家との関係が強調されてきた。しかし、「通過者」とも表現できるような多地域にわたり移動を繰り返している人々(たとえば西カリマンタン、サラワク、シンガポール、マラヤ、中国といった地域間を目的地を定めず移動し続ける人々)の活動を国民統合の文脈で解釈する方法では、彼らの現実を理解するのは困難なのではないかという疑問が本書執筆の原点にあった。従来の「インドネシア民族形成」のストーリーではなく、むしろ国民統合の中で「辺境」に生きる華人の抱く、国民統合への違和感を掬いあげることに注力した。これにより国家単位ではない地域理解を実践することを試みた。

慶應義塾大学出版会、2017年2月
http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766423860/