ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

もうひとつの「王様と私」

石井 米雄 (著), 飯島 明子

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◇  No.46 (2015/3/27) 
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飯島明子『もうひとつの「王様と私」』を語る

本書は約五年前に逝去された東南アジア研究の碩学石井米雄氏の筆になる新刊である。私は後事を託された
出版社のお誘いで解説を書き、御遺稿に註記を付すなどの作業を行った。

『もうひとつの「王様と私」』という書名は、石井氏が生前に決められていた。ハリウッド映画により世界に
知られた「王様と私」のモデルの「王様」は一九世紀中葉のシャム(タイ)王モンクットだが、映画がタイで
は上映禁止であることが示すように、オリエンタリズムのステレオタイプにデフォルメされた「王様」は、
実在のモンクット王とはかけ離れている。

この書名には、「王様と私」を何らの疑いも無くエンタテインメントとして受容している日本人の蒙を啓き
たいとの石井氏の意欲が籠もっているようだ。幕末のアジアの同時代人の思想、とりわけ宗教に絡む問題に
迫る本書から汲み取るべきメッセージは深く、重いものがある。ご遺志を活かすべく、解説にも意を注いだ。
本書が広く読まれることを願っている。

めこん、2015年1月
http://www.mekong-publishing.com/books/ISBN4-8396-0286-4.htm